アメリカのオフコースゴルフ人気が止まらない
日本では少子高齢化と共にゴルフ業界の行く末が懸念されている一方で、アメリカは2022年にゴルフ競技人口が過去最高の4,110万人を記録した。
これはアメリカ人の7人に1人がゴルフを楽しんでいる計算だ。そして、このゴルフブームを支えているのがなんと言っても2,709万人にのぼるオフコースゴルファーの存在である。
(データ: National Golf Foundationより)
ゴルフはコースでラウンドしてこそゴルフ、緑に囲まれた自然の中で楽しむもの、といった概念はもはや存在しないのかもしれない。
エンターテイメント、楽しむことに全力をつくすアメリカならではのゴルフの盛り上がり方といった印象である。
オフコースゴルファー
ゴルフ場外でゴルフを楽しむゴルファーをオフコースゴルファーとカテゴライズするが、近年このオフコースゴルファーの増加が止まらない。
これには、TopGolfやDrive Shackのような、若者や家族連れをターゲットにした、次世代の複合型ゴルフエンターテイメント施設の人気による影響が大きい。派手なライティングと音楽の流れる練習場でゴルフを楽しむ若者の様子が、SNSを通して日本のゴルファーの耳(目)にも届いているのではなかろうか。
(わたしも3回ほどサクラメントのTopGolfを訪れたことがあるが、昼間に訪れた際は全くピカピカしておらず、落ち着いた印象で安心したことを覚えている笑)
ゲーム配信で人気を集めたあのプロも参戦
そして、昨年の2023年、新たな競合としてこの事業に名乗りを挙げたのが、2020年のUSオープンチャンピオン、ブライソン・デシャンボーだ。
彼は、テキサス州フォートワースのホークスクリークゴルフコースに、新たな複合型ゴルフエンターテイメント施設「UnderPar Life」をオープンする計画を進めている。
42打席、500ヤードのドライビングレンジ(Trackman装備)、ツアーレベルのショートゲームエリア、フィットネスセンター、ミニゴルフ、インストラクショナルアカデミー、セレブ御用達の有名シェフが手掛けるレストラン、そして3つのバーを備えた2階建ての施設になる予定だ。
デシャンボーはFront Office Sportsのインタビューにて、UnderPar Lifeについて以下のように答えている。
さらに、今後数年間でアメリカ全土に少なくとも30か所をオープンする予定であるという。(Golficity)
デシャンボーといえば、PGAツアーからLIVツアーへ移籍し、その後も自身のソーシャルメディアプラットフォームで総フォロワー数180万人を超える大規模なファンダムを持っている(TwitchやSnapchatはアクティブユーザーだがフォロワー数は公開されていない)。そんな彼が、エンターテイメントアクティビティの新しい選択肢として「オフコースゴルフ」を人々に提案した形だ。
日本のゴルフ業界はどうなるのだろうか?
日本のゴルフ業界では、少子高齢化、若者層の賃金や労働環境に対する課題から、ゴルファーの減少による、ゴルフ場の閉鎖、業界の衰退が懸念されている。
今日でも、日々新規ゴルファーの獲得に向け業界では、さまざまな施策が打たれているが、数年後にはアメリカのようにオフコースゴルフに焦点を当てた施設が続々と増えるのではないかと期待を胸に待つとしよう。
アメリカが好調な要因
ところで、現在アメリカのゴルフ人口の48%が6歳〜34歳の若年層であることをご存知だろうか?日本人からすると、にわかには信じ難い数字かもしれない。
これほど若者の間でゴルフ人気が高まった要因の1つは、なんと言っても秀逸なソーシャルメディアマーケティングである。PGAツアーの舞台裏や選手の日常を垣間見ることで、ツアー選手とファンの距離は一気に縮まった。そして、エンターテイメント性の高いゴルフコンテンツを発信し続けているYouTuberたちの存在も忘れてはならない。彼らの表現するゴルフの多様な楽しみ方に若者達は共感し感化されたのではないだろうか。
そんな人気絶頂のアメリカゴルフ業界であるが、それでも貪欲に次々と新しい挑戦が続いている。
PGAでは、試合中に選手の「今この瞬間」を問うオンコースインタビューや、ゴルフバッグにカメラを取り付けた斬新なアングルからの映像。Netflixでは、スポーツドキュメンタリー「Full Swing」でPGAツアーの舞台裏に迫る内容が話題となり、すでに続編であるシーズン3の撮影が開始されいるようだ。
そしてなんと言っても今年はPGA初の試み、Myrtle Beach Classicへの出場権をかけ、人気YouTuber達が予選に参加し、その様子を各チャンネルで投稿していたのが印象深い。
このような従来の枠組みや常識を超えた数々の取り組みにより、ゴルフは最高に「COOL」なアクティビティの1つとして若者に認識されているようだ。
おわりに
誰でもアクセスできるスポーツとして形を変えていけるように「アクセシビリティの向上」は今後の日本のゴルフ界における課題になるだろう。
言うが易し行うが難し。
ゴルフが衰退してしまうと(ゴルフ好きの自分が)困るので、なんとか日本のゴルフ業界には頑張ってほしいが、わたしのような他力本願人間が声を上げなければならないほど、危機はすぐそこまで迫っているのかもしれない。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?