見出し画像

車内 #20

4/2

日曜日。新幹線に揺られて新入社員研修の地、大阪に向かう。これから一ヶ月ホテル暮らしである。

四月も始まったばかりだというのに夏日になりそうだと朝のニュースで言っていた。ポカポカという形容詞がお似合いの陽気である。
もう桜も散り始めてしまった。昔よりも季節が早まっている気がするのは気の所為か。

地元の名古屋から新大阪までは一時間もかからない。揺られている時間は心地いいのでもう少し長くてもいいな、と思う。

新幹線の自由席は想像よりも空いている。
けれど、ガヤガヤしていて所々から外国語が聞こえてくる。そうか、もうコロナは終わったんだ。
前の席は海外から観光にきている雰囲気の三人家族で二歳くらいであろう男の子が大声で泣いている。あやす為に三輪車の様なおもちゃで通路を往復しているが、いいのだろうか?自由だなぁ。

海外に行っても思ったことだが、日本人はリュックサックで旅行をするという文化がない。外国からきた観光客は皆、60リットルほどの登山リュックを背負っている。
ベトナムに行った時もスーツケースを転がしているのは決まって日本人なのだ。
私は登山が趣味なのも相まってかリュックサックに愛着がある。ただ周りに合わせてスーツケースで旅行に出掛けることが多いと気がついた。
これからは二泊ほどの旅行はリュックサックで行ってみよう。

そんなことを考えているうちにあっという間に新大阪に着いてしまう。
実家を離れたのがついさっきなのにもう戻れない大変遠い場所に来てしまったと感じるのは何故だろう。

新生活という響きはこれが最後なのだろうか?今まで小学校から大学までことあるごとに新生活を経験してきた。初めてのクラス、友達、先生、部活の仲間、知らない土地。
環境が変わることは不安でもあり楽しみでもある。家族や友達の前ではやる気と楽しみでいっぱいだと伝えて出てきたが、やっぱり不安が大きい。人は強がる生き物であると再認識させられる。

家を出る時、
母は「身体に気をつけて頑張って。」と
父は「頑張らなくていいよ。」と声をかけた。
私は「程々に頑張るね。」と言って別れた。

車内販売のアイスクリームはとても固いと聞いている。それだけ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?