野球観戦

　「これで大山のホームラン見れたら最高やな」など言っていたら、3分もしないうちに大山が打った打球はバックスクリーンに吸い込まれていた。あまりにも普通のことのようで、打った瞬間から「おー？！おー！！」というあの徐々に盛り上がっていくワクワクもなく、反応は「えー？入った？え？おおおおーーー！」であった。そこは元熱烈な高校球児だったいとこが声をかけてくれて見に行った、甲子園ライトスタンド。その日は快晴、快打の夜で全員の応援歌を歌えるいとこは試合後もいつまでも応援歌を歌っていた。そんな良い試合だった甲子園観戦だったが、いくまではボテボテの状態で、よくもたどり着いたという感があった。関東生まれ関東育ちのいとこ。一緒にいるといつもよく2人でしゃべるのだが、その日も「阪神百貨店でお弁当買って阪神電車に乗って甲子園に行くのが正しいルートなんやー！」などと言いながら地下鉄に乗っていた。ふと行き先を確認すると「次は中津」との表示。「え！やってもうた、乗り過ごしてもうたわ」と私が驚いていると「あ、やっぱそうか。」と大阪駅と梅田駅が同じであるということに今ひとつ確信が持てずそのまま乗っていたのだと反省してくれたいとこと「いやー、ごめんごめん」と言い合いながら共に中津で反対側の電車を待つことになった。そうして予定よりも10分弱の遅れがありようやくついた梅田駅、ここでいとこが気付いた。「あ！チケット忘れた！」