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出版業界

業界規模

国内 1兆5,432億円(紙媒体と電子媒体の出版市場合計、2019年)

引用:全国出版協会 出版科学研究所『出版月報』

業界の構成

◆「出版業界」とは
書籍・雑誌の企画から編集、発行までを行い全国の書店などから私達消費者に販売するという業務を担う業界
◆出版・雑誌業界を構成するステークホルダー :出版社、出版取次、書店
出版社…企画を立ち上げ執筆者やデザイナーと共に執筆作業やイラスト製作をした後印刷する
・多彩なジャンルの雑誌を手がける総合出版社
・文芸・経済・地図など特定の分野に強みを持つ出版社
②出版取次…出版社と書店の間をつなぎ書籍を書店に委託販売する
③書店…私達最終消費者に書籍を販売する

ビジネスモデル

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出典:https://unistyleinc.com/techniques/1002

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◆儲けの仕組み
〈販売委託制という“特殊な”流通
再販制度により価格は出版社が決め、販売する書店は価格を決められないため、売れない出版物は返本が可能な販売委託制が採用されている。近年では書店が返品を前提とせずに買い切る代わりに、粗利益を上げようとする動きもみられる。

本とお金の流れを理解しよう: 出版取次の「3つの機能」

①商的流通機能
取引機能
出版社からの仕入と書店への送品、それに関わる取引代金の請求、回収が出来る機能。この機能により、出版社は書店の売上を回収することが出来る。
また、書店で売れ残った書籍は、この機能により再び取次を経由して出版社に戻り次の販売チャンスを待つという手順を踏む。
販売機能
店舗運営、出店などのアドバイス、出版社の大型企画商品の販売促進などを担う機能。
従来の流通業のみでは、出版取次の経営は厳しいため、この部分に注力する出版取次が近年増加している。
例)書店の無い地域へのワゴンカーによる移動書店や、売り場の空間プロデュース

②情報伝達機能
情報伝達機能とは、情報ネットワークシステムにより出版社、書店の売上データ・市場動向を双方向に提供する機能で、よりよい出版社作り、書店作りに貢献している。

③物的流通機能
物的流通機能は出版社から商品を仕入れ、書店別に仕分け、全国の書店に配送する機能で、これにより各書店の規模に応じた仕入れが可能となる。
参考文献:https://unistyleinc.com/techniques/1002

将来性・成長性

◆現状の課題
①出版不況

この20年間、出版市場は縮小し続けている     原因:若者の活字離れや娯楽のデジタル化など
・紙媒体の販売額も書店数も全盛期の半分近くに
・雑誌の創復刊も年58点と過去最低(2020年)
電子販売はコミック中心に大きく伸長するが、市場全体を押し上げるほどではない(全市場の2割の規模に過ぎない)

②高い返品率
委託販売制度:出版社への返品が可能→その返品率は30~40%と高い
出版社はベストセラーなどの作品でこれらを補ってきたが、近年の出版不況ではこの返品率が大きな負担となっている。
返品率が高くなると、この赤字を埋めるために新刊をどんどん取次へ送って帳消しにし、その返品分の赤字をさらなる新刊の入金で埋めるという自転車操業のような状態に陥ってしまう。
出版不況の中そのような状態では長く続かず、いずれ新刊による入金よりも返品による借金の方が多くなり倒産する出版社も少なくない。

③オンラインメディアでの課金システム構築の難しさ
WEBサイト事業は競争激化の中で収入増は限定的。
新聞社などの電子版を除けば、オンラインでは「ネット記事=無料」という風潮が強く、出版社などが有料記事を設けるとPV数は激減する。このPV数が減るとメディアとしての規模や知名度が低下するだけでなく、広告収入も減少する。かといって、広告収入に特化して全ての記事を無料化すれば当然ながら読者から得られる利益は0となる。PV数(つまり広告収入)と記事の有料化はトレードオフの関係にある。

◆業界予測
今後も市場規模は縮小傾向、思い切ったビジネスモデルの転換が必要
読者のニーズをくみ取りながら他業界とも連携し、新たなIP(知的財産)づくりに挑戦していく
参考文献:https://unistyleinc.com/techniques/1392#C

就活生が感じたリアルなメリット・デメリット

◆メリット
・好きなことを仕事にしている人が多いため、ものづくりが好きな人や仕事を趣味にしたい人には最高の環境。基本的に同じ仕事をする日がないので刺激的な日々を過ごせそう。
・会社の名刺を使って芸能人や色んな業界の人に話を聞くことができる。

◆デメリット

・出版不況により、今後も市場規模は縮小し続けるため、キャリアパスへの不安が大きい。多くの企業で賞与なども削減傾向にある。特に紙の雑誌は近いうちにデジタルに完全移行しそう。「雑誌編集者」という仕事がなくなる可能性もあり得る(主観)。
・雑誌編集部は残業が多く、ワークライフバランスが崩壊している人が多い(ただ、そもそも仕事を趣味にできない人は雑誌編集部に行かない)。
・古い企業体質のところが多い。というのも、出版不況で新卒の採用が凍結し、企業の年齢層が高くなっている。その結果、企業によっては、新しい事業に挑戦する機運が薄れてきたと感じる社員の方もいらっしゃった(社風は実際にOB訪問やインターンで確かめてね)。

