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ディグ・モードvol.52「コペルニ(COPERNI)」

コペルニ(COPERNI)は、2013年にアルノー・ヴァイアン(Arnaud Vaillant)とセバスチャン・メイヤー(Sébastien Meyer)が設立したフランスのファッションブランド。「テクノシック」と表する美学のもと、彼らはミニマリズムと建築的なカッティングを共通テーマとしながら、科学的イノベーションを通じて「セクシー」を再考している。


クレージュで働くためブランドを一時保留

2022年秋冬コレクション バックステージ(Courtesy of COPERNI)

アルノーとセバスチャンがファッションの世界に入った背景は、それぞれ異なっている。アルノーは中学1年生のときにフランス版『VOGUE』を購読していて、自然とファッションに導かれたと説明する。一方、セバスチャンは軍人の家庭で育ち、軍事学校に通っていたが、もともとデザインに興味があったため、ファッションの仕事をする目的でパリに移った。

2009年、ふたりは同級生として知り合った。当時アルノーはファッション ビジネスを学び、セバスチャンはファッション デザインを専攻していた。2013年、彼らはコペルニ ファム(COPERNI FEMME)という名前で最初のラインを立ち上げ、発表したコレクションはすぐにヒット。設立からわずか2シーズン後、2015年にLVMHプライズのファイナリストに選ばれた。

2022年春夏コレクション バックステージ(Photography by Elodie Chapuis)

その後、2015年から2017年にかけて、アルノーとセバスチャンはクレージュ(COURRÈGES)の共同クリエイティブ ディレクターを務め、コペルニ ファムを保留にした。「クレージュで働くことは私たちの夢でした」とアルノーは『W Magazine』で語っている。2019年、彼らはクレージュを去り、コペルニは復活した。

ふたりのコペルニにおける役割分担は明確で、セバスチャンがデザイン、アルノーがマネジメントを担当している。彼らにとって大切なのは、どちらも同じほど大事であるということだ。セバスチャンはクリエイティブ デザイナーであることから中心に立つこともできるが、ビジネスの側面がデザインと同じほど重要である事実を強調したいという想いを持っている。

スプレー ドレスで注目を集める

2023年春夏コレクションのショーを締めくくったベラ・ハディッド(Photography by Salvatore Dragone / Getty Images)

コペルニは、ルネッサンス時代の天文学者ニコラウス・コペルニクス(Nicolaus ­Copernicus)にちなんで名付けられており、科学や進歩、イノベーション、テクノロジーにインスパイアされている点が特徴だ。彼らは科学のイノベーションを通じて、ファッションの境界を押し広げようとしている。

2023年春夏コレクションでは、ショーの最後にベラ・ハディッド(Bella Hadid)が下着姿で登場し、液体をスプレーされて少しずつ実際のドレスになったことが話題を呼んだ。これは空気に触れると固まって着用可能なテキスタイルになる特許素材のファブリカン(Fabrican)で、2009年にファブリカンの創設者マネル・トーレス(Manel Torres氏)によって開発された。

ふたりはファブリカンを使用して衣料品を生産し、収益化するつもりはないが、この演出は若い消費者のブランドに対する関心を高めたと説明している。「私たちはこれでお金を稼ぐつもりはありませんが、それは美しい瞬間であり、感情を生み出す体験です」とセバスチャンは『Hortenzia』で語っている。

ミニマリズムと建築的なカッティングがテーマ

2022年秋冬コレクション(Courtesy of COPERNI)

ブランド設立当初から大切にされていることは、服の着用性だ。ふたりは着用者にパワフルで美しいと感じてもらいたいが、衣装を着ているようには感じてほしくないのだ。彼らのデザイン スタイルについて、セバスチャンはミニマリズムと建築的なカッティングという共通のテーマがあり、ファッションでいう建築は構造や素材を活かすことだと説明する。

アルノーは、デザイン スタイルを「シンプル、ミニマリスト、シック」と定義し、「エレガンス、仕立て、美しいカッティング、刺繍が大好きです。コペルニは、そのミックスです」と英国版『ELLE』で語っている。

彼らがインスパイアされるファッション デザイナーとして、アルノーはニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiére)とジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)、セバスチャンはフィービー・ファイロ(Pheobe Philo)を挙げている。

モダンな方法でセクシーを再考

2022年アルノーとセバスチャンは、ふたりの披露宴を開催した(Photography by Les Anagnou)

コペルニは、セクシーを現代的に再考することにも力を入れている。パリジェンヌの典型的アイコンに、イネス・ド・ラ・フレサンジュ(Ines De La Fressange)やジャンヌ・ダマス(Jeanne Damas)がいる一方、アルノーがいつも考えているのはパリ拠点のスタイリスト、ヘレナ・テヘドール(Helena Tejedor)のことだ。

「彼女はセクシーで自信に満ちた方法で服を着ているので、彼女をとても崇拝しています」とアルノーは『The Zoe Report』で語っている。アルノーは、パリジェンヌのステレオタイプであるダークジーンズとバスケットのスタイルも好む一方で、ブランドを通してより未来的なセクシーさを備えたコペルニ ウーマンを生み出しているのだ。

この記事は、フリーランスで翻訳や海外アパレルブランドの日本向けPRをしている𝐡𝐢𝐫𝐨𝐤𝐨が、自身のファッション業界に対する見識を広める目的で書いたものです。

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