見出し画像

読書から学ぶ子育て『「イクメン」を疑え!』『ポストイクメンの男性育児』

今回は2本立てです!
今月、「イクメン」に関する本が2冊立て続けに出版されたので、気になって買ってしまいました。どちらの本にも共通して語られた課題があったので、ご紹介します。

どんな本?

『「イクメン」を疑え!』

著者は関口洋平さん。専門がアメリカ研究であり、「イクメン」という事象をアメリカの保育事情や男性の育児をテーマにした映画を題材として、文化的な側面から読み解いています。

「クレイマー、クレイマー」(1979年)など、男性が子育てに奮闘するアメリカ映画の背景として、1970年代のアメリカで働く女性が増加したこと、福祉予算の増加が問題視されて新自由主義(政府による個人や市場への介入を最低限とすべきという主義)が台頭してきたことが、挙げられています。

この状況はバブル崩壊後の不況で働く女性が増加し、新自由主義を背景に、共働きで経済を回すことと育児を家庭で引き受けることを両立させる男性を良いものとして「イクメン」が誕生した日本の状況に重なります。

そして、「育児は仕事の役に立つ」(2017年)や「男性の育休」(2020年)において、男性の育児参加による育児経験がビジネススキルの向上につながるとして主張されていると著者は分析します。

(なお、男性の育休取得を推進するプロジェクトの中にいた立場から言うと、男性の育休に前向きでない経営層の関心を惹くため「やむを得ず」ビジネススキル的に表現していました)

一方で、育児は経済を回すために行っているものではありません。本書の最終章では、新自由主義的な「イクメン」とは異なる視点で男性の育児が描かれている作品として、日本の長編小説「なずな」を紹介しています。

この章の最後で著者は『育児は人的資本の一部ではなく、地域をよりよくケアし、他者とつながるための第一歩なのだ。社会がなければ育児はできないし、育児ができなければ社会は存在しない――』と述べており、ケアする男性もまたケアされる存在であるとまとめています。
(この小説は面白そうなので、今度読んでみたいと思います)

全体を通して、「イクメン」という言葉が、新自由主義的な価値観で使われてきたことを批判的に見てきた本書は、最後に『「イクメン」という言葉に含まれた余分な価値観をふるい落とし、子どもをケアすることそれ自体が持つかけがえのない意味に向かい合ったとき、私たちははじめて「父親」になるのでなないだろうか。』と締めて終わっています。

いろいろと男性の育児に関する映画作品が紹介されていますので、興味のある方はぜひ読んでみてください。

『ポストイクメンの男性育児』

著者は平野翔太さん。産業医、産婦人科医であり、産婦人科の現場で「男性の育児・育休」に課題を感じたことから、Daddy Support協会を立ち上げ、父親に向けた支援活動を行っています。

本書では、冒頭において「今後の男性育児は、『推進』ではなく『支援』が重要になる」ことを読者に伝えたいメッセージとして打ち出しており、そこに至った経緯や調査結果を丁寧に述べています。

1章~3章では、医師として父親、母親から聞くリアルな声に基づいて、育児期に夫婦がすれ違ってしまう現状を分析し、「イクメンブーム」にみられる男性の育児が推進されてきた社会的背景を解説しています。
そして、現在の父親が育児に向き合うとき「知識なし、経験なし、支援なし」の三重苦で苦しめられていることを明らかにしています。

4章以降では、3章までに示された課題に対する具体的な解決策について、企業の果たす役割と父親が育児で追い込まれないための心得について述べています。

例えば、企業においては、育児経験のない男性ばかりでの意思決定をやめ、育児経験のあるものを積極的に登用するなど、「育休をとるとむしろプラスになる」「育児などによる時間の制約に対し、意図的に評価を加える」という育児参画に対するアファーマティブ・アクションが必要であると述べています。

また、共同体育児を社会で担う「分散型育児」、社会的支援を受けて「誰もが(父親も母親も)育児と仕事を両立」できる「父親3.0」というスタイルが具体的なアクションとともに提案されています。

本書は、これから育児を迎える男性にとって、具体的に役立つアドバイスが多く記載されていますので、ぜひ読んでみてください。

子育てについて学べること

いずれの本も、2010年からはじまる「イクメン」の時代を振り返り、現在の男性の育児が置かれている状況が、当時イメージされていたキラキラしたものではないこと、そして、育児する男性に対する支援が不足していることを指摘していました。

特に『ポスト~』では、後半3章を使って「社会や企業に求める変化」「当事者である父親へのアドバイス」(それも、医師という専門的な目線で)具大的に書かれています。
これから、父親になる方にはぜひおすすめしたい本です。

今回ご紹介した本


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?