出版社の職種と働き方

◆制作(制作、校閲)
制作…雑誌などの企画、制作、外注依頼、打ち合わせ、デザイン編集
校閲…原稿を隅々まで読み、内容の誤りを正したり不足な点を補うといった作業を行う
※制作部門と編集部門の棲み分けは明白でなく、編集者が企画を出したり校閲を行うケースも

◆編集
編集…作家との企画、執筆依頼、スケジュール管理、打ち合わせ、原稿チェック及び編集、各部署との調整

◆営業・販売促進(営業、広告営業、販売促進)
①営業…出版取次や書店に対して自社の書籍や雑誌の営業、提案などを行う
②広告営業…雑誌などに掲載される広告の広告主に対して営業、提案などを行う
営業手法は、担当書店の立地や客層、過去の売上データなどに基づいてどの本が売れるかを分析し、担当者と相談して注文を受けるという形
③販売促進…書店の販売スペースの拡張や陳列方法の変更などを行う

キャリアパス

編集者の中には、企業内でマネジメント側へとステップアップする人や、フリーランスの編集者(ライター兼編集者も)として独立して起業し、セミナー講師など幅広い仕事をする人もいる。同業他社からオファーを受けて転職する場合もあるようだ。

【代表的な企業】

~出版業界MAP~
 (がんばって作った!)

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◆出版社
総合系
集英社(売上高1,333億円)
https://unistyleinc.com/companies/98
講談社(売上高1,358億円)
https://unistyleinc.com/companies/97
小学館(売上高977億円)
https://unistyleinc.com/companies/772
KADOKAWA(売上高2,046億円)
https://unistyleinc.com/companies/1008
経済系…日経BP(売上高367億円)、ダイヤモンド社(売上高132億円)、東洋経済新報社(売上高114億円)
教育系…学研ホールディングス(売上高1,405億円)

◆出版取次
トーハン(売上高4,082億円)
https://unistyleinc.com/companies/665
日本出版販売(売上高4,758億円)
https://unistyleinc.com/companies/1117

◆書店
カルチュア・コンビニエンス・クラブ(売上高3,532億円)、紀伊國屋書店(売上高1,212億円)

出版業界を見ている後輩へのメッセージ

出版社の内定を取るためにやるべきこと2選(主観)
①読書とエンタメとニュースに触れる習慣をつける
出版社のESや面接では、必ず「好きな本のどんなところが好きか教えて」「最近興味のあるエンタメについて教えて」「最近関心を持ったニュースについて教えて」と聞かれます。また、ESや筆記試験で作文を書く機会があります。そのため、普段から読書とエンタメとニュースに触れることが大切です。これに関しては、本選考の直前に対策してどうにかできる話ではありません。
⑴受けたいと思っている企業のコンテンツはもちろん、あらゆるエンタメコンテンツ(ノンフィクション作品、文芸作品、コミック作品、映像作品)に触れる。⑵毎日ニュースを見て、関心を持った事に対して自分なりの意見を持つようにする。
この二つはマストで実践してください。特に読書が苦手な人やミーハーな人は習慣づけることが大事です。(なお、内定を取っている/最終面接に進んでいる友人の中には、毎月何十冊もの本を読んでいる人や、世界中の美術館を巡るのが好きな人、少女漫画をコレクションするのが趣味の男性もいました。)

②出版社でやりたい「企画」を具体的に考える
結局のところ、「御社の〇〇事業部でこういう企画やりたいんです!」っていう志望動機を通じて、企業の人に「この学生が考える企画はおもしろいね。それに彼(彼女)の強みはこの業務で活かせるから実現できそう(活躍してくれそう)だし、人柄や考え方もうちにマッチしてるね。」って思ってもらえたら内定できると思います。
そのために、企業研究やOB訪問を通して「この企業のこの事業部ではどんな仕事をやっているのか」を調査し、自分がその企業で実現したいこと(=企画)とすり合わせる作業をしましょう。その際、内定者や社員の方にどんな企画を提案したのか聞いてみると良いと思います。


この他、アイデア思考トレーニングや作文対策もしておくべきですが、上記の二つができていなければ面接の土俵にすら立てないと思います(実際に、編集者がそうでした)。
出版社は少ない採用人数に対して応募人数が多く、大変狭き門だと思いますが、どんな人にも内定を掴むチャンスはあると思います。ぜひ、頑張ってください。

参考文献・おすすめの引用サイト

「【業界研究】出版・雑誌業界完全ガイド!業界の動向や仕組み・職種徹底解説」ユニスタイルhttps://unistyleinc.com/techniques/1002

「【業界研究:出版】これで心配ご無用!講談社・小学館・集英社、3大出版社の事業内容や社風を徹底比較」ワンキャリア
https://www.onecareer.jp/articles/1150

「出版業界の仕組みと今後 ~業界の将来性を徹底分析~」ユニスタイル
https://unistyleinc.com/techniques/1392


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