多様さに驚いた、特別企画展『―橋本コレクション受贈記念― 文明開化のやきもの 印版手』大阪歴史博物館

地下鉄の通路に飾ってある不思議な目と目があって、──のちにそれは雪だるまの目だったと展覧会にて判明するのですが──、興味を持った今回の「印版手」展。驚いたのは、その図案や器の形も含めたデザインの多様さでした。
実家にある食器の数は比較的多い方だと思いますが、柄のついた食器はあまりありません。ましてや、印版手など。初めて聞いた、印版手。
磁器に手書きではなく、印刷技術の応用によって柄を付けていく手法で、またその手法によって作られた磁器のことも印版手と呼ぶようです。
今回紹介されていたのは同じ「いんばんて」と呼ばれる中でも銅板転写を使った技法のものをよりイメージしやすい様に「印判手」ではなく、「印版手」という漢字が使われています。
同じ図案を繰り返し作成しやすいことから、塗り絵の様に図案だけ同じものになり、色だけを違うものにしたものなどや、昭和天皇のご成婚の記念に作られたものなど、もう少し、古くなると、明治以降に鎖国が終わり多くの人々が大陸や外国の名前を覚えられるようにと、それぞれの名前が書かれたものやメートル法について書かれたデザインなどもありました。たくさんの人々が手に取り記念にしたり、教養にしたのかなぁと想像するととても楽しい。また、大量生産が可能になることで、安く手に入れるられるという利点もあったようで、それまで日本人が見たこともなかったような気球や飛行船、風車などの風景が書かれたものから、自分達に身近な風俗を描いたもの、写実的ではなくデザイン図案化されたサーカスに出てくる馬や象を描いたもの、泥棒猫図など、当時の人からのわぁという声や、ふふという笑い声が聞こえてきそうな図案も多くありました。
そして、動物の章では、今年が卯年ということもあってか?そもそも兎が縁起の良いモチーフということもあるのか、兎柄だけでもたくさんのデザインがあり、驚きました。

一つ一つのキャプションも丁寧に詳しく書いてありそれを読むのも楽しい展覧会でした。ついつい熱心に見てしまい、円形に展示してある大阪歴史博物館のフロアをちょうど半周したところで、あれ?出口がない…と少しどうしようと思い、スタッフの方に出口をお聞きし、「あと半分あります」と言われるくらいに見応えの大きい展示でした。

全体としては印版手コレクターとして知られる橋本氏からのコレクションが展示されていますが、最後にある東ゆうなさんのディレクションによる展示もピンクやグリーンの印版手があったり、グラフィカルなデザインがあったりと素敵でした。

展示室に行くまでは常設展とセットと見られるから、展示は少ししかないのかしら…と思っていた心配はなんのその、広く深い印版手の世界にどっぷりと浸かることのできる展覧会でした。

よろしければサポートお願いします!いただいたサポートはより楽しい記事執筆のための温かい飲み物費や本の購入、交通費等大切に使わせていただきます!