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平静

「まま〜〜どうして大人の人たちは戦ってるの?」と六歳の子供が無邪気に聞いた。
それに対し母が「それはね正輝、、、、その人達にとって大切な人たちを守る為に戦ってるのよ」と答えた。正輝はお母さんを真っ直ぐに見つめていた。第三者から見たらそれは母を慕う子ではなく、先生と教え子のように見える。母はあまりに正輝の澄んだ綺麗な目を見ている内に本当の事を言えない情けなさに押し潰されそうになった。
本当は戦争というものは一大ビジネスの一つであり利権が絡んでいるものなんだよという残酷な真実をまだ六歳の男の子に誰が言えるのだろうか、それは一部の目覚めた大人が思うことだろう。

 戦争というものはいつの時代も若者が国の使命など重いものを背負って戦い、甘い汁を啜ってる無能な上の連中は無謀な策を練って口を咥えて見ているだけだ。行きたくもない戦争に強制的に参加させられ、家族や友人、恋人とは離れ離れになる。それは心にぽっかり穴があくどころの話ではない。無謀な策のせいで死んでいく若者を見て笑っている売国奴の顔が予想つくものだ。そして、戦争の責任を取ると言いつつ強国の言いなりになる、要するに属国に成り下がるのだろうな。勇敢に戦って死んでいった英霊達に失礼だとは思わないのだろうか、よく涼しい顔して靖国神社を参拝できるなと私は思う。

 「正輝はもし戦争に行くことになったらどうする?」と逆に母が聞いた。すると正輝は、
「ん〜〜どーしようなー、ぼくはママとパパと好きなひとの為だったら行くとおもう。でも、したくないからにげるかもね、」と自信を持って言った。この子は人生二周目なのではないかと疑うくらい強い子だと思った。そして、嫌な事があったら逃げてもいいという誰もが考えれば分かることを六歳の男の子が言っている事に驚きを隠せなかった。子供から学ぶ事は案外多いかもしれない。
そして母は「そうなの。なら正輝はきっと強い子に育つわね。ふふ、将来が楽しみになってきたわ。」と母は嬉しそうに言った。
「おーーい、清子さーん。正輝くーん。」と近所のおじさんが私達を呼んだ。
「あーー長谷川さん。」と少し高い声が出た。
「これ、これ見てよ。うちの畑でさー取れた蜜柑よかったらあげるわよ」と袋に入った蜜柑を持って言った。「え〜本当ですか?!いつも有難う御座います〜。しかもこんなに〜。今度何かお礼させてくださいね〜」と言い、蜜柑を貰って母は喜んでいた。「正輝くんも、見ないうちに大きくなったわね〜おばちゃん嬉しいわー」と言われたので「ありがとうございます。」と笑顔で返した。
空は高く綺麗な群青の雲をしていた。

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