『音がきこえる』
真夏
おれはロックンロールで死んで
夜更けのブルースで再生した
明け方に届いたハウスが
もういちどあそこへ誘えば
ジェントルマンのジャズが
おれをやさしく抱きしめた
喪失と再生の 音がきこえる
真夏
おれは青空の下で白球を追いかけた
その放物線は素直な言葉のように正しかった
赤い縫い目が間近に迫ってくる
おれは見当違いの方向に手を伸ばした
白球がおれを横切り裏切り地面に叩きつけられた
太陽はギラリと光っていた
落胆と歓喜の 声がきこえる
真夏
おれは大勢の人に受け入れられていた
白い腕に抱かれていた
涙を流している女がいた
その女の手を握る男がいた
おれは意味もわからず力いっぱい泣いていた
おれは命そのものだった
完成された世界の 音がきこえる
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