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『Hermitage』言葉について

私には詩というものがわからない。
知ろうとも思わない。「詩とは言葉の束である」と誰かが言っていた。たしかに不思議なものだ。言葉には結束という作用がある。
彼が放つちいさな言葉があるとする。彼はそこにもうひとつのちいさな言葉を放つ。彼の言葉は手と手を繋ぐ。手を繋いだ言葉は強大である。その場の空気を一変させる。聞き手の「今」を変える。大袈裟ではなく、その世界を変えてしまう。耳から吸収された言葉という振動は、脳に、心に、胎に染み渡る。彼の放ったひとつの言葉という振動によって、人間が震えるということ。

ここに命というものがある。

命は絶えず震えている。
言葉は命に共鳴する。
命は言葉に作用する。
ちいさく。とてもちいさく。
それでいて限りなく永遠に。
命のような言葉がある。
われわれは人間として生まれた以上、その言葉を無視するわけにはいくまい。

私も日々言葉を紡いでいる。
ときおり詩のようなものができることがある。

私は詩を生きたい。



『Hermitage』

彼はいった
なんだか曇り空の下で吸う煙草は
うまいんだよなって

彼はいった
口の中まで湿り気を帯びるようで
うまいんだよなって

彼はいった
目の前の木の幸福そうな緑のおかげで
この身体まで清くなるようだって

彼はいった
あの木といっしょに
いつか燃やされるのかなって

彼の指が震えているのか
自分の体が震えているのか
僕にはわからなかった

煙草の煙は曇り空へ上っていって

やがて雲と溶け合って

煙だけが消えていった

『白日夢』Hermitagerimix
人は生に流されて
気づかぬうちに多くを失ってしまう
てのひらや ことばや そのかおを
失ったことに気づいて
取り戻したいと思うことさえも
いつか忘れてしまう

この手は誰の手なのか
この手は僕のものだろうか
ここに居るのは誰なのか
ここに居るのは僕だろうか

そのことに意味はあるのか
意味があるとは いったい何だろうか

僕は煙を見た
あの時確かに煙を見た
でもそれもいつか忘れてしまう
忘れたくないと願う気持ちと共に
空に消えていく
残る灰も風に散って
いつか誰にも見えなくなる

僕はそれがいい
この感情は今
間違いなく 僕のものだから

(※彼はいった
あの木といっしょに
いつか燃やされるのかなって

彼の指が震えているのか
自分の体が震えているのか
僕にはわからなかった

煙草の煙は曇り空へ上っていって

やがて雲と溶け合って

煙だけが消えていった)

こひ人よ
願はくは
この手があなたと共にあらんことを

こひ人よ
願はくは
この声があなたと共にあらんことを

こひ人よ
願はくは
それでも不在な僕を

※「Hermitage」から

『ボクハアルク〜HERMITAGE REMIX〜』
ボクハ アルク アルク
日之出前迄(ひのでまえまで)

ボクハ ハシル ハシル
夜更過迄(よふけすぎまで)

ボクハ ハコブ ハコブ
国道七七七(いっぽんみちつづく)

ボクハ アソブ アソブ
天国地獄(シーソーゲーム)

ボクハ トマラズ トドマラズ
息止(いきができない)

ボクハ ナカズ サワガズ
涙止(なみだよとまれ)

ボクハ ワラウ ワナナク
笑震(直面して生きろ)

ボクハ ハコブ ハコブ
街灯煌(ネオン)

ボクニモ ミエタ ミエテル
楽園(ツキヨ ウラガワ)

ボクハ カナデル カナエル
僕君夢(放て チラバレ くつがえせ)



ボクハ アルク 
修羅一人

『Hermitage live remix』
彼はいった
なんだか曇り空の下で吸う煙草は
うまいんだよなって

彼はいった
口の中まで湿り気を帯びるようで
うまいんだよなって

彼はいった
目の前の木の幸福そうな緑のおかげで
この身体まで清くなるようだって

彼はいった
あの木といっしょに
いつか燃やされるのかなって

彼はいった

人は生に流されて
気づかぬうちに多くを失ってしまう
てのひらや ことばや そのかおを
失ったことに気づいて
取り戻したいと思うことさえも
いつか忘れてしまう

この手は誰の手なのか
この手は僕のものだろうか
ここに居るのは誰なのか
ここに居るのはあなただろうか

そのことに意味はあるのか
意味があるとは いったい何だろうか

僕は煙を見た
あの時確かに煙を見た
でもそれもいつか忘れてしまう
忘れたくないと願う気持ちと共に
空に消えていく
残る灰も風に散って
いつか誰にも見えなくなる

僕はそれがいい
この感情は今
間違いなく 僕のものだから

彼はいった
この背中の羽で
いつか飛べるのかなって

彼はいった
煙草の煙といっしょに
飛べるのかなって

彼はいった
自分の内にちいさな赤い実がなって
震えるんだよなって

彼はいった
それがいつかはじけて
真っ赤にそまってしまいそうだって

彼はいった
曇り空の日に
いきたいんだよなって

彼はいった
晴れた日だけは
避けたいんだよなって

彼の指が震えているのか
自分の体が震えているのか
僕にはわからなかった

煙草の煙は曇り空へ上っていって

やがて雲と溶け合って

煙だけが消えていった

こひ人よ
願はくは
この手があなたと共にあらんことを

こひ人よ
願はくは
この声があなたと共にあらんことを

こひ人よ
願はくは
いつかおまえが
この手の内にあらんことを

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