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注意力をコントロールしてパフォーマンスを上げる「メタ注意」

この記事では、2017年に発表されたスポーツ心理学の「メタ注意」に関する研究「A Grounded-Theory Study of Meta-Attention in Golfers」という論文について紹介します。

ゴルファーが自分自身の注意力をコントロールできたらパフォーマンスを上げることができるのか?という研究です。

リンク先からPDFでオリジナルの論文を読むことができます。

https://www.researchgate.net/publication/339406995_A_Grounded-Theory_Study_of_Meta-Attention_in_Golfers

また、この記事では特典としてスポーツ心理学を基に構成した「ゴルフパフォーマンスに関わる注意のコントロール」に関するお勉強PDFを最後に紹介しています。

ぜひ記事を最後まで読んで、学んだことを普段の練習やラウンドに取り入れてみてください。


◆メタ注意って?

スポーツ心理学のメタ注意とは、選手が自分自身の注意に対して注意を払うことを指します。メタ注意は、選手が自分自身の注意を調整するために使用する戦略であり、プレー中の注意の焦点を変えることで、パフォーマンスの改善を目指したりします。

メタ注意の主な種類

メタ注意は、主に以下の2つのタイプに分類されます。

  • 内向型メタ注意:
    自分自身の注意を自己観察に向けること。自分のパフォーマンスに対して評価を下し、改善点を見つけ出すために使用されます。例えば、「自分のショットが上手くいかない理由は何だろうか?」と自問自答し、改善するための具体的なアクションプランを立てることができます。

  • 外向型メタ注意:
    自分自身の注意を外界に向けること。周囲の状況や他の選手の動きに注目し、それに合わせて自分自身のパフォーマンスを調整するために使用されます。例えば、風の強さやライの傾斜などの環境要因を注意深く観察し、自分自身のショットの打ち方を調整したり、他の選手のショットを見てクラブ選択をすることなどがあてはまります。

メタ注意に取り組む際の注意点

メタ注意を使用する際は以下のようなことにも注意しましょう。

  1. 注意の焦点を変更することで、選手のパフォーマンスが改善する可能性があるが、注意を切り替えすぎると、パフォーマンスが悪化することがあるため、注意を切り替えるタイミングが重要。

  2. メタ注意を使用する前に、自分自身のメンタルスキルやストレスマネジメント技術を学び、自分自身をリラックスさせること。

  3. メタ注意は個人差があり選手ごとに異なるため、選手自身が自分のメタ注意を理解し、適切に調整できること。


◆Grounded-Theoryって?

今回紹介するメタ注意の論文は「グランデッド・セオリー」を基に研究されました。

このGrounded Theory(グラウンデッド·セオリー)は、社会科学研究において広く用いられる質的研究手法の1つで、現象を深く理解し、その背後にある理論的な概念や関係性を探求するために使用されます。

この手法では、研究者が仮説や予測を立てるのではなく、現場のデータを収集·分析し、関連する事象をまとめ、それらをより大きな概念に統合することで理論を形成します。

従来の研究手法である仮説検証法とは異なり、現場で実際に起こった事象に基づいて理論を形成するため、実践的な応用性が高く、また、研究対象を深く掘り下げることで、新たな視点や発見が生まれることが多いとされています。


◆この論文のポイント

この論文では、ゴルフにおける注意の制御についてのメタ注意に焦点を当てています。メタ注意は、簡単に言うと人間が自分の注意を意図的にコントロールし、注意の対象を転換する能力です。

この論文で研究者たちは、ゴルファーが自分の注意をどのように管理し、プレー中にどのようなメタ注意のプロセスを使用するかを探求しました。

実験方法

研究は、7人のプロゴルファーと6人のアマチュアゴルファーを対象に行われ、インタビュー(対話)とフィールドノート(観察)を用いてデータを収集しました。研究者たちは、収集されたデータを分析し、メタ注意がどのように形成され、どのように影響を受け、ゴルフのパフォーマンスにどのように関与するかを説明する理論を構築しました。


研究結果

この論文では、メタ注意がゴルフのパフォーマンスに直接影響を与えるとして、プレー中、自分の注意をどのように管理するかによって、パフォーマンスが向上するか悪化するかが決まるとしています。

また、プレイヤーはプレー前に自分の注意を調整することが重要であることも明確に示されました。


◆この実験から私たちが参考にできること


避けたいこと:

  • 結果に過度にこだわらない:
    こだわり過ぎるとプレッシャーを感じ、自分のパフォーマンスに影響を与える

  • 細かい動きに集中し過ぎない:
    ゴルフスイングの細かな動き1つ1つ全てに集中しすぎると、スイングの自然なリズムを妨げたることに

  • 覚醒レベルを興奮状態にしない:
    興奮しすぎて、リラックスしてショットを打つことができない

  • 過去の結果に意識を向けない:
    過去の失敗や成功に囚われすぎて、「今」現在のプレーに集中できない


取り入れたいこと:

  • ゴルフスイングやパターなどのスキルに集中することで、自分のプレーを改善できる

  • この瞬間のプレーに集中できると、過去(昔の失敗)や未来(まだわからない結果)に意識が向かないので自然なリズムでプレーができる

  • プレー前にリラックスした状態になれる方法を学び実践できると、プレッシャーに対処することができる

  • 意識的に自分に対してポジティブな言葉をかけることで、自信を持ってプレーすることができる

これらの例からわかるように、メタ注意を適切に使えると、プレーに大きな影響を与えることができます。しかし、自分のメタ注意を理解し、適切に調整することが重要です。


◆おわりに

本記事ではゴルフにおけるメタ注意について、最近私が読んだ論文「A Grounded-Theory Study of Meta-Attention in Golfers」についてお話しました。

メタ注意は、プレイヤーが自分の注意をコントロールし、プレー中の情報を処理する能力です。

良いメタ注意は、プレイヤーが適切に注意を切り替え、効果的な戦略を立てることができるようにサポートします。一方、悪いメタ注意は、選手が過剰に技術的なことに集中しすぎたり、不適切な情報に過剰に反応することがあります。

ゴルファーは、メタ注意を向上させるために、プレー前にプレイヤー自身の目標や戦略を明確にすることが重要です。また、プレー中は、適切な情報に注目することが必要であり、自分のプラスに働かないことへの注意はなるべく避けるのがベストです。

メタ注意は、ゴルフに限らず、あらゆるスポーツにおいて重要な能力であり、プレーヤーはメタ注意を向上させることでより効果的なプレーを実現することができると言えるのではないでしょうか。


◆有料特典


この記事では、スポーツ心理学を基にわたしが作成した「ゴルフパフォーマンスに関わる注意のコントロール」に関するお勉強PDFを9枚有料特典として公開します。

サンプル:1枚目のPDF

このPDFシリーズは、ゴルフレッスンのフォローアップサービスの一環として、メンタルゲームの知識を深めパフォーマンス向上へ繋げられるよう生徒様へ配信しています。(このブログを読んでいるレッスン生の方は購入しないように気をつけてください。)

ゴルフをメインテーマにしているので、スポーツ心理学の話でも読みやすく感じると好評をいただいています。

この先、20のテーマ別PDFを順次販売していく予定でいます。気になるテーマがあるときに購入して読んでみていただければとても嬉しいです。

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159字 / 1ファイル

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