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ディグ・モードvol.33「パウラ カノヴァス デル ヴァス(PAULA CANOVAS DEL VAS)」

パウラ カノヴァス デル ヴァス(PAULA CANOVAS DEL VAS)は、2018年にスペイン出身のパウラ・カノヴァス・デル・ヴァス(Paula Canovas del Vas)が設立したロンドン拠点のファッション ブランド。彼女は研究に多くの時間を費やし、ときには自分自身を退屈させながら、クリエイティブな作品を制作している。


ファッションに関する全分野を吸収したいオタク

2021年春夏コレクション(Courtesy of PAULA CANOVAS DEL VAS)

パウラはアルゼンチン人の母とスペイン人の父のもとに生まれ、地中海に面したスペイン南東部の町、ムルシアで育った。彼女の母親はウエディング ドレスのアトリエを所有していて、彼女は子どもの頃からアトリエにいたが、映画、文学、建築に夢中だったため、ファッションを将来のキャリアとは考えていなかった。

しかし、母親にセントラル セント マーチンズ(Central Saint Martins以下、CSM)に連れられたことをきっかけに気が変わり、CSMに入学した彼女は学士号だけでなく修士号も取得した。グッチ(GUCCI)でインターンとしてコスチューム デザイナーのアシスタントやパターン カッターをしている間、日本への研究旅行を勝ち取ったことは彼女にとって修士課程のハイライトだ。

彼女は日本で3週間ほど過ごし、絞りの講習を受けたり、沖縄に吹きガラスをしに行ったりするなど、あらゆる種類の工芸技術を研究した。「私は学習や研究に情熱を持っています。ビジュアル アートやファッションに関する、あらゆる分野を可能な限り吸収したいです。そういう意味で、ある種のオタクです」とパウラは『i-D』で語っている。

研究がブランドの基礎を構築

2022年春夏コレクション(Photography by Joyce NG)

パウラを導き続けているのは、学びたい、新しいことに挑戦したいという欲求だ。ブランドは設立当初から研究と密接に関係してきており、そのアイデアは、彼女がステラ マッカートニーの奨学金のおかげで取得できたCSMの修士課程で生まれたものだ。1年半の時間をかけて専念した研究は、ブランドの基礎となっている。

ブランド チームは、読書や映画鑑賞など研究全般に、多くの時間を費やしている。その作業を無駄にしないために、ブランドはキャットウォークをおこなっていない。「私たちは5分間のキャットウォークで6か月以上かかる作業をすべて捨てることはしたくありません。ばかげています」とデザイナーは『1 GRANARY』で語っている。

パンデミックの間、ブランド チームはファッション業界におけるプロセスと製品の関係をリサーチした。その関係を強調し、製品の背後にある作業や時間、テクニックを消費者に説明することが作り手の義務であると感じたことから、パウラはビジュアル コラージュのような本を作成した。

退屈から多くの良いことが生まれる

パウラ・カノヴァス・デル・ヴァス(Photography by Jonathan Middleton)

デザイナーのルーチンは図書館に行ったり、父に電話して音楽や本について話したりすることで、それがアイデアを見出す糸口になっている。今もなお役立っている修士課程でファイリングした資料のほかに、退屈することも彼女にとって重要だ。

パンデミックの間、彼女は読書をする時間ができて、クリエイターやデザイナー、家族と連絡を取り合うようになった。友人のひとりから「退屈することは創造者にとって大切」と言われた彼女は、退屈から多くの良いことが生まれるため、時々自分自身を退屈させようとしている。「退屈に興奮しています」とパウラは『SSENSE』で語っている。

この記事は、フリーランスで翻訳や海外アパレルブランドの日本向けPRをしている𝐡𝐢𝐫𝐨𝐤𝐨が、自身のファッション業界に対する見識を広める目的で書いたものです。

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