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ディグ・モードvol.2「イー アール エル(ERL)」

イー アール エル(ERL)は、2018年にイーライ・ラッセル・リネッツ(Eli Russell Linnetz)が立ち上げた、ロサンゼルス拠点のユニセックス ブランド。鮮やかな色使いや、ポップなモチーフが特徴。2022年、リネッツはディオール スプリング 2023 メンズ カプセル コレクションのゲストデザイナーに迎えられ、さらなる注目を集めている。


DSMのCEOとの友情からERL誕生

ディオール スプリング 2023 メンズ カプセルコレクション バックステージ (Photography by MARK GRIFFIN CHAMPION)

1990年、リネッツは米国カリフォルニア州のベニスビーチで⽣まれた。15歳のとき、アメリカ演劇界を代表する劇作家のひとり、デヴィッド・マメット(David Mamet)のアシスタントとして、ブロードウェイで働いた経験を持つ。その後、南カリフォルニア大学で脚本を学び、卒業後に経済的な理由から大学のオペラ衣装を手掛けた際に裁縫のテクニックを習得した。

イー アール エル誕生の背景には、ドーバーストリートマーケット(Dover Street Market以下、DSM)のCEOエイドリアン・ジョフィ(Adrian Joffee)の存在がある。リネッツがコム デ ギャルソン(Comme des Garçons)でグラフィックデザインの仕事をした後、ジョフィは彼にアパレル ラインのデザインを依頼した。

当初、それはドーバーストリートマーケット ロサンゼルスの開店のためだった。しかし、彼らのコラボレーションは友情につながり、リネッツのイニシャルから取ったブランド、イー アール エルの設立まで発展した。

友情きっかけでコラボが生まれる

ERLはキッズ ラインも展開(パリの3537で撮影 / Photography by 𝐡𝐢𝐫𝐨𝐤𝐨)

デザイナーであり、クリエイティブディレクターであり、フォトグラファーとしても活躍するリネッツ。彼にとって小売業者やブランド、アーティストとのコラボは、友情をきっかけに生まれるものだ。

彼はコラボレーションについて、「すべて非常的に個人的なものです。時にはディオールのように有機的な機会があったり、エイサップ・ロッキーやジャスティン・ビーバーと仕事をしたりする場合(どちらも友情から生まれました)、それは自然に感じられるものでなければなりません」と『JING DAILY』のインタビューで語っている。

エイサップ・ロッキーは2021年9月に開催されたメットガラで、リネッツの手がけたカラフルなキルトのケープとシルク タフタのタキシードを着用した。それが話題となり、ブランドへの注目が高まった。

ロッキーとの友情でメットガラに

2022年秋冬コレクション(Courtesy of ERL)

リネッツとエイサップ・ロッキーの出会いは、スタイリストのマシュー・ヘンソン(Matthew Henson)の紹介だ。彼らは、ベニスビーチにあるリネッツのアトリエで数時間、ただ座ってアメリカでの生活について話し合った。

その後、リネッツはメットガラの衣装を作りたいとロッキーに伝え、すぐにスケッチをスタート。リネッツの美学やコレクションを気に入っていたロッキーにとって、コラボは当然の選択であった。

メットガラでERLを着用したエイサップ・ロッキー(Photography by Mike Coppola/Getty Images)

リネッツがロッキーに用意した衣装は、シルク タフタのタキシードと、パッチワークのキルトでできたケープ。リネッツは古着屋でアンティークのキルトを見つけ、それを衣装のベースとして使用することにした。そして、父のバスローブからボクサーパンツまで、自分にとって重要なものをキルティングし、家族の名前をキルト全体に刺繍した。

メットガラに参加したゲストのほとんどが黒色の衣装で着飾ったなか、ロッキーのルックは遊び心を感じさせるものだった。ロッキーはリネッツのデザインについて、デザインに楽しくユニークな面をもたらし、作品がアメリカのファッションを表していると評価している。

ファッションデザイナーとして止まらぬ躍進

イーライ・ラッセル・リネッツ(Photography by François Goize)

2022年、リネッツはディオール スプリング 2023 メンズ カプセル コレクションのゲストデザイナーとして起用された。さらに、若手デザイナーを支援・育成を目的としたLVMHプライズ 2022のカール・ラガーフェルド賞を受賞。彼はファッションデザイナーとしての地位を確立し続けている。

この記事は、フリーランスで翻訳や海外アパレルブランドの日本向けPRをしている𝐡𝐢𝐫𝐨𝐤𝐨が、自身のファッション業界に対する見識を広める目的で書いたものです。

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