よるのひとりごと
事情があって長く帰省した夏。
子ども部屋のオルガンには、浴衣のはぎれなのか、水色の布がかけられていた。母がたまに蓋を開けて弾くらしい。うちの家族で鍵盤を弾けるのは母だけ。そのオルガンは今、ちょっとした物置きになっている。
わたしも、祖母の家から見つけてきた形見のお茶道具を並べた。
その時の一枚。
冬の夜、携帯の中からこの写真を見つけた。
網戸から抜けてくる午後の風、日差しで暑くなったサッシのにおい、素足で廊下を歩くときのぺたぺたとした足音。
何気なく撮った一枚から、そのひとつひとつが思い起こされる。
共働きで誰もいない家にひとり。
けれど不思議と寂しくはない。
この家に、家族に守られている感覚。
安全な場所。
自分だけのひみつの時間。
なんて贅沢なんだろう...
あぁ、いつまでもこの家の子どもでいたい
そう思った。
そう言うわたしは、来月、結婚のあいさつのため実家に戻る。
2023.1.20 1:10
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