【連載小説】『パタイトのテル』2s2w「不思議な特訓」
池にぽつりと浮かぶ島に鐘が鳴り響く。子供たちは楽しそうな顔を真剣な顔に変え、鐘のほうへ走った。
アイノウはタハトに手を差し出し、手をつないで連れて行ってくれた。するとそこは驚きの一面が広がっていた。子供一人一人が魔法みたいな力を使って大人と戦っているのだ。攻撃をするだけではなく、回復をする子や、防御をする子もいる。
少し眺めていると二人の子供が出てきて、大人にすさまじいほどの炎を放った。が、土埃から目にもとまらぬスピードで容赦なく子供たちをなぎ倒していく。
「みんなやられちゃう。急いで加勢しなきゃ、ほら行こう」
アイノウはタハトの手を引っ張ってレンガで作られたアイノウの腰ぐらいの壁を超えた。そして戦いに参加した。
タハトは、能力もないし、一体なにが起きているのか、どうすればいいのかわからないまま参加した。
すると大人の人が現れてタハトに言った。
「君が新入りのタハトだねぇ、牙れよ」
と、すごいスピードでタハトに向かう。アイノウは大人の人が足を地面につける前に言った。
「避けて!」
タハトはギリギリのところで避けた。しかし、少しもかすっていないのに顎に擦り傷ができた。
「あ、あの人も能力を持っているのか」
ひりつくだろう傷口を抑えたタハトはアイノウに聞いた。
「一応持っているけど、あれはその能力じゃない。普通に鍛えたとのことらしいよ!」
アイノウは大きな目を閉じてまんべんの笑みで答えた。
「あはは!そ、そうなんだー……オシエテクレテアリガトウ」
タハトは勝てるはずがないと自覚した。
「……あ、そうそうさっき大人の人が攻撃をする前に『避けてぇ』って言ってくれたけど、あれはアイノウの能力なの?」
タハトは気付いて言った。
「うんそうだよ!ノウはね、相手の知っている事がわかるんだー」
アイノウは普通に元気よく答えた。
なんて強力な能力だろうか。ただ相手の考えていることを読むだけじゃなく、相手が知っているすべてを知ることができるのだ。
「すごい能力だね!」
「へっへーん!でしょ」
「うんすごいよ!でも、とっ、」
タハトは耳が引きちぎれるほど強烈な一撃を食らった。
「よそ見厳禁だよー!」
なんて大人気ない。大人の人は手加減なしで突っ込んでくるのだ。
「あわわわ、お話してたから知ってること読むの忘れてたー!ごめんタハトお兄ちゃん!」
アイノウは顔を青くして、慌てた様子でいった。
するとすぐにアイノウも遠くに飛ばされてしまった。大人の人は、手のひらを払い、話し始めた。
「自己紹介がまだだったねぇ。私の名は、テイパ・グランヒルテ。先生と呼んでね」
テイパは攻撃態勢のまま言った。そして、その肌白い肌、赤い唇からとんでもない言葉が発せられたのだ。
「あ、そうそう。私ね、あなたのお母さんのことよーく覚えているわ。あれねぇ、結構殺しがいがあったのよー。あ、ごめんごめん気にしないでぇ、記憶がない君に行っちゃいけないことだったよ。アッハハハ!」
テイパは大きな声で笑った。軍人のような服を着た彼女は、青い瞳を隠して口を開け、腹を抱えていた。
すると、タハトは雰囲気をガラッと変えて言った。
「……僕は、そのひとがどこのだれかはしらない。けど、どんなことよりも憎い、あんたが憎いよ」
タハトにガっと怒りが降り注いだ。そう、タハトは今、家であったことの記憶が全てないのだ。白い空間で改ざんされたのだろう。タハトの頭の中で巡るものはただ一つ。テイパをボコボコにするインスピレーションだけだ。が、あっけなく打ち返されてしまった。
「その程度か……力を試してみたかったから怒りをあおって、覚醒させようと思ったんだけど。だめだねぇ、君、才能ないかもねぇ」
とテイプは言い。振り返って次の子供をふたたび倒しに行こうとしていた、その時。
「まてよ……許されるかよ、子供ボコボコにして、何にも感じねぇのかよ?許さねー。絶対にお前を許さない」
「ん?」
テイプは歩いたまま振り向いた。
するとタハトから光があふれ出てくる!
「なっ!?」
首筋の皮膚を引き裂き、破いてしまいそうなほど激しい痛みが彼女に襲う。周囲はあっという間に光に包まれ、タハトは目を閉じて気絶した。
次回 明後日 投稿。
to be continued..
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?