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ディグ・モードvol.95「ナマチェコ(NAMACHEKO)」

ナマチェコ(NAMACHEKO)は、2017年にディラン・ルー(Dilan Lurr)が妹のレザン(Lezan)と設立したベルギー拠点のユニセックス ブランド。ふたりとも土木工学を勉強し、独学でファッションデザイナーになった。ディランはコレクションごとに自己批判をしながら、美的センスやビジネスセンスを絶えず磨き続け、ブランドを前進させている。


土木工学の学びが活きたブランド運営

2019年秋冬コレクション(Courtesy of NAMACHEKO)

中東北部のクルディスタンで生まれ、1997年に両親とともにストックホルムに移住したルー兄妹は、デザイナーになる前は土木工学を学んでいた。その後、ディランは美術の学位を取得した。もしファッションの世界で働いていなかった場合、「おそらく、建物の構造を計算する土木技師になるでしょう」と彼は『TAGWALK』で語っている。

ファッション以外の経歴は、ブランド運営のさまざまな面で役立っているようだ。「エンジニアリングはむしろ問題解決を目的としており、数学的な計算です。妹の場合は計算、演出、タイミングを扱うという点で、より顕著かもしれません。私の場合、問題解決がとても得意で、ストレスを感じにくいのです」とディランは『10 Magazine』で語っている。

彼らにとって兄妹でブランドを運営する良い点は、お互いに正直になり、フラストレーションをぶつけ合うことができるところだ。ディランは兄妹の要素が成功の鍵であることを認識しており、信頼が非常に重要だと考えている。

ブランドの起点は個人的なアート プロジェクト

2023年秋冬コレクション(Courtesy of NAMACHEKO)

2017年1月、ディランはレザンと一緒に、ファッションと写真の中間にあるプライベートなアート プロジェクトを始動した。ふたりは独学でファッションを勉強し、アート ビデオ・写真プロジェクト用に、伝統的なクルド人の結婚式にインスピレーションを得た衣装を作成した。その目的は、イラクの伝統を別の方法で示すことだった。

ディランにとっては予想外だったが、その衣装はパリのセレクトショップ、ザ・ブロークン・アーム(The Broken Arm)によってすぐに買い付けられた。そうして立ち上がったナマチェコについて、ブランド名の由来はそれ以外に意味がなく、自分たちでそこに意味を与える自由があるからだと彼は説明している。

美的センスもビジネスセンスも磨き続ける

2018年春夏コレクション(Courtesy of NAMACHEKO)

2018年春夏シーズンから、ナマチェコはパリでコレクションを発表している。多文化的な背景に関して、「私は国籍にそこまで力を入れていないと思うので、スウェーデンの小さな町の出身で、ベルギーの小さな町で働いていますが、そういう意味ではパリで自分の作品を発表するのに十分な自由と権限を与えられていると感じています」と彼は『TAGWALK』で語っている。

最初のコレクションからわずか18か月あまりで、ナマチェコはロンドンのドーバー ストリート マーケット(Dover Street Market以下、DSM)やマシーンA(Machine-A)、東京のグレイト(GR8)など、ヨーロッパ、北アメリカ、アジアに34の販売店を持つほど成長している。

ディラン・ルーとレザン・ルー(Courtesy of NAMACHEKO)

「子どものころサッカーをしていたため、とても負けず嫌いで、なかなか満足できないんです」と『10 Magazine』で語っているように、ディランは各コレクションを振り返るたび自己批判する。彼はビジネスの成功を高く評価しているが、自身の作品についてとくに賞賛はしていない。彼は美的センスもビジネスセンスも絶えず磨いており、それが成功へと導いているのだろう。

この記事は、フリーランスでライターと海外アパレルブランドの日本向けPRをしている𝐡𝐢𝐫𝐨𝐤𝐨が、自身のファッション業界に対する見識を広める目的で書いたものです。

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