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普段かぶれ…る?

 優勝が決まる前日の甲子園へ行けることになった。これまで普段着のコディネートでさえも”いかにも”が気になって黒と黄になるのを慎重に避けてきたくらいである。それなのに前日は朝から年に1度出すか出さないかの棚にしまわれた応援グッズのボックスの中にあるユニフォーム3着とキャップ4つ、スポーツタオル幾数枚を洗濯し、夜に塗り直したネイルは虎柄と「その日だけは」とビシッとキメていくことにした。前日に洗濯した4つのキャップのうち1つは”Bs”と書かれたものだったから残るは3つである。1つは00年台の選手名が入った記念キャップのものだった。残る2つの内、1つのオーソドックスなタイプは父のもののようだったのでそのまま父に譲り、私は残る最後のデザインをかぶることになった。正面から見るとただ”Tigers"と書かれてあるのだが、後ろに10年以上前のものだとわかる年次がしっかりと刺繍れていた。それはそれでよかったのだ。しかし、甲子園への決まったルートである阪神百貨店でのお弁当購入時、8階にあるタイガースショップへと寄ることになった。マジック3での直接対決ということにそもそも浮き足立っていた我々親子は、並べられた公式レプリカキャップたちを見て簡単に舞い上がった。「普段かぶれるようなやつうとけやぁ」という父の言葉に「うん、そやなぁ!」とすかさず相槌を打ち、「わぁ、いつも森下選手がかぶってるフラットキャップもあるじゃん!」とワクワクしながらキャップを選び出していた。今かぶっているものだって普段かぶろうと思えばかぶれるのである。そして公式レプリカキャップはツバが鮮やなイエロー。「…普段かぶれるかなぁ…」といううっすらとした心配を今日は「普段かぶれる!」ということにして有頂天のうちにキャップをレジに持って行った。かくして家に迎えられたキャップ、普段かぶれるように、と玄関のすぐ手の届くキャップ置き場にスタンバイさせている。先日、秋の日差しに何だか麦わら帽子も…と思い、ツバの黄色いフラットキャップをかぶってみたが今回はベージュのキャスケットにすることにした。

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