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「12月の珈琲 Tanzania:こころが鳴る(後編)」

2019年10月、ぽつりと開いた小さな珈琲豆屋「珈琲くるる」

あまりにも唐突に、ぽつりと開いた店に訪れるお客様は、本当にぽつりぽつりだった。

店にあるのは、店主の思い出と経験から湧き出てくる思いをもとに名前をつけた珈琲豆。
「珈琲豆に名前をつけたわけ」

珈琲をもっと自由に楽しんでほしい。
そんな思いを詰め込んだけれど、なかなか理解は得られなかった。

それでも、毎月、2カ国の珈琲豆に名前をつけつづけた。

転機が訪れたのは、2020年春。

ひょんなことから、オンラインの学校に入学した。

人と触れ合う機会がなくなりつつあったけれど、オンラインの学校での交流は盛んだった。

ここで、学生たちと一緒に珈琲を楽しむことはできないだろうかと考えた末に、名前のない珈琲が生まれたのだ。
「珈琲に思いを束ねて、名づける日常を。」

そして、人と交流を深める新しい手段として、一気に広がったZOOMを活用して、オンラインワークショップ「珈琲で思いを共有してみよう」をはじめた。

東京から日本中のヒトが、画面を通して、一緒に、名前のない珈琲を飲み、どんなことを感じたのかを語り合う。

リアルに会うことを制限されていたけれど、オンラインだからこそできることが確かにあった。

約1年後の2021年春。

ワークショップ「珈琲で思いを共有してみよう」はオンラインに加え、レンタルスペースを借りて、開催するリアルが加わった。

画面越しでなく、ひとつの空間で、名前のない珈琲の香りをかぎ、味わい、言葉を交わす。

ZOOMでは味わえない良さがあることを実感した。

何をしたいのか。
そのために、今、何ができるのか。

そればかりを考えて、ただただ、行動してきた。

それはまるで、自転車のペダルを懸命に漕ぎながら、坂を登っているような感覚だった。
平坦な巻道もあったのかもしれないけれど、私は、好んで、坂を選び、不器用なりに懸命に登っていたように思う。

Tanzania:こころが鳴る
登りきった坂道のうえ
つよくつよく漕いだペダルから
足をはなした
ここから一気に駆けぬける
そう思ったら
こころが鳴った
力強いコクと苦味を酸味が変えていく

2021年末、2019年10月から登ってきた長い長い坂は、ひとまず、終わりを迎えたように思う。

そして、今。

新たな坂を登るために、ペダルから足をはなし、ここから、一気に駆け抜ける。

2022年をさらに楽しむために。

そう思うと、こころが鳴って、止まらないのだ。

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