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「夜明けのすべて」
瀬尾まいこさんの小説「夜明けのすべて」が映像化したと聞いて、わたしは映画館へ向かった。
原作は本屋さんで何気なく目に留まったことがきっかけで読んだけれど、そのまま1日で読み切ってしまうほどに引き込まれたから、今回の映像化はほんとうに楽しみだった。
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「ねえ知ってる?夜明けがいちばん暗いんだって。」
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作品の中で、光の入り方と、生活音が、すごく心地よかった。
冬の朝の白くてまっすぐな日差し、夜の真っ暗な空。
せりふがないところで聞こえる風の音、鳥の声、キッチンの音。
ふたりの日常、ただの日常。
そんななかで、思うようにいかないとき、自分のことはどうすることもできないけれど、人のことは助けてあげられる。
自分のことって、自分がいちばん知っていなくちゃいけないはずなのに、
わからないことや、自分ではどうすることもできないことがあまりにも多すぎる。
そんな自分、自分たち。
それでも、
周りの人たちを救い合えたら、それでいいのかもしれない。
藤沢さんが悩まされるPMSは、自分も長らく苦しんでいるから、つらさっていったら嫌と言うほどわかる。「つらいのに誰もわかってくれない」そんな環境に置かれたときの、その気持ちを思うと、胸がぎゅっとした。
そして今過ごしている周囲の方たちの優しさ…ひとつひとつの言動、そのありがたさにも心が動く。
山添くんの、今までは普通にそこにあった大切なものが次々に失われていくやるせなさは、想像することしかできない。けれど、
「前までの自分に戻りたいけれど、今の自分は嫌なんだけど、でももうここから変わることができない。自分の力ではどうしようもない。」
そんな繊細な気持ちが、手に取るように伝わった。
藤沢さんの、読んでいて観ていてクスっと笑えるような突拍子もない思いつきも、ただ「良い」と思ってしているだけで、本人はいたって真剣。
それに対する山添くんの反応も、だんだんと変わってゆく。
彼らの少し冷めた、でもあたたかい繋がり。
似ているようで比べられない、つらさを分かり合って、助け合う仲。
なくてはならないわけではないけど、ああいうやさしさに何度も救われながら、
わたしたちって生きていくんだよなあ。
「夜明けのすべて」
作品を観終わると、とても穏やかな気持ちになりました。
20240216 冬晴れの。日比谷で過ごした素敵な日に。
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