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「8月の名前のない珈琲 Burundi:あなたを待つのはやめにする」

あなたを待つのはやめにする。

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8月の名前のない珈琲:Burundi

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8月の珈琲は、Peru、Tanzania、Burundiだった。

国は違えど、どれも、精選方法はウォッシュド(水洗式)で、すっきりとした印象の珈琲だったように思う。

それらは、まるで、どこかの家族の兄弟のように、同じ雰囲気を持ちつつ、それぞれに個性のあるひとりひとりのようだった。

真面目で面倒見の良い長男の「Peru:水面をあおぐ」。
少し反発するお年頃を迎えた「Tanzania:夕立のおわり」。

そして、8月の名前のない珈琲「Burundi」は、長男次男を見ながら育ち、我が道を行くことを覚えた末っ子だ。

とても軽い。

まずは、一口目。

飛んでいきそうな軽さを感じた。
何にも支配されていない、気楽さを覚えた。

そうそう、この子、焙煎していた時から、ちょこんとそばにいて、すんなりと懐に入ってきた子だった。

それは、この気楽な感じに繋がっていたのか。

もう一口。

わだかまりのないすっきりとした酸味に、広がっていく自由を感じた。
まるで、翼が生えていて、いつでも、大空に飛び立てるよと言っているみたいだ。

「翼をさずける。」

そんなことを言っていた某エナジードリンクのCMを思い出して、なんだか、似ていると笑ってしまった。

時折、自分のことを客観的に見る自分が現れる。

なにかに挑戦しようと意気込むと、隙間風をヒューッと送って、冷静になれよと黄色信号を灯す。

点灯しはじめた黄色信号は、瞬く間に赤信号に変わってしまう恐れがあるから注意が必要だ。

一旦、赤信号に変わってしまったなら、また、同じ位置に立ち止まって、再び、青信号が点灯するのを待つしかない。

わたしは、なんて、つまらない横断信号に囚われてしまったのだろうと思いつつも、あれやこれやと考え、いつまで経っても、横断信号は青には変わらなかったりするのだ。

でも、横断信号を渡ることでしか、先には行けないと思っていたら、実は翼が生えていて、いつでも、その先に行けてしまった。

なんなら、信号なんてひとつもなくて、単なる思い込みだった。

8月の名前のない珈琲「Burundi」は、そんなことに気づかせてくれる飲み心地だった。

だから、わたしは、赤信号前に立ち止まっている自分を見つめて、「あなたを待つのはやめにする」と手を振ったのだ。

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