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プレッシャーシフトとウエイトシフトの違いについて(地面反力いろいろ①)

皆さんこんにちは!

いつもこのブログを読んでくださってる読者の皆様ありがとうございます!

今回は「地面反力を効率よく使うためのプレッシャーシフト」をテーマにお話ししていきます。

このテーマでは最終的に、足のどの部分からどの方向に地面を押せば効率よくスイングができるのか?バックスイングで右に回転したいなら右足はつま先前方方向に踏み込むべき?かかと後方へ踏み込べき?みたいな話をしたいと思ってます。

この記事は、シリーズの①なので関連用語の解説がメインです。とっとと肝心なとこだけ読みたい人は「ゴルフのプレッシャーシフト」からお読みください。よろしくお願いしま〜す。

※リライトした際は1行目に編集日書いておきます。

シリーズのポイント

私はボールを打つことが上手い人の共通点は主に以下の2点だと考えています。(ゴルフが上手いかどうかは別カテゴリー)

① オンプレーンに近いクラブ運びができているか
(=安定したクラブの重心管理)

② 効率良く効果的に地面を使えているか
(=省エネ)

「地面反力」はただ単に地面を蹴ったり踏み込む力だけの話ではなく、

・どのタイミングで?
・どんな方向へ?
・足裏のどの部分から?

地面へ力を使うかが重要なポイントになりますよね?

この記事では、一般的にプロはどのうようなプレッシャーシフトで地面へ力を与えているのか?を理解するための基礎知識を学ぶことができます。



ウエイトシフトとは?

ウエイトシフトというと、ウエイト=体重、シフト=移動で「体重移動」のことだと思いがちですが、体重移動とウエイトシフトは少し異なると私は考えています。

なぜでしょう?

■COMって?

まずスポーツで動作の話をするときに出てくるCenter of Massという言葉があります。これは体のバランスポイントであり、重心のことです。

COMと表記されることが多く、パーツごとに腰のCOMやクラブのCOMといった形で使われることもあります。

体の重心は体勢によって上下左右に移動します。低い姿勢だと重心は低い位置に移動します。


そしてゴルフの「ウエイトシフト」というのは、このCOMの移動・重心の移動を指します。

体重も移動するはするんですけど、体重の話ではないんですよね。日本語にすると包括的になってしまうので難しいとこですよね。

重心を移動したバックスイング

なので、ウエイトシフトは体重移動ではなく体そのものの移動を指します。そのためスイングを撮影したとき、確実にその動作を目で確認することができます。

=客観的に目で観測できるのがウエイトシフトです。


プレッシャーシフトとは?

一方で「プレッシャーシフト」は、地面へ踏み込む力の移動を指します。

プレッシャーシフトの「プレッシャー」は「地面への圧力」なので、日本ではプレッシャーシフトを圧力作用点の移動と言ったりもします。

…と言われても、そもそもプレッシャーが何なのか?よく分からないですよね。読み進めて行きましょう。

■COPって?

先ほどのCOM(重心)に対してよく使われるの言葉がCOPです。

COPはCenter of Pressureの略です。

まず両足の裏から地面に対してかかってる圧がプレッシャーです。

プレッシャー(ピンク矢印)が全体に広がっている状態


その足裏から地面にかかっているプレッシャーの作用中心点がプレッシャーポイント(PP)で、左右の足それぞれにかかってるプレッシャーを合計してちょうど50/50になる場所が、COP・圧力中心点です。

左足(80%)の方がプレッシャーが大きいのでCOPは左足の踵よりになっている


■COPとCOMについて

続いて…。COPが圧力の作用中心点なら、重心(COM)が左サイドにあるときはCOPも左サイドに来るんじゃないか?という疑問について回答していきます…

下のイラストのように立った場合、体のCOMはヘソの少し下、COPは両足の真ん中に位置します。ところが片足をあげると… COPは右足へ移動しますがCOMの位置はさほど変わりません。

右足の上に立つような姿勢へ変化した


次にCOMの位置を完全に維持したまま片足だけあげようとすると…どうなるでしょう?

