揺らゆら #2 | 小説
前の話
夏らしく清涼感のある、さわやかな音楽が街に流れている。行き交う人びとはアスファルトを鳴らし、足早に駅に向かって歩いていく。
街の景色を水色に彩る音の発信源は、道路脇に刺さっている電柱みたいに大きなスピーカーではなくて、わたしの両耳に挿した小さなワイヤレスイヤホンだった。他の人たちの耳には、おそらくわたしが知り得ない、別の音が届いている。街のBGMは、一人ひとりに与えられるのだ。
疲れているときは民族音楽を聴く。ケルトの笛、アイルランドのパイプ、軽快なフィドル。地球の