ナキムシだったけど、もう大丈夫。

高１か高２の夏。
家族で出かけてて、帰宅したらMステがちょうど始まった。
『間に合ってよかった～』とホッとしながらテレビの前に座ったのを今でも覚えている。

中学生の頃、私はラジオっ子だった。
起床時間にタイマーセットして、ラジオが目覚まし時計。
家を出るまでラジオを聴き、帰宅してから寝るまでずっとラジオ。
テスト勉強中もラジオ。
流れてくる音楽に夢中になって勉強にならない日もあった。

そんなラジオ生活の中で出逢った、ある１曲。
切なくなる歌詞。
でも、すごく暖かな声。
聴き入ってしまった。
曲が終わり、アーティスト名と曲名をしっかりメモ。
他の曲も聴いてみたい！と思い、CD屋さんに行ったけど見当たらない。
でも、諦めきれなくて、ひたすら情報収集。
インターネットが今みたいに普及していなかったから、音楽雑誌を読み漁った。
そして、私が聴いたあの曲は、そのアーティストの２枚目のシングルという情報を、やっと手に入れることが出来た。

それから数ヶ月後、３枚目のシングルが発売され、ラジオでもよく聴くようになった。
２枚目のシングルとは全く違う曲調で、『本当に同一人物の曲？』と思ってしまった。

そして、３枚目のシングルでMステ出演。
ドキドキワクワクでテレビの前に座り、お目当てのアーティストが出てきた瞬間、『ちっちゃーーい！可愛いー！』とテレビに釘付け。
ラジオで何度も耳にしていた曲。
テレビの中で動きながら歌う姿を見て、大興奮。

３枚目のシングルからは、すんなり手に入れることが出来るようになり、シングル、アルバム、発売されるとすぐに買いに行き、何度も何度も聴いて過ごした。

でも、いつからだろう。
全くと言っていいほど、聴かなくなった。
正しくは、聴けなくなった。

どの曲を聴いても、よく一緒に聴いていた人との思い出が蘇り、辛くなってしまうようになったから.…

どんな新曲が出てるのか。
どんな歌詞なのか。
どんな曲調なのか。
何にも知らないままの十数年。
その間、ほんの少しだけ耳にすることはあったけど、フルで聴いたことはなかった。
新曲であっても、聴く勇気がなかった。

でも、数ヶ月前、ラジオで流れてきた曲。
初めて聴く曲だったけど、懐かしく感じた。
切なくて.…でも暖かな声。
思った通り、私の大好きだったあのアーティストだった。
ほんの少しだけ、思い出が蘇ったけど、辛くなることはなかった。
だから、また、聴こうと思う。
まずは、出逢った曲に。

泣き虫だしいい言葉も並べられない
笑顔も下手だし不器用だけど
ありのままの気持ちを誓え
aiko／ナキ・ムシ

そして、もう二度と聴けないと思った曲も、聴いてみようと思う。

５年後あなたを見つけたら
背筋を伸ばして 声を掛けるね
一度たりとも忘れた事はない
少しのびた襟足を
あなたのヘタな笑顔を
aiko／えりあし