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令和の狂騒映画『バビロン』

『バビロン』(原題:BABYLON) 2023年公開
監督:ディミアン・チャゼル
出演:ブラッド・ピット、マーゴット・ロビー、ディエゴ・カルバ 他

ケネス・アンガーの「ハリウッド・バビロン」を公開前に読んでおいて、20年代狂乱の時代についてイメージはしていたものの、映画序盤のパーティーシーンはイメージの上をいく映像だった!女も男も象も踊り狂って、酒と薬でハイになり、端っこの方ではSEXしてるという狂いっぷり。その映像でお腹いっぱいですが、当時は毎夜それが行われていて、それ専用のお城も立てたというから全員ゴールデンエイジでイカれていたに違いない。

ネリーが出演することになるサイレント映画の撮影所(といっても設備の整っていないだだっ広い砂漠)では、戦争映画のすぐ隣でアスベストの雪を降らせた雪国の撮影があり、そのまた隣で女の子が踊る酒場の撮影があり、音を撮らないので同時進行で多くの映画を作っている。後半でブラピ演じるジャック・コンラッドが馴染みのメイクスタッフと一緒にやった映画の本数を82本だ、というシーンがあるんだけど、そりゃこんなに同時に撮ってりゃそれくらいの数いくなと納得した。撮影所をカメラが長回しで大移動するシーンはとてもかっこいい!ディミアン・チャゼル監督のこだわりで20年代ぽく撮影しないようにしたかったらしい。

『雨に唄えば』でトーキー出現の大事件ぶりは描かれており、ジーン・ケリー演じるドンはその波に乗れて生き残りますが、『バビロン』では映画の変革期に乗り切れなかった、消えていくしかなかった俳優たちばかり。エリノアがジャックコンラッドに言うセリフが映画ファンとしては最も心に残りました。「スターは概念であり人じゃない。しかし、一度スターになることができれば、作品の中で永遠に輝くことができる。あなたが死んだ後に生まれた子があなたを友人だと思う。」みたいなセリフ。
まさに自分がクラシック映画を大好きで今見続けているので、俳優本人が生きた時代では消えてしまったと思われても、映画史全体ではあなたは輝き続けているよ!と、ディミアン・チャゼル監督の言いたいことなのではないかなと思いました。

突然はちゃめちゃに怖いトビー・マグワイアのシーン。あそこは、華やかのようにみえる映画作りの裏では、汚い闇の取引もあったのだということの具現なのではないか、と思った。

本編最後の怒涛の映画の引用。ここは映画を進化させた作品群が並んでるようです。(映画評論家の町山智浩さんが解説してるnoteの記事を見ました。)
映画自体が常に新しい変化を必要として進化し続けてきたことがわかる。
ジャック、ネリー、マニー三者三様で、映画という大きなものから離脱せざるを得なくなりますが、3人ともその大きなもの一部となった証は必ずある。1952年、マニーが映画館でお客さんとして『雨に唄えば』の”闘う騎士”のシーンを見ている。マニーが映画会社の重役だったときに制作していた貴族のロマンス映画は『雨に唄えば』の”闘う騎士”のオマージュです。バビロンでは先にマニーがこの作品をつくっているので、雨に唄えばがオマージュしているように見える。マニーが映画という大きなものの一部になったのが分かるシーンで、かつて栄光を極めた人の悲しい末路ではなくある種希望のあるラストシーンでした。ハッピーエンドだけがいい映画じゃない、というラ・ラ・ランド的なラストがビターでなんとも言えず好きな終わり方だった。

<分からなかったところ>
○ジャックがレット・バトラーのセリフを考えてるシーン
 戦争映画の撮影時にグロリア・スワンソンに出演の電話をしてる後にそういうシーンがあったのだけど、なんでか分からなかった!
その後、クラーク・ゲーブル主演のポスターをみて微妙な顔をしてるシーンがあったので、一旦レット・バトラーの役はジャックに決まっていたけど落ち目になったことでゲーブルに変わったということでしょうか。

<推測してるところ>
○ジャックとジョージの関係
 ジャックは同性愛なんじゃないか、と推測したんだが違うかな。本人は自覚していないかもしれないけど。ジョージの相手を毎度探して、「救ってやってくれ」というのは自分がストレートだが女にもてないジョージを救うことができないから、ではないかなと思った。でもウエイトレスとSEXしてる
シーンが序盤にあったので違うかも。



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