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千二百文字小説(10/19)

 私の体は子供たちのかけらでできている。 

 私たちの心はガラスでできていて、脆く。繊細だ。

 比喩なんかじゃない。心だけでなく、体、毛先まで全てがガラスでできている。でも傷ついた体は溶かして伸ばせば治る。祐逸本来のガラスと違うところは、大人になると体が硬くなって、溶かせなくなるということだ。

 驚かれてしまうだろうが、言うね。私が今ハマっているのは大人のようなまだ硬くなってい子供を粉々にして、世界にばら撒くことなんだ。特に、子供を割った時に命が消えて固まっていく表情はたまらない。満たされていくんだ。十分に私の心が。

 でも、いくらわっても、わり続けてもいづれ満たされなくなる。また欲しくなるんだ。いつからだろう、私がこうなったのは。

 私が大人になる前のことだ。私は箱の中から光を見た。小さな穴から通る小さな一筋の光だ。私たちは硬い棘を飛ばすこともできる。私はママとパパを怒らせると、不要になった棘を捨てておくダンボールの中に閉じ込められた。私は一日中そこで過ごして、ただ一筋の光を見て不安と痛みを殺していた。大人が出すことのできる棘は、対象によってより鋭利になる特性を持っている。私が入れられている段ボールに入っている棘は全てママとパパの棘。

”私が世界で一番愛していた存在からの棘だ”

 子供であっても棘は出すことができる。その棘は大人同様、対象によってより鋭利になり、ガラスを貫く。私が高校生の時、友達が私の棘をくれと言ってきたことがあった。何に使うのかわからなかったが、その友達は私の祐逸の理解者で信用していた。次の日、たまたまトイレに行こうとしていた時に、友達を見つけた。「いやだ。こんな、酷すぎる」友達の悲痛な声が聞こえた。私は友達以外に誰かいることに気がつき、急いで向かった。友達の前に立っている男が私の棘を振り上げ友達に刺そうとしている。そんな、そんなつもりじゃ。

”私が彼女を追い詰めた。私の棘で”

 棘は、対象が特別な存在でなくても、大人の硬い体を傷つける方法がある。それは、子供の時にできた傷に当てることだ。若いうちはまだ体を修復することができる。でもそれは見た目だけ。確かに体は減っていって、ガラスを伸ばした分さらにわれやすくなるの。

 だから、私の体は子供たちのかけらでできている。 子供の頃につけられた傷を埋めるためにね。だから子供を使って傷を埋めるのさ。子供はとても便利よ。脆くて、簡単に歪んで、簡単に傷つく。大人と違って全てが弱点なのよ。私が子供の頃つけられてきた傷は、私が大人と同じことをすることで満たされていく。これがやめられない。たまらないのよ。

 私がこの世界の本当の母よ。私がやり返してやる。全てあなたたちが始めたこと。私がこの世界を粉々にしてやるわ。

 でも、でも。傷口から砂。完全には満たされない。完璧にはなれない。私はずっと誰かわからない人。もうすでに私は私じゃない。


タイトル『史上最高の不純』

※お知らせ
少しの間、プロットだけの公開になります。
ちゃんとした小説になる明確な日程はありません。


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