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アイアンが上手い人に共通する動き!ボールを真芯でとらえるカバーリングって何?カバー・ザ・ボール

完璧なアイアンショットを打ったときの「あの感触」は、まさに病みつき。ボールが潰れる感じがした、フェースにボールが乗っているようだったなど、その表現は人によってさまざまです。しかしながら、ゴルフはミスのスポーツ。あの感覚を追い求めても、そうそう完璧なショットは打てません。そこで本記事では、完璧なショットを打てる確率を底上げできる「カバーリング」というシンプルなテクニックについてご紹介します。



カバーリングとは?

カバーリング(Covering)は、カバー・ザ・ボール(Cover the Ball)と同じ意味のゴルフ用語で、スイングを正面からみたとき、胸骨がボールの真上〜ボール1個ターゲット側に位置する状態をさします。プロの会話やスイング解説、ゴルフ指導の現場でよく使われます。

Coverは、英語の覆うという意味を持つため、多くの人はボールに上半身が覆い被さる形を想像するかもしれません。しかしこの「カバー」は、スイングしたときのプレーヤー目線によるもので、インパクト時、胸と手がボールの上にあるように(カバーしているように)感じることからカバーリングと呼ばれています。

胸骨(オレンジの円)がボールの真上〜ボール1個左に位置する状態=カバーリング

ところが、スイングを後方から見たとき上半身がボールに覆い被さるような状態をカバーリングだと主張するゴルファーもいます。カバーリングに関する明確な定義はまだなくハッキリとしませんが、PGAプロの会話を聞いているとカバーリングはインパクト時の胸骨の位置や背骨の状態を指す言葉だと分かります。


<参考にどうぞ>
海外のカバー・ザ・ボールに関する記事
Youtube動画①
Youtube動画


カバーリングのメリット

カバーリングの主要なメリットは以下の3つです。
①:体重を適切に移動できる
②:適正な角度(入射角)でクラブをボールまで運べる確率アップ
③:クリーンなコンタクトを実現できる可能性アップ


①:体重を適切に移動できる

胸骨の位置により体重配分に影響が出る例

人間の腹部から頭部までの重量は人体全体の約65-70%を占めるため、インパクト時の胸骨の位置はスイングの体重移動に大きく影響します。

ダウンスイングでは体重を左に移動させるのが基本で、アイアンの理想的なインパクトでは80~85%の体重が左足にかかることが推奨されています。

胸骨がボールの真上またはターゲット側に位置していると、体重を左にしっかり移動させて力強いショットを打つことができますが、胸骨がボールより右側に位置していると、左足に体重を乗せることが難しくなります。

体重を左に乗せることが難しい場合は、一度胸骨の位置を確認してみると良いでしょう。


②:適正な角度(入射角)でクラブをボールまで運べる確率アップ

胸骨の位置がターゲットに近づくほど、入射角も鋭角になりやすい

アイアンは、ダウンブローで鋭角に上から打ちこむものと思いがちですが、そのイメージは少し時代遅れかもしれません。

2024年のトラックマンデータによると、PGAツアープロのドライバーの平均ヘッドスピード(以下HS)は52m/sで、ミドルアイアンの入射角は3.7〜3.9度、ウェッジで4.7度とのこと。そして、LPGAツアープロの平均HSは43m/s、ミドルアイアンで2度、ウェッジで3度程度のダウンブローでアイアンを打っています。

これらのプロよりHSが遅い場合は、この数値より鋭角なダウンブローで打ち込まないほうが得策でしょう。適正値より鋭角に打つと、クラブのロフト角が減少し、必要以上にスピンがかかりすぎて飛距離が犠牲になることもあります。

女子プロのHSに近い一般の男性アマは、胸骨がボールの真上に位置することを基準にカバーリングできると、安定してスイングの最下点をボールの先にできるため、一貫したダウンブローでボールを打つことができます。

さらにヘッドスピードが速い人は、男子プロのようにインパクトで胸骨をボール1〜2個分左に位置させると、より鋭角な入射角でボールをとらえられる確率が高まります。


③:クリーンなコンタクトを実現できる可能性アップ

「コンタクト」は、ボールとフェースの接触をさす言葉ですが、「クリーンなコンタクト」は、インパクトの打点がいいだけでなく、インパクトの質も大いに関係しています。これには、入射角やインパクトのロフト(ダイナミックロフト)、コンプレッション(ボールの圧縮)などが含まれます。

