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ディグ・モードvol.70「テベ マググ(THEBE MAGUGU)」

テベ マググ(THEBE MAGUGU)は、2018年にアフリカ人デザイナーのテベ・マググ(Thebe Magugu)が設立したブランド。生まれ育った南アフリカの文化的、社会的、政治的パラダイムの探求が彼の美学であり、植民地化の構造外でアフリカの歴史を語り直し、地元の職人との協働によって職人技の誇りを取り戻そうとしている。


故郷の文化的、社会的、政治的パラダイムを探求

(Photography by Aart Verrips)

南アフリカの真ん中にある小さな鉱山の町、キンバリーで生まれたマググは、母親がお金に余裕があるときはいつでも、ケーブル テレビや雑誌『エル(ELLE)』を入手するなどしてファッションに親しみながら育った。彼はロンドンのセントラル セント マーチンズで勉強したかったが叶わなかったため、ヨハネスブルグのファッション スクールであるリソフに進学した。

そこでファッション デザイン、写真、メディアを学んだマググは、自分が生まれ育った地域や文化と交流できたため、ロンドンには行けなかったものの満足いく結果となったと振り返っている。そして、それは彼のブランド設立に影響を与え、自分たちの遺産や歴史の物語を忘れられないように適切な方法で伝えようとする姿勢につながった。

2017年春夏コレクション(Courtesy of THEBE MAGUGU)

故郷の文化的、社会的、政治的パラダイムの探求は、マググの美学であり、ブランドを通じて、自身が関与する問題を前面に押し出している。2017年に発表された彼のデビュー コレクションは、都会の生活で発生する騒音やプレッシャーから隔離され、子どもの頃のゲームを追体験することで、アウトドアへの逃避を探求した。

2018年に発表されたコレクションでは、女性が南アフリカで野放しとなっている性差別やミソジニーをナビゲートする方法と、同国の驚くほど高い女性殺害率についての解説がテーマとなった。その翌年に発表された2020年春夏コレクションでは、南アフリカのアパルトヘイトの過去と、それに反対して戦った革命家たちが掘り下げられた。

アフリカ人デザイナーとして初めてLVMHプライズを受賞

2020年秋冬コレクション(Courtesy of THEBE MAGUGU)

2019年、LVMHプライズを受賞した初のアフリカ人デザイナーとなったマググは、ヨハネスブルグで繁栄するブランドとクリエイティブ コミュニティを構築している。2020年のパリ ファッション ウィークでデビュー プレゼンテーションをおこない、ニューヨークのメトロポリタン美術館のコスチューム・インスティテュートで彼のデザインのひとつを展示した。

そして2021年、イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)やカール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)などのデザイナーを表彰してきた歴史的なファッション コンテスト、インターナショナル ウールマーク プライズ(International Woolmark Prize)のファイナリストに選出された。

アフリカの物語を語り直し、書き直す

2021年秋冬コレクション(Courtesy of THEBE MAGUGU)

マググはブランドで、植民地化の構造外でアフリカの経験を語り直し、祖先に関連するイメージやモチーフを採用している。2021年秋冬シーズンに発表されたアルケミー コレクションの、バソト族の文化的定番であるブランケットや、スカリフィケーションを模倣した背中の表面が盛り上がったブレザーなど、ブランドは文化的および政治的な反響をもたらし続けている。

非常に多くのアフリカ諸国には、それぞれの入植者によって抑圧されてきた過去と現在の現実があると説明するデザイナーは、「私たち自身の物語を語り直し、書き直しましょう」と『AnOther Magazine』で語っている。

地元の職人と協力してコレクションを制作

テベ・マググ(Courtesy of Guy Bell/REX/Shutterstock/SIPA)

南アフリカの職人技の誇りを取り戻すことも、マググが大切にしていることのひとつだ。彼はいつも主に南アフリカの職人やコラボレーターと作業している。デザイナーは、彼らや彼らの仕事から多くのインスピレーションを得ている。

「それは、私がインスピレーションを得たものに恩返しをする、ある意味で報酬を与える私なりの方法です」と彼は『METAL Magazine』のインタビューで語っている。

この記事は、フリーランスで翻訳や海外アパレルブランドの日本向けPRをしている𝐡𝐢𝐫𝐨𝐤𝐨が、自身のファッション業界に対する見識を広める目的で書いたものです。

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