一瞬片足を上げられても…


…おそらく倒れてしまいますよね。COPは右足に移動しますが、結果としてCOMは反対の左へ動いてしまいます。

なので、COPとCOMは同じサイドに偏るのではないか?に対する回答は、NOです。COPが右にあってもCOMが左に動くことがあるので、体が左にあるからプレッシャーも左にかかっている訳ではいのです。


■プレッシャーシフト

やっとプレッシャーシフトに来ました。

プレッシャーシフトは地面に圧力がかかってる点の移動のことなので、測定できる装置を使用しない限り目で観測することはできません。

前後の動作パターンや靴の浮き具合からから予想することもできますが常人には難しいです。

と言うのも、左右どちらの足が強く踏み込んでいるか?ってパッと見でなかなか分かりませんよね。

例えばこのゴルファーは左足・右足どちらを強く踏み込んでいるでしょう?
左へ踏み込んでいるように見えるので、一見、左サイドの地面へのプレッシャーの方が大きく見えますが、実際は80:20で右足のプレッシャーの方が大きい状態です。

ウエイトシフトしているバックスイングとプレッシャーシフトしているバックスイングでは、まず見た目が大きく異なります。

ウェイトシフトをしたCOMが移動したバックスイング(左)
プレッシャーシフトをしたCOMがほぼ動かないバックスイング(右)


この2つのバックスイングでは、安定性・再現性に違いがあるだけでなく、スイング中に使える地面反力の大きさも異なるので、クラブヘッドスピードや効率性にも違いがでます。


■フォースとプレッシャーの違い

ここまでで、重心とかプレッシャーとか、だんだん話の内容が分かってきましたね。

ここらで気になり始めるのが、地面反力などのフォースではないでしょうか?

プレッシャーが地面との圧力作用点にかかる力なのは分かった。じゃあ地面反力と何が違うの?フォースはなんなの?って。

■フォース(Force)
一般的にフォースは力のこと。ゴルフで言うフォースは、体に働く押したり引いたりする力で動作の原因になる力のこと。動力学では、質点の運動状態を変化させる状態量のことを指します。フォースって言っても色々なフォースがあるんよ。

ゴルファーの体に働くフォースの種類
・マッスルフォース(筋力)
・体重(重力)
・地面反力
・グリップリアクションフォース
・摩擦力(足と地面、手とグリップ等)

フォースのもつ性質
・マグニチュード(大きさ)
・ディレクション(方向)
・Point of Action(作用点)

計測方法
・3D地面反力の場合フォースプレートを使うしかない。
・2D地面反力ならプレッシャーマットで作用点と垂直反力のみ計測可。

■プレッシャー
一定のエリアに働いているフォースのこと。
ゴルフで言う地面へのプレッシャーの場合、(プレッシャー)=(垂直な力)÷(接地面)で計算されます。

計測方法
・プレッシャーマット
・プレッシャープレート
・靴の中に入れるやつ等


■つまり違いは?
プレッシャーと混同しやすいフォースは地面反力ですよね。

プレッシャーはあくまで一定のエリアに広がる力のことなので、どんなに地面を強く踏み込んだとしても、左右のトータル100%から、それぞれの足に何%ずつ働いてるのか?しか割り出さないので、踏み込む力が何倍であってもその大きさの概念はありません。

一方で地面反力は地面に与えた力の反力なので、自分の体重を100%として、その200%300%の力を地面に与えることができます。つまり力の大きさが変化します。また地面反力には方向もあるので方向も変化します。

…私の解釈こんな感じですが

おそらく様々な用語を日本語にするとき「体重移動」みたいな曖昧なワードを使ってしまうと、個々の解釈の仕方で意味が大きく変わってしまうのかな?と思いました。




他のスポーツだとどうなのか?

これで言葉の意味はバッチリですね!

