ディグ・モードvol.104「アイレイ(AIREI)」
アイレイ(AIREI)は、2020年にデザイナーのドリュー・カリー(Drew Curry)が設立したロサンゼルス拠点のファッション ブランド。最初のコレクションでは綿と作業着の歴史におけるファッションを考察し、テキスタイルはインドのカディを使用した。デザイナーはロサンゼルスですべての服を作り、クラフトマンシップと手作業に重きを置いている。
DSM LAで働くデザイナー
ワシントン州タコマでブルーカラーの家庭で育ったドリューは、いつもクリエイティブで何かを作りたいと思っていた。家族のなかにファッションデザイナーやアーティストはいなかったが、子どもの頃から服で自分を表現することが好きだったため、高校を卒業したら自分のために何かを作りたいと考えた。
ドリューはロサンゼルスに移り、デニム界のレジェンドであるアドリアーノ・ゴールドシュミット(Adriano Goldschmied)と協力しながら、自身のブランドを開発した。デザインしたTシャツをKITHやHARVEY NICHOLSなどの店に販売していたが、実際のところビジネス的にはうまくいっていなかった。
その頃、ちょうどドーバー ストリート マーケット(Dover Street Market以下、DSM)LAがオープンしたばかりだった。「たとえ他の人の下で働いていたとしても、自分はデザイナーになれる」と思ったドリューは、川久保玲とコム デ ギャルソンのファンでもあることから、そこで働くことを決意した。
DSMでは4,000ドルもする奇妙な作品を売ることができ、それを求める顧客や、それを見るために店舗を訪れる人がいることをドリューは知った。これは彼自身の服に関する知識の基礎を揺るがし、もともとブランドで取り組んでいたことを見直すきっかけとなった。
「人々に愛されるものを作りたかったのですが、範囲が広すぎて誰も愛さなかったと思います。人々がすでに見てきたものとあまりにも重なっていました」とドリューは『Highsnobiety』で語っている。2020年、彼はパンデミックの真っ只中にアイレイを立ち上げた。それはデザイナーにとって新たな章を開く時だった。
「私は18歳から服のデザインをしていましたが、これまで真剣に自分自身に問いかけたことはありませんでした。私はどちらかというと個人的な旅のような形で、自分自身を夢中にさせていました。アイレイはこの新章です」と彼はイビザ版『L’Officiel』で語っている。
ドリューは、パリファッションウィーク中にAirbnbでブランドの仮設ショールームを開設した。その際、コム デ ギャルソンとDSMの社長であるエイドリアン・ジョフィ(Adrian Joffe)によって、アイレイは偶然見出された。ジョフィはドリューがDSMで働いていることを知る前から、ブランドをドーバー ストリート マーケット パリを通じてサポートすることを申し出た。
ドリューはパートナーシップによる支援のみで自身の収入を得ているわけではなく、実際まだDSM LAで働いているが、彼にとってのヒーローからサポートを得られることは刺激的だ。
綿とワークウェアの歴史におけるファッションを考察
アイレイのファースト コレクションで、デザイナーは綿や植物をリサーチした。それは、「綿とワークウェアの歴史においてファッションであることは何を意味するのか」という考えから生まれ、長い歴史の中で米国で綿花を摘んだ移民や囚人労働者だけでなく、何百年も長持ちするように作られたワークウェアについても探求するものだとドリューは説明する。
そして、彼は生地をすべてインドのカディに置き換えるというアイデアを思いついた。このテキスタイルはデザイナーが10代の頃に訪れたインドが彼に与えた影響を呼び起こすものだ。彼は大学卒業後、その文化をより深く理解するために2か月間そこで暮らした。ドリューがカディを真に評価し始めたのはその時だった。
カディについて、ガンジーが英国植民地主義に対する平和的な抗議活動として人々に自分で衣服を作るよう奨励していたときに有名になったとドリューは説明する。電気もガスも何もなく、手で織機を前後に押したりシャトルを動かしたりしなければならなかった。それによって不完全さが増し、それがある意味で完璧だとデザイナーは考えている。
カディは現在でもブランドの基盤であり、ドリューはそれをポケットの生地としても使っている。
現代のファッションに欠けているのは人間味
人間味が大好きなドリューは、それが現代のファッションに欠けていると感じていた。デザイナーが言うところの人間味とは、切りっぱなしの裾、垂れ下がった縫い目、ブラインドステッチであり、着用者に着ている衣服のすべての要素が人間によって生み出されたことを思い出させるための、作品の重要な部分である。
アイレイの作品は、同じシルエットでも1つひとつ異なり、それが手織り・手縫いの特徴だ。デザイナーは世界で可能な限り最高の生地を見つけているが、それでもロサンゼルスですべての服を作り、クラフトマンシップと手作業に重きを置いている。
「私自身のオートクチュールのようなものを作りたいという思いを抱えています。ここで起こっていることについて違う考え方をさせるような、LA発のものを作りたいのです」とドリューは『Highsnobiety』で語っている。
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