カバーリングができると、インパクトまでの動きの過程がある程度絞られるため、これらの要素を目標に近い数値で達成できる可能性が高まります。(具体的な数値はプレーヤーのスキルレベルやショットの種類によって異なるため割愛します)


効果を高めるポイント

カバーリングでは、インパクトの瞬間のみを切り取って胸骨の位置を再現すればいいわけではありません。適正な流れや過程でおこなえるとより効果的です。その効果を高められるポイントを以下の3つにまとめてみました。

①:バックスイングで右へスエーしない

右へスエーすると点線までの距離(インパクトまでの移動距離)が長くなる

バックスイングで骨盤や胸を右にスエーすると、インパクトで戻りたい位置までの距離が長くなります

ダウンスイングはバックスイングより速く、正に一瞬なので、毎回同じタイミングで同じ位置に骨盤や胸骨を戻すのは至難の技。ダウンスイングの仕事内容に、スエー分の横移動が追加されると、スイングを複雑化してしまい、再現性の低下につながります。シンプルに考えて、アイアンのトップは真ん中にいましょう。


②:ダウンスイング開始ですぐ腰を前に出さない

ドライバーの画像ですが、アイアンも同じです

ダウンスイングで腰を前に突き出さないように、胸を地面に向けながら前屈し、骨盤を前傾させるイメージを持ちましょう。骨盤の回転では、右腰を前に出すのではなく左腰を後ろに引けると、姿勢を保ちながらスイングすることができます。

個人差はありますが、実際のアイアンスイングでは、骨盤はP5の直前で前傾方向への傾きのピークを迎えます。それでも平均1°の後傾と言われているため、過度に前傾させる必要はありません。


③:切り返しで肩を開かない

手だけ少し下ろしてから体を回す

切り返してすぐ肩を開きながらカバーリングしようとすると、いわゆる突っ込みという形のスイングになりやすいです。

結果的にインパクトで胸骨をいいポジションにおさめられても、上半身の動きが下半身や腕と同調していないため、理想的なカバーリングとは言えません。

手がP4〜P4.5(トップから肩口)の高さに下りるまで肩の回転は待ちましょう。突っ込まずにカバーリングできると、よりパワーを伝えられるクリーンなコンタクトに近づきます。


カバーリングはアイアンだけのテクニック?

カバーリングの目的は、最下点をボールの先に移動し入射角を鋭角にすることにあります。そのため、一般的にはミドルアインやショートアイアン、ウェッジショットやグリーンサイドアプローチ、バンカーショットで利用されるテクニックです。

例えば2020年、タイガー・ウッズはテーラーメイドのバンカーセッションの動画で、バンカーショットの際、右側屈してしまう癖について話したあと「砂を多く取りたくないから、カバーリングしたいんだ」と語りました。また、同じ動画でマキロイは、バンカーでもハンドファーストになりやすい自身の悩みを語り、「体をクローズにして、カバーリング+アーリーリリースの意識を持って取り組んでいる」と話しました。

この他にも、カバーリングを最下点のコントロールに利用することも可能です。例えば、ドライバーのダフリに悩んでいるなら、カバーリングの意識を持って練習することで、最下点をターゲット側に動かすことができます。また、球を低く打ち出したいショットでもカバーリングを強調すると、最下点はボールの先になるためロフトを立てた低い球が打ちやすくなるでしょう。


練習方法

まずは鏡の前で、カバーリングがどんなポジションなのか形を作ってみましょう。そのとき、自分が思っていたより◯◯なんだな〜など、その形を作るための自己感覚を学びましょう。

あとはハーフスイングで練習します。難しい練習はいりません。
ハーフスイングでできないことは、フルスイングでもできないので、まずはハーフスイングから始めることが、結果としてカバーリングを体得する最短ルートになります。


まとめ

「カバーリング」と「カバー・ザ・ボール」は、同じ意味の言葉であり、ゴルフスイングの特にアイアンショットにおける重要なテクニックです。インパクト時に体重を適切な位置に持ってこれるので、入射角や最下点のコントロールに役立ちます。スイングのテクニックとしての難易度は高くないので、アイアンショットでコンタクトが安定しない人は、一度インパクトの「胸骨の位置」をチェックしてみるといいかもしれません。

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