ここからはアナロジーとして他のスポーツを見て、イメージを膨らませていきましょう。

①【陸上のクラウチングスタート】だとこんな感じ。

地面反力(GRF)の合力です

地面を蹴って前へ進む。初速を上げるためにはこのときの前傾角度も大事らしいです。なので地面を押して蹴る方向も大事。

スタートする瞬間に足裏のプレッシャーシフト(圧力作用点の移動)があり、その後、ウエイトシフトして体が進行方向に動きます。キネティック(力)からのキネマティック(動作)ですね。


②【野球の投球】だとこんな感じ。

矢印の方向等細かいところは定かでない。
あくまでイメージ画像。笑

右足を後ろに(2塁側に)蹴るから体が前へ(本塁側へ)進みます。着地した左足は斜め前方の下に踏み込むので、ブレーキがかかり左足をポストレッグとして使えるため、上方向の地面反力を使えます。スタック&ティルトの左足の感じと似てる感じかな?


③【ただの歩行】だとこんな感じ。

私たちは普段歩行するときも、地面にプレッシャーを与えてウエイトシフトし歩いています。

つまり、足裏から地面へ圧力をかけ、その圧力が作用する点を移動させながら、体を前方へ運んでいます。

歩行時の平均的なプレッシャーシフト



④【走る】とこんな感じ。

走行は歩行に比べ、足が地面に接する時間が短く、強く地面を蹴って足を前方へ振り出そうとしますよね?

なので歩行と走行のプレッシャーシフトは変化します。

走るときのプレッシャーシフト



⑤【ガチ目に走る】とこんな感じ

スプリンターがガチ目に走るとプレッシャーシフトは以下のように変化します。

スプリンターのプレッシャーシフト


こう、なんとなく話が見えてきましたね!


ゴルフのプレッシャーシフト

ゴルフスイングの場合、アドレスでは静止した「静」の状態からスイングを始めるため、スイングを始動し始めるときにプレッシャーシフトをうまく使う必要があります。さもないと、体自体を大きく左右や前後に動かすことでしかスイングするための力を生み出せないからです。

さらにゴルフスイングの「切り返し」は正に「一瞬の出来事」ですよね。もしバックスイングで体を大きくウエイトシフトしていたらどうでしょう?切り返していくとき十分にクラブを加速できる体勢を整えることができませんよね。

つまり、プレッシャーシフトを一定の許容できる範囲内でおこなえない限り、体はスイング中に動きまくってしまうため、ただボールを打つことでさえ難しくなります。

①プレッシャーシフトを計測できる機器

ここ10年くらいで、スイング中に足裏から地面へ与える圧(力)を計測できる機器が積極的にゴルフレッスンに取り入れられていますよね。

プレッシャーシフトを計測できる機器では、BodiTrak・Swing Catalyst・SAM Blance Lab・S2Mなどが有名です。これらの機器は本来目に見えない力をデータ化し分かりやすく可視化することに成功しています。そのおかげでアマチュアでも簡単に自分のプレッシャーシフトやプレッシャー分布を理解することができます。


②プレッシャーマップの解説

今回のシリーズでは、下記のようなプレッシャーの分布を表したイラストを使用し解説していくので、先に簡単に見方を解説します。

例1:Swing Catalystのインパクトデータ(P7)の再現

黒い点線が足跡で、これが左右の足の位置ですね。

そして足跡の中に色がついている部分がありますが、これは地面に対してプレッシャー(圧)を与えている部分で、その力の大きさ(マグニチュード)は色で分けられています。

この例だと両足で地面にかけているプレッシャーを100としたとき、左足が65%、右足が35%を占めていることが分かります。

また左足は少し外側にプレッシャーがかかっていて、右足は母指球にプレッシャーがかかっているのが分かります。

そしてプレッシャーは全体的に左よりなので、COP(Total Body Center of Pressure=両足合わせた足圧の作用点)の赤い点は左の踵よりに位置しています。

プレッシャートレース

もちろんスイング中、この赤い点(COP)は常に前後左右と移動し続けるわけですが、この点が描く軌跡をプレッシャートレースと言います。

両足合わせたCOPのプレッシャートレースの例

左右それぞれの足にも、それぞれの足の中でCOPがあるため、片足ずつのプレッシャートレースもあります。

ダイナミックアライメント(またはエイミング)

この左右それぞれの足に作用するCOPを直線で結んだ線の向きがクラブパスに大きく影響するんではないか?とも考えられています。そのため、プレッシャートレースにはドローパターンやフェードパターンがあると言う人もいます。

それぞれの足のCOPを結んだ線がターゲットラインの右を向いてる例
クラブパスも右を向きやすくなるのか?

