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僕らは明日を咲う 第1話 正しさ

群像劇。誰もがその世界の主人公。何気ない日常。それが一つの物語となる。短編物語。
第一話登場人物
 川田彩葉 速水結衣 蒼木沙良


神がいるかいないか、私はいて欲しいと願う。
神という人知をを超えた存在が必要だ。

人には人を裁けない。

これはこの地球上のどこでも誰でも起こりうるお話。
何が正しくて、何が間違っているのか。

私の名前は川田彩葉(かわたいろは)。そこらにいる高校1年生。

昨日友達の速水結衣(はやみゆい)と喧嘩した。喧嘩の内容はものすごく些細なことで、それでも私たちにとってはとても大切なことだった。

喧嘩の理由それは、共通の友達である蒼木沙良(あおきさら)への誕生パーティーのことだ。

私は事前に一緒にお店を決めて美味しいご飯を食べて、遊んで、プレゼントを渡すごく普通のパーティーを提案した。しかし、結衣は沙良には内緒で計画するサプライズを提案したのだ。

私の誕生日なら、サプライズでも大いに喜んだと思う。しかし、沙良はサプライズが苦手なのだ。昔、サプライズをされてよく分からなくなってパニックになって泣き出したことがある。

そのことを結衣も知っているはずなのにサプライズを提案したことに怒りの混じった悲しさを感じた。

私は諭すように言った。
「沙良はサプライズ苦手なんだからそれはやめたほうがいいよ。」

結衣は不満気な顔をしながら言った。
「私なら誕生日がサプライズパーティーとかめっちゃ幸せだし、いつまでもサプライズ苦手とか将来絶対困るよ。私は沙良が克服できるようにって考えてるの。」

「それは結衣だからでしょ?沙良のこと考えてあげてよ!」
つい、声を荒げてしまった。

「は、何?私が沙良のこと何も考えてないと思ってんの!?」
ここから、私と結衣の言い合いの喧嘩が始まってしまったのだ。

私が声を荒げなかったら、喧嘩にならなかったかもしれない。でも、自分の言い分が間違っているとは思えない。結衣の意見がおかしい。そう考えながら、今日が来るのが怖かった。学校がある。どうしても、結衣と顔を合わしてしまう。

「彩葉、ちょっといい?」
結衣に声をかけられた。

「昨日のことだけど、私は間違ってないと思ってるから。私だって、沙良のこと考えてるし!」
そこで、私は気づいた。

私も結衣も沙良のことを考えている。それは何も間違っていない。
それでも・・・

「あなたの幸せはあの子の幸せではない。」

これは私にも当てはまることだ。
沙良のこと考えているって言ったって、沙良に何も相談しなかった。

「みんな何が嬉しくて、何が嫌かなんて人それぞれなんだよね。相手を理解しようとする気持ちが大事なんだね。」
結衣は不服そうにしていた。

「そんなのただの綺麗ごとじゃん!」
「そうだよ。」

「私が物事をどう捉え、どう考え、どう感じるか。それを否定する権利はあなたには無いし、私にも無い。」

これは誰しもに当てはまること。

何が正しくて、何が間違っているのか。それは誰にも分からない。
ルールで定められているわけではないから。

あの日から、結衣とは話していない。
私はもう彼女を友達と呼ぶ事は無いだろう。それでも、彼女の幸せを願う。

第1話 終

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