見出し画像

ディグ・モードvol.86「ガブリエレ コランジェロ(GABRIELE COLANGELO)」

ガブリエレ コランジェロ(GABRIELE COLANGELO)は、ミラノ出身デザイナーのガブリエレ・コランジェロ(Gabriele Colangelo)が設立したファッションブランド。「Who’s on Next?」で優勝経験を持つ彼は、高校から大学にかけて学んでいたラテン語やギリシャ語への情熱をデザインアプローチに活かして、長期間にわたって着続けられる高品質の服作りを信条としている。


古典からファッションにキャリア変更

2023年春夏コレクション(Courtesy of GABRIELE COLANGELO)

毛皮の製造会社コランジェロ ミラノ(Colangelo Milano)の設立者を父に持つガブリエレは、 クラフトマンシップが重んじられる環境で育ち、幼いころからファッションに惹かれていた。11歳のとき、初めて購入したイタリア版『VOGUE』の表紙に衝撃を覚えた彼は、両親に誕生日プレゼントとして定期購読を頼んで以来、ファッションの知識を吸収し始めた。

ときどき父の会社に行っては絵を描いていたが、最初ラテン語とギリシャ語の教師を目指しており、彼にとってデザインは単なる趣味だった。高校でラテン語とギリシャ語を勉強し、大学では古典言語と古典文学を学んだが、彼のファッションに対する憧れは在学中に強くなっていった。

これまでファッションの勉強をしたことがなかったが、昔から絵を描くスキルが高かったガブリエレは、1998年にイタリアのファッション国立商工会議所(Camera Nazionale della Moda Italiana)が主催するコンテストに思い切って参加したところ、優勝。ファッションの専門学校で1年間授業を受ける資格とインターンシップが提供され、そこから彼のキャリアが始まった。

ヴェルサーチェで経験を培う

(Photography via DAZED

ヴェルサーチェ ジーンズ クチュール(VERSACE JEANS COUTURE)でインターンをおこない、そこをとても気に入ったガブリエレは、結果的に4年半働いた。インターンを通じて、製品が初期段階から最終的な発売に至るまでどのように作られるのかを学んだ後、彼はミラノのヴェルサーチェで働き、ヴェルサーチェ クラシック ラインに注力した。

その後、しばらくの間はロベルト カヴァリ(ROBERTO CAVALLI)で働いていたが、マリエラ ブラーニ ファッション グループ(MARIELLA BURANI FASHION GROUP)から声をかけられて、ガブリエレはアミュレティ(AMULETI)J ラインのアーティスティック ディレクターを務めた。

これらすべての経験を経て、独自のプロジェクトを開発する時期が来たと判断した彼は、2007年、家族へのオマージュとして主に毛皮にインスピレーションを得た作品と、刺繍を施した作品を含むカプセルコレクションに取り組み始めた。そして2008年1月に刺繍サンプル制作のためインドに行き、その翌月に最初のコレクションを発表した。

「Who’s on Next?」で優勝

2022年秋冬コレクション(Courtesy of GABRIELE COLANGELO)

デビューコレクションを作成した背景には、ガブリエレの家族や友人とのストーリーがある。彼はスケッチを20枚用意し、10枚を父に渡した。父はコレクションのために毛皮と革の部分を制作した。その後、彼はディオール(DIOR)などの刺繍を手がけている友人を訪ねるためにインドへ行き、 約2週間かけて彼女の会社で服、刺繍、新しい素材を準備した。

インドからイタリアに戻って製造をおこない、ガブリエレはファッションウィークの公式スケジュール初日にコレクションを発表した。そのプレゼンテーションを見たイタリア版『VOGUE』のフランカ・ソッツァーニ(Franca Sozzani)から、「Who’s on Next?」コンテストに参加するよう依頼を受けた。それは7月に開催され、彼はプレタポルテ部門で優勝を果たした。

古典への情熱をデザインアプローチに反映

2021年プレフォール コレクション(Courtesy of GABRIELE COLANGELO)

ラテン語やギリシャ語、古典に対するガブリエレの情熱は、デザインへの文献学的アプローチに反映されている。コレクションに取り組むとき、デザイナーはその背後に正確な文化的リファレンスが存在するように世界を構築する。コレクションに含めるものを選ぶ際に役立つテーマを調べ、それが生地、色、モチーフのフィルターとなっている。

「ラテン語やギリシャ語を勉強したことがあれば、言葉の語源を捉えており、その言葉が語源的に何を意味するかが分かります。これは私のコレクションについても同じで、基本的な構造から細部に至るまでそれぞれの作品について完全な知識を持つように努めています」とガブリエレは『DAZED』で語っている。

ずっと着続けられる高品質な服作り

2023年春夏コレクション(Courtesy of GABRIELE COLANGELO)

パンデミックで隔離された際、ガブリエレはコレクションのデザインに多くの時間を費やしたと振り返っている。デザインは彼にとって逃避であり、コレクションに取り組むことは美しい夢のようだった。そして、それはデザイナーに真のモチベーションを与えた。

ガブリエレの信条は、長い間ずっと着続けられる高品質な服作りだ。「人々が望む限り、時代を超えて長く使い続けられるものを作りたいと思っています。それにはコンセプト、生地、製造の品質が必要なので、コレクションを構築するすべてのステップをより厳密にチェックするようになりました」と彼は『The Impression』のインタビューで語っている。

ガブリエレ・コランジェロ(Photography by Tassili Calatroni)

デザイナーの願いは、人々に細部を見てもらうことだ。ショーで作品を見せる場合、持ち時間の7~8分ではすべてがあっという間に過ぎてしまう。服の美しさだけでなく、生地の作成やコンセプトの企画、完璧な縫製の仕上げにどれだけの時間を費やしたか、それらすべてがガブリエレの作品における真の美しさであるが、それを理解してもらうにはショーでは短すぎるのだ。

また、ブランドのスケジュールを考えてみると、プレコレクション、次にショーコレクション、そしてその間に多数のカプセルコレクションをおこない、ノンストップで制作している。「パンデミックが私たち全員に少し立ち止まって、もっと考えるきっかけになることを願っています」と彼は『The Impression』のインタビューで語っている。

この記事は、フリーランスで翻訳や海外アパレルブランドの日本向けPRをしている𝐡𝐢𝐫𝐨𝐤𝐨が、自身のファッション業界に対する見識を広める目的で書いたものです。

いつも読んでくださってありがとうございます☺︎いただいたサポートは、記事のクオリティ向上に活用させていただきます。応援よろしくお願いします❦