見出し画像

インド料理のこと2-3 How to Make a National Cuisine/Arjun Appaduraiを読んで

アパデュライは料理本によって、国民的な料理が生まれつつある中で以下のような問いをたてます。

なぜこれまで一般的にインド料理といえるヒンドゥー料理が生まれなかったのか。

そして問いの答えをヒンドゥー教の根本的な構造として捉えています。

ヒンドゥー教では、地域的な慣習は思想に反しない限り権力者によって保護される前提があります。こうした前提のもとで、食は道徳的・医学的に信仰と深い意味があったにもかかわらず、料理は地域的な祝祭料理、王室料理、高級料理の形でつくられ、一般的にインド料理といえるものはつくられることがなかったといいます。
また、料理が地域の慣習として保護されるのであれば、慣習がその他の地域と共有や同化が起きにくい状況であったと思われます。
今なお残るインドの多様な食は、これらの料理が地域に根付く形でつくり続けられた結果なのかもしれません。

感想
一般的にヒンドゥー教の信者は肉を食べない菜食主義といわれていますが、ゴアのサラスワットやベンガル地方のバラモンの人たちは魚を食べることに、料理と宗教の関係は地域で違うのかもしれないと思ってしまいます。

別の視点からみれば、自然環境によって手に入る食べ物が違うため、宗教の規範をもってしても料理を統一するのは難しそうです。

思想の食の統一と意味合いで、現代はベジタリアン・低たんぱく食・完全食などある思想(考え方)を前提に、その思想の規範的な食事という形にもみえます。一方で、どこにいても同じようなものが手に入る自然と食が分離した状況を喜ぶべきなのか、悲しみべきなのか、複雑な気持ちになりますが、こうした環境では少なくとも地域的な料理は生まれにくいのかもしれません。

続編ではないですが、後日このエッセイで問われた
 ”Let us now consider the question of why a pan-Indian Hindu cuisine did not emerge in India.” 
なぜインドで一般的なインド料理といえるヒンドゥー料理が生まれなかったのか?に対してのアンサーともいえるナンディのエッセイを読んでいきたいと思います。

読んでいただきありがとうございました。
続く

参考文献
Appadurai, A. 1988 How to Make a National Cuisine: Cookbooks in Contemporary India. Comparative Studies in Society and History Vol. 30(1), pp. 3-24. Cambridge University Press.





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?