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ディグ・モードvol.56「ヴァインサント(WEINSANTO)」

ヴァインサント(WEINSANTO)は、2020年にヴィクトール・ヴァインサント(Victor Weinsanto)が設立したクチュールとプレタポルテのブランド。ドーバー ストリート マーケット パリの傘下にあり、2022年LVMHプライズにノミネートされた。デザイナーはファッションの精神を変えることを目標のひとつに掲げ、現実とバーチャルで作品を通じて創造性を刺激している。


クラシック バレエからファッションの道に

2023年春夏コレクション(Courtesy of WEINSANTO)

フランスのストラスブールで生まれたヴィクトールは、4歳から17歳までバレエを習い、その間は南フランスとドイツの寄宿学校に住んでいた。幼いころは将来ファッション業界にいるとは想像もしていなかったが、彼はバレエの舞台を通して、ファッションに目を向けるようになった。

その後、ヴィクトールはファッション デザイナーを目指すようになり、パリの服飾学校アトリエ・シャルドン・サヴァール(Atelier Chardon Savard)に進学。ファッションを学びながら、商業的な部分だけを考える必要はないこと、そして純粋に洋服を楽しむ喜びを見つけた。彼はクチュールや有名なデザイナーから常にインスピレーションを受けてきたと説明する。

クロエ(CHLOÉ)とワイ プロジェクト(Y/PROJECT)でのインターンシップを経た2018年、ヴィクトールはジャン ポール ゴルチエ(JEAN PAUL GAULTIER)で働くことを目指した。何度も履歴書を送ったが、すべて失敗。しかし、フランスのアーティスト、ピエール・エ・ジル(Pierre et Gilles)によって、彼はゴルチエ氏と対面する機会を得ることができた。

ただ楽しむ精神こそファッションで愛するもの

2021年春夏コレクション(Courtesy of WEINSANTO)

ヴィクトールはゴルチエ氏と一緒に写真を撮った流れで、働かせてほしいと頼んだところ、成功した。彼はデザイナーとしてだけでなく人柄の面でもゴルチエ氏を尊敬しており、彼のもとで働くことはデザイナーとして最高なことだった。ヴィクトールが好んでいるのは、限界や商業的な側面についてはあまり考えず、より芸術的な方法で自由に製作するゴルチエ氏の熱意だ。

「彼は服でゲームをしているような感覚です。突き詰めて考え過ぎず、クリエイティブな方法でただ楽しむ精神こそ、私がファッションで愛するものです」とヴィクトールは『W Magazine』のインタビューで語っている。2020年3月、彼はファースト コレクションを発表した。プレゼンテーションの最前列には、彼の母親の隣に座るゴルチエ氏の姿があった。

ドーバー ストリート マーケット パリの傘下となる

2023年秋冬コレクション(Courtesy of Imaxtree)

同プレゼンテーションには、コム デ ギャルソンとドーバー ストリート マーケットのCEOであるエイドリアン・ジョフィ(Adrian Joffe)も出席していた。ヴィクトールのショーを面白いと感じたエイドリアンは、彼にドーバー ストリート マーケット パリのショールームへの参加を提案した。それがきっかけで、両者の間にはパートナーシップが結ばれた。

自身のスタイルを「レトロフューチャリスティック」と表現するヴィクトールは、ライブ エンターテイメントや建築、アート全般から多くの刺激を受けている。パリのベルヴィル地区にある小さなアトリエには、ニナ・ハーゲン(Nina Hagen)のアルバム、リアーナが表紙を飾る雑誌、ミシン、デニムの帽子やハンドバッグなど、カラフルでグルーヴィーなものが詰まっている。

優しさと創造性を促進していく

ヴィクトール・ヴァインサント(Photography by Maxwell Aurelien James)

ヴィクトールには大きな目標がある。それは、ファッションの精神を変えることだ。「ヴァインサントは、優しさと創造性を促進すると思います」とデザイナーは『W Magazine』で語っている。ゴルチエ氏のもとで得た学びを活かして、彼は制限なく自由に創造し楽しさやユーモアをもたらしている。2022年、ヴァインサントはLVMHプライズにノミネートされた。

同年、ヴィクトールはK-POPガールズ グループのライトサム(Lightsum)とコラボし、8つのバーチャル衣装をデザインした。「何が可能か不可能かを考えずに、メタバースでデザインするのは本当に楽しかったです」とデザイナーは『AnOther Magazine』で語っている。現実であろうと仮想世界であろうと、彼は作品を通じて世界に刺激を与え続けている。

この記事は、フリーランスで翻訳や海外アパレルブランドの日本向けPRをしている𝐡𝐢𝐫𝐨𝐤𝐨が、自身のファッション業界に対する見識を広める目的で書いたものです。

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