ディグ・モードvol.68「パトゥ(PATOU)」
パトゥ(PATOU)は、1914年にフランス人デザイナーのジャン・パトゥ(Jean Patou)によって設立されたパリ拠点のブランド。2018年にLVMHグループの傘下に入り、ギョーム・アンリ(Guillaume Henry)がクリエイティブディレクターを務めている。ギョームは楽しくモダンなシルエットで、パトゥの活気を取り戻している。
著名なデザイナーが引き継いできたPATOU
1914年、自身の名を冠したブランドを設立したジャン・パトゥは、コルセットのないドレスや丈を短くしたスカート、街中で着るためのスポーツ ラインを販売し、とくにテニススカートを普及させたことで知られている。ブランドは1987年以来休止状態にあったが、ジョイ(Joy)をはじめとする独自の香水や他ブランドの香水製造と販売を続けていた。
1936年、デザイナーが55歳で早世し、ブランドは妹のマドレーヌ(Madeleine)とその夫レイモンド バルバス(Raymond Barbas)によって引き継がれた。
1954年にディオール(DIOR)のデザイナーだったマーク・ボハン(Marc Bohan)が加わった後、カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)、ジャン・ポール・ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)、クリスチャン・ラクロワ(Christian Lacroix)など著名なデザイナーによってメゾンは引き継がれてきた。
1987年、ラクロアが自分のブランドを設立するために去り、それが休止前の最後のコレクションとなった。その後2018年、ジャン パトゥはLVMHグループに買収され、クリエイティブ ディレクターには、カルヴェン(CARVEN)とニナ リッチ(NINA RICCI)の両方を復活させたギョーム・アンリが任命された。その際、ブランド名は創設者名からパトゥ(PATOU)に変更された。
カルヴェンやニナ リッチを復活させた凄腕
ギョームは、フランスのシャンパーニュ地方にあるトロワの美術学校École Municipale des Beaux-Artsで学んだ後、パリのデュペレ応用芸術学校とアンスティチュ フランセ ドゥ ラ モードでファッションを学んだ。
その後、ジバンシィ(GIVENCHY)に入社し、ジュリアン・マクドナルド(Julien Macdonald)とリカルド・ティッシ(Riccardo Tisci)の下で、クリエイティブ ディレクターを務めた。ポール カ(PAULE KA)で3年間勤務した後、2009年にカルヴェンに入社。2014年までクリエイティブ ディレクターを務め、ブランドをプレタポルテに参入させたことで広く称賛された。
2015年、ギョームはニナ リッチに入社し、そこで再び新しい世代の顧客を獲得したことで評価された後、2018年の初めに退社。LVMHグループから任命を受け、パトゥのアーティスティック ディレクターを務めている。
環境への強い意識を持つ
当時オフィスもアーカイブもなかったため、ギョームが率いる合計3名のチームは、個人のコレクターが所有する作品や美術館を見に行って、パトゥについて学んだ。しかしある時、ギョームは1930年代のドレスを今作っても意味がないと思い、「忘れた方がいいと思う」と自身に語りかけた。
デザイナーは、パトゥのCEOであるソフィー・ブロカール(Sophie Brocart)と共に、何をすべきか慎重に時間をかけて戦略を練った。そのときギョームは過剰生産について考えた。その結果として、現在ブランドはコレクションの規模をそれほど大きくせず、環境への強い意識を持ち、トレーサビリティと透明性を促進している。
たとえばリサイクル素材やオーガニック素材を使用し、ハンガーは再生された木材と接着剤を使用。パッケージはプラスチックフリーだ。さらに、服にはQRコードが付いていて、服を作った人に会える仕組みとなっている。「私は『チーム』という考え方が好きです」とギョームは『THE WEEK』のインタビューで語っている。
チーム全員がコレクションに参加
ギョームはパトゥについて、非常に楽観的でポジティブなブランドであると説明する。あだ名みたいで人懐こく、人々が笑顔になるブランドだと彼は捉えている。パトゥを着る女性のイメージは、ギョームが通りで出会った人、会社の同僚、親友だ。ファッションが好きだけど、ファッションフリークではなく、ギョームが話したいと思う相手である。
デザイナーのクリエイティブ プロセスは、コレクションが終わると頭をオフにすることから始まる。次に、チームと意見を交換し、その瞬間の欲求やインスピレーションを共有する。メンバーそれぞれが次のシーズンへの希望を共有することで、チーム全員がコレクションの作成に参加できる点をギョームは気に入っている。
そして、考えすぎたり哲学的に考えたりする代わりに、デザイナーは自身の本能や感情を信頼している。「ファッション ブランドでは、シーズンと作業の段階、すべてが重なっています。そのため、色、形、素材、プリント、刺繍など、すべてを同時進行しています」とギョームは『i-D』のインタビューで語っている。
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