夕立のりぼん(ネクタイ)第2話

これは、
ぼたん様、芍薬様、平来ミナ様の踊ってみた「夕立のりぼん」
https://t.co/thK5dFwwM4?amp=1
を元に執筆いたしました。

登場人物の口調、性格、家族構成等は完全に執筆者の考察となっているため、
苦手な方は閲覧をお控えください。見る方は自己責任でよろしくお願いいたします。

この小説の時間軸は、夕立のりぼんで表現されている、まだネクタイを付けて仲良くしていた時期となっております。

↓以下本編↓(あくまで作者の個人的な考察の上で執筆しています。見る方は自己責任でお願いします)





キーンコーンカーンコーン

終わったぁ…今日も一日乗り切ったぁ…。
この鐘をきいたクラスメイト達が荷物をカバンに詰めて、教室を出ていく。行先はその人によって違う。部活であったり、友達とカラオケだったり、あるいは他のクラスにいる恋人と仲良く帰ったり…まあ、放課後の過ごし方は十人十色だ。

僕は、もちろん帰宅部であるので、そのまま家に帰って誰もいない一室でゲームをする。これがいつもの日課だ。

あー、早くゲームしたい。一秒でも早く帰ってゲームをしたい。

「しゃくざわ~。放課後暇?、どこか食べに行こうぜ!!」


またこの男だ。セナのこの一言で僕の理想の放課後が壊れていく。


「…ぼ、僕は今日はゲームでレベル上げをするっていう大事な大事な」
「そしたら、コンビニでお菓子かって、しゃくざわんちでゲームしようぜ!」
「ええっ?!そんな急に…」
「なぁ?いいだろ?」


うっ…この男の勢いと圧力にはいつもかなわない。


「…わ、わかったよ…そうだ、つかさくんもどう?」
「僕?、あー、とても行きたいのはやまやまだけど、今日は生徒会の仕事が急に入っちゃってね…気持ちだけ受け取っておくね」

もしかしたらと思ってつかさ君を誘ってみたけど、どうやら今日は生徒会の仕事で忙しいらしい。残念、つかさくんとまだ一緒にいれると思ったのにな…生徒会なら仕方がない。

「そ、そっかぁ…生徒会、頑張って!」
「うん、ありがとう、それじゃ、僕は失礼するね、またね」

「またね…!/おう、じゃあな、つかさ」
つかさくんにそう告げて僕とセナは教室を後にした。


「なあなあ、芍沢はポテチの味はうすしお派?コンソメ派?」
「…どっちも好きだけど、コ、コンソメかな」
「俺も!コンソメのあの絶妙な味がたまんないよなぁ…」
「アハハ…」

うん、どう頑張ってもあのキラキラした感じはまだ慣れない。これでも幾分かは話せるようになったけれど、セナの眼を見ては話せない。

ただ、たまに、本当にたまにセナから発信される目線は感じることがある。どうせ、ただ変な奴という哀れみとかそういう感じに近い視線を僕に送っているのだろう。

「あっ!いっけね、財布教室に忘れてきた」
「そ、それは一番まずいんじゃ…」
「まずいな…ちょっととってくるわ、芍沢は先コンビニに行ってて!財布とったらすぐそっち向かうから!」
「あっ、ちょっと!」

そう言って、彼は財布を取りに来た道を戻った。
あのチャラ男、ああ見えて少しだけ抜けているところがある。本当に、人間は見かけによらない。セナを見ているとつくづくそう思う。

さて、さっきまでうるさかった僕の隣が今は静かなわけで、20分ぶりに静寂の時間が来た…と思いきや、頬に少し冷たい感覚が一瞬襲った。

雨だ。

どうやら今朝がたの夕立が降るという予報は当たっていた。普段の雨ならすぐには強くはならないが、いきなりどっと降って、気分が変わったかのようにカラッとすぐやむというのが夕立の厄介なところだ。ひどくならないうちに傘をさして…

ガサガサ

……ない、朝はしっかり入っていたはずの折り畳み傘がカバンの定位置になかったのだ。

(教室においてきたかな…。やらかしたなぁ…)
ここからコンビニまではまだ少し距離がある。今から僕のありったけの力を出して走ればまだ学校のほうが距離的に近い。


どうやら戻ったほうが賢明そうだ。
僕のゲーム脳で考えた結論は、「全力ダッシュで教室にある傘を取りに行く」だった。結論が出たならば、後は行動あるのみ。僕は、走りにくい革靴で学校まで急いだ。


「ハァ…ハァ…ハァ…」

何とか雨がひどくなる前に学校に到着することが出来た。
しばらく運動をしていなかったというのもあって、学校についたころにはもうへとへとで一歩も歩けないぐらいだった。
心臓があり得ないぐらいバクバクしている…キッツ…やっぱり根暗の僕には歩くぐらいがちょうどいいんだよ…。走んなきゃよかった…。
走ったことに後悔しているうちに、疲れた僕の体は昇降口に吸い込まれいった。その瞬間、雨の勢いは強くなり地面に痛々しく叩きつけていた。

さて、傘をとって早くセナと合流しなきゃ。

そういわれれば、学校に戻っている最中にあの派手な金髪に出くわさなかったな。彼が戻った時間から考えても、僕が学校に向かっているときに会うはずなのだが…

まあ、あの彼のことだ、どこかで道草を食っているとこだろう。
それよりも傘だ。早く回収しないと…

「______」
「_____」
「__________」

だれもいないはずの教室から話し声が聞こえた。聞こえてきた方向からするに…、僕らの教室だ。

誰かいるのだろうか。まあ、お邪魔にならない程度にこっそりと中に入って用事を済ませよう。

そう思った矢先だった。

ドンッ
「わっ!」

何かが壁にぶつかる音がした。あまりにもびっくりして声が出てしまった。もしもなにかもめごとが起こったりしたらそれこそ大変なことになる。少し急ごう。そして早急に去ろう。


教室のすぐそばまで来た。

いつも放課後になれば閉められているはずのドアが開いていて、不審に思った僕はふと自分の足元から教室の開かれているドアから教室をのぞいた。


それを目にした瞬間、僕の中での時間の流れが止まった。
ある夕立のひどい残暑の日、その光景は僕をひどく苦しめ、そしてひどく僕の心を狂わせたんだ。


僕の瞳には、片思い相手が派手な金色の髪をした男と黒板に挟まれ、お互いの唇の距離がゼロになった瞬間が映っていた。
片思いの手には、あの派手な男の首についているネクタイが強く握りしめられていた。

耳には雨の打ち付ける音と自分自身の鼓動が不協和音が響き渡り、夏の独特の何とも言えない感じが僕の体全身にまとわりついていた。

「………うっ…うそ…でしょ…」

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