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ディグ・モードvol.58「クシコック(KUSIKOHC)」

クシコック(KUSIKOHC)は韓国のアーティスト、チョ・ギソク(Cho Gi-seok)のクリエイティブな活動のひとつであり、彼が純粋に自分のやりたいことをするために設立したアパレルとアクセサリーを展開するブランド。それは彼が外の世界で感じていたフラストレーションやプレッシャーへの反発であり、彼の高い理想が創造性を駆り立てている。


自分の手で何かをするのが好き

2023年秋冬コレクション(Courtesy of KUSIKOHC)

韓国で生まれ育ったギソクは、写真やグラフィック デザイン、セット デザイン、アート ディレクション、ビデオなど幅広く活躍しているアーティストだ。自身のブランドを始めた理由のひとつには、仕事の範囲を広げていることがある。

彼はもともと絵が得意で美術の成績も良かったため、大学はビジュアル コミュニケーションの専攻を受験した。本当は絵を描きたかったものの、収入面を考えてグラフィックデザインを学んだ。最初はパブロ・ピカソやアンディ・ウォーホルのような有名アーティストしか知らなかったギソクは、大学に入ってからさまざまな種類のイメージと出会った。

その後、アート ディレクターになりたいと思った彼は、セット デザインが役立つと考えたが、作品の捉えられ方が気に入らなかったため、今度は写真にのめり込んだ。そしてボディ ペインティングの個人的なプロジェクトをおこない、その記録用に写真を撮り始めた。写真は誰かに習ったわけではなく、YouTubeやGoogleでやり方を検索して試行錯誤した。

(Courtesy of KUSIKOHC)

ギソクが本格的に写真を撮り始めたのは、クシコックを設立した2015〜2016年頃のルックブックだ。彼にとってクシコックで表現できるものは、写真で表現するものとは異なっているとギソクは説明する。

「写真やグラフィックは2次元ですが、服を所有し、着用することは、より直接的で普遍的です。たとえば音楽の場合、それが何であるかを知るには、イヤフォンを差し込んで耳で聴く必要があります。衣服は、最も直接的な表現スタイルのように感じます」と彼は『SSENSE』のインタビューで語っている。

フラストレーションをブランドに投影

2022年春夏コレクション(Courtesy of KUSIKOHC)

26〜27歳くらいの頃、ギソクは社会に不満を持っており、いつも世界に反抗したいと思っていた。不満の対象は、身の回りにある既存のファッションブランドだった。それらは彼が働き始めた20歳のときから年月の経過とともにますます商業的なものになり、ブランドがかつての姿から離れていくのが嫌だったと彼は説明する。

ギソクはコム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)、リック オウエンス(RICK OWENS)、アレキサンダー マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)などのブランドに憧れて育った。彼にとってそれらはショーマンシップがあり、クチュールのようで、とくにマックイーンが服を通して物事を表現する方法を彼は好んでいる。

いつも理想が高く、簡単には満足しないギソクは、まだ自分の作品がやりたいレベルに達していないと感じている。彼が純粋に自分のやりたいことをするために始めたクシコックは、自身が外の世界で感じていたフラストレーションやプレッシャーへの反発であり、それがブランドの反抗心につながっている。

好きな仕事を一生続けることが究極の幸せ

(Courtesy of KUSIKOHC)

クシコックはスローガンとして「失敗する権利(Right to Fail)」を掲げている。そこには、たとえ失敗しても挑戦することや努力すること自体に少しでも何かを変える力があるというギソクの想いが込められている。

彼は写真プロジェクトの作業中に行き詰まったり、道に迷ったりするたびに、クシコックで楽しさやインスピレーションを探す。ギソクにとって、ビジュアルアートは視覚、ファッションデザインは触覚で創造するもので、それぞれの楽しさがあると彼は説明する。

彼の絶え間ない創造性を駆り立てるものは、自分の好きなことをしなかったときの劣等感だ。「好きな仕事を一生続けていくことが、私の究極の幸せです」とギソクは『i-D』のインタビューで語っている。彼は自身の高い理想に駆り立てられながら、やりたいことに挑み続けている。

この記事は、フリーランスで翻訳や海外アパレルブランドの日本向けPRをしている𝐡𝐢𝐫𝐨𝐤𝐨が、自身のファッション業界に対する見識を広める目的で書いたものです。

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