【連載小説】『パタイトのテル』3s2w「鎮火」
たくさんの能力者から追われる。助けに来たのに、家族同然のみんなを敵に回すことになってしまった。
「走れ走れ走れ!」
後ろから爆発音が絶えない。人間の挙動を超えた動きで襲い掛かってくる。これ以上恐ろしいものが考えられるだろうか。
「そこを右、そしたら左、またひだっ、ダメ攻撃来る!」
タハトたちはギリギリで攻撃をよけ続けている。
アイノウの指示がなければ一撃で今頃死んでしまっているだろう。
赤い煉瓦の狭いトンネルをひたすらに走り、大きい広場に出てきた時だった。
「エ……そ、そんな……」
とアイノウはその広場の真ん中でピタッと立ち止まってしまった。
「どうしたアイノウ!」
「もうだめだよ。タハにぃ……ノウたちは全方位囲まれてる」
すると大広場の上や至る所にあるたくさんの入り口から、黒い服を着た人たちがぞろぞろと入ってきた。
「おとなしく投降しろ!」
すると大広場の上の陰から声が聞こえてきた。
「外に行ってどうする。外は危険に満ち溢れているぞ。ここで子供たちと仲良く暮らし、戦争の道具となれば一番君たちにとって良いことではないか。何がそこまで不満なのだ」
「狂ってる。戦争に使われるぐらいなら、虫に喰われて死んだ方がマシだ」
「っフン、悪いいいようだな。こいつらを捕えろ。頭以外の傷は大目に見る」
影の男は、周りの銃を持った黒装束の奴らに指図すると、一斉に銃がタハトらに向けられた。
タハトとアイノウは足を引いて、背中合わせの位置に立った。
「逃げ道はないよタハにぃ!ノウはわかるの、大人しく投降したほうが無駄な痛みがないよ。タハにぃ」
「いやまだだ、まだ約束が残ってる」
タハトは自身気な顔でアイノウを励ました。彼はまだ何も諦めてはい。
「え?」
次の瞬間だ。黒い服の人たちは銃をなんの救いもなく、タハトとアイノウに向けて放たれてしまった。
さらにその一刹那だ。
天井がピカっとひかり、ゴウゴウと音をたてながら光が落下してくる。そして、炎が周囲を燃やし尽くし、辺り一帯が一目散に炎の海と化した。
カミーラとマイクだ。
「お待たせ」
「兄ちゃん!しっかり約束守ったぜ!」
「うん!信じてたよ!カミーラも無事でよかった」
「弟が世話になったみたいね。ううん、ありがとう……!私にも謝るチャンスをくれて。ぜひあたしも兄ちゃんって呼ばせてほしいわ!」
「へ?!ま、まぁ、いいけど」
そんな時間もつかの間、黒装束の増援がぞろぞろいくつもある広場の入り口から入ってきた。
カミーラとマイクは背中を合わせ、タハトとアイノウと手をつなぐ。すると息ぴったりで炎を使い、上へ上へと勢いよく飛び上がり、上昇する。
「と、飛んでる!」
火花は花びらを描き、先ほどマイクたちが割って入ってきたガラスが、キラキラ落ちていくその間はとても遅く、ゆっくり動いているようだった。
その時までは、美しく感じていた。誰かはわからないが、誰かの鞭のような能力でマイクが引っ張られてしまった。炎で追い払おうとするがうまくいかない。みるみるタハトたちと距離が開いていく。
(せっかく、せっかく。姉貴とも仲直り出来て。いい兄ちゃんもできたのに……クソッ、クソ……アァ、ハハー瞬だなァ)
「マイクゥウ!嫌だァア!」
カミーラは戻ろうとするが、マイクは鞭を炎で断ち切ろうとするのを諦め、代わりに炎でカミーラたちの火花を押し上げた。
あっという間にタハトたちは見えなくなった。しかし、マイクは捕まってしまったのであった。
施設を脱出したその後も、カミーラは泣いていた。でもあふれる涙はマイクの炎で全てぬぐって消えていく。目指すは飛行場。次はこの国、アンギアから脱出しなければならない。
だんだんとマイクの炎の効力は切れてくる。ギリギリで飛行場につき、タハトたちは落下し転んだ。
「いてて。ああ、マイク……みんな。絶対に助けに帰ってくるから」
そして3人は貨物用飛行船に乗り込んだ。
しばらくすると飛行船は動き出す。小さな窓で3人が町の光を眺める。光はあふれんばかりに輝く。アイノウは不敵な笑みを浮かべた。
「ついたァ」
そしてタハトたちは強い光に包まれた。
*****
「兄、ゃ兄や、んちゃん」
「うッ……」
「兄ちゃん!兄ちゃん!起きてよぉ!」
タハトが目を覚ますとそこはがれきと炎であふれていた。カミーラは頭から血を流し、周囲から容赦無く放たれる銃弾を炎で必死に防いでいた。
「一体なにが起こったんだ……!」
次回 明後日 投稿。
To be continued..
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