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桃たちの記憶.

 人でも動物でも植物でも、触ったときに てのひらから いとしさに似た何かが伝わってくることがある。今日は久々にその不思議な感覚があった日だった。

 ふるさと納税で福島県から我が家にきてくれた立派な桃たち。かわいく並んで箱に入って、キラキラ光っていた。全員がわたしを見ている気がした。

 うれしくなって桃をひとつ手に取ってみると、てのひらから感情の記憶のようなものがつたわってきた。うまく言葉で表現できないのだけれど、とにかく、この子たちはとても愛されて育ったのだとわかった。

 この子たちを育てた農家さんはきっと、真剣に桃のことを考えて大切に育てる、とても立派な方なのだろう。

 この大きさになるまで長い時間がかかるのに、食べてしまうのは一瞬だから、せめてゆっくり噛んでみる。やさしさを食べているようで、なぜか涙が出た。

うれしい日だった。

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