2015年のSwing Catalystのセミナーで、このフォースプレートの開発者でもあるDr.スコット・リンは、このクラブパスへの影響についてはまだ研究中と話ていましたが、最近はどうなったんでしょうね〜?気になるところです。

(今年のDr.スコット・リンのポッドキャストインタビュー翻訳はこちらから)
書き終えたら飛べるようにしておきます。今半分くらい終わったよ。もうちょい。笑


リ・センタリング

まだ続くんかい。って思ったよね。これが最後です。笑

ここで、なぜプレッシャーシフトが大事なのか?について話したい。

プレッシャーシフトが適正におこなわれたバックスイングでは、トップまたはトップ手前に差し掛かったとき、ダウンスイングでパワフルな動作をおこなう準備が整った体勢を作れます。つまりヘッドを加速させる準備がバッチリ整ってる訳です。

そしてこの鍵となるのが『リセンタリング(Re-Centering)』です。

リセンタリング(re-centering)したトップ

バックスイングで適正なプレッシャーシフトをおこなえると、トップではリセンタリング(re-centering)という動作が完了した体勢になります。

つまり、適正なプレッシャーシフトには、リセンタリングの動作が含まれるということが分かります。

リセンタリングは、P1〜P2で右に少しシフトした骨盤の中心や胸骨が、P3.5〜トップで「アドレスの元のポジション付近」に戻ってくることを指し、体がセンターに戻る動きだからリセンタリングと言います

海外のゴルフインストラクターやプロがよく使う言葉なので知ってる人もいると思いますが、スライドやバンプとは異なる動きなので注意してくださいね!

リセンタリングできると特にアイアンでは、ダウンスイングでカバーリングが行いやすく、大きなバーティカルの地面反力(VF)を適正なタイミングで使いやすくなるので、インパクトでダイナミックロフトを立てやすくなります。

ここで気になるのが「アッパーブローで打ちたいドライバーもリセンタリングするの?ダウンブロー助長しそうじゃない?」といった質問ですね。

実はこのリセンタリングは、それぞれのゴルファーのバックスイングの回転軸タイプ(フロント・センター・リア)や、ドライバーやアイアンといったクラブの違いで、推奨される適正範囲(移動距離)が微妙に変わります。とは言え、ドライバーでもアイアン同様にリセンタリングの動作があります。

リセンタリングの動作はPGAのベストボールストライカーに共通する動きなので、マジックムーブの1つと言われたりしています。


ところが一方で、プレッシャーシフトが適正でないバックスイングをすると、地面の力を効率良く使えないことによるパワーロスだけでなく、ゴルフスイングにおいて良しとされる様々な動きをおこなうことができません。

するとボールを打つために帳尻合わせの動作が連続してしまうので、インパクトでは大事故が起きてしまう可能性が非常に高いです…悲しいねー。

これについて続編で詳しく書いてます!

と言うことで、続きはこちらから!
(まだ書いてる途中だから公開したらリンク貼っておくね。)


おわりに

自分の飛球に悩みがあって「インパクトを改善したいな〜」と思っている人は、とりあえず1度バックスイングのプレッシャーシフトを管理できているかチェックしてみるといいかも!でないと、インパクトだけピンポイントで修正するのは、かなり難しいし時間が無駄になる可能性が高いかも。

プレッシャーシフトが適正におこなえるだけで、スイングがよりシンプルになり、楽に力強い球を打てる確率がグッと高まるので、一度注目して欲しいお題です。

「ダウンの腰の回転はトップの前から始める」とか「トップの前に左に踏み込む」とか…色々なことが、本当にそうなのか?そうじゃないのか?どうでもいい事なのか?色々繋がるのでプレッシャーシフトは学ぶ価値ありだと思います。

そんなこんなで、続編では「じゃ何をどうすればいいんよ?!」にしっかりお答えしていきます。PGAツアー選手のデータ例とともに、私が興味深いと思ったことも紹介しますので、是非お時間が許す方はお読みください。

「続編はこちらから飛べるようにしておきます。」
まだ書いてる途中(2022年12月現在)

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