夕立のりぼん(ネクタイ)第1話

これは、
ぼたん様、芍薬様、平来ミナ様の踊ってみた「夕立のりぼん」
https://t.co/thK5dFwwM4?amp=1
を元に執筆いたしました。

登場人物の口調、性格、家族構成等は完全に執筆者の解釈となっているため、苦手な方は閲覧をお控えください。見る方は自己責任でよろしくお願いいたします。

この小説の時間軸は、夕立のりぼんで表現されている、まだネクタイを付けて仲良くしていた時期となっております。

↓以下本編↓(あくまで作者の個人的な考察・解釈の上で執筆しています。見る方は自己責任でお願いします)(2021年4月7日改訂)


最初はこんなことになるなんて、だれも思っていなかった。
こんなにも「恋」というものは、とても辛く、切なく、人間関係をいとも簡単に崩してしまう。
まるで、きっちり結んでいてもいともたやすく解かれてしまうネクタイのように…


ここは、いたって平凡な団地。そこで僕は生まれ育った。
両親は早くに離婚し、母親と二人きり。
昔から人見知りで根暗気質であった僕は、高校に上がるまで誰の目に留まることがないように、目立たないようにひっそりと学校生活をそれなり送っていた。だが、学校は正直あんまり好きでない。むしろ行きたくない。家の中でゲームを永遠としていたいし、マンガを一日ずっと読む生活とかしたい。世にいう「オタク」に所属している僕が、最近は裏を返したかのように学校へ行っている理由。

それは、ある一人の同級生と一秒でも長く同じ空間にいたい。ただそれだけの理由だった。

今日もいつも通りの時間に起き、適当に朝ごはんを作って食べ、身支度をする。
まず眼鏡が壊れないように机に置くところから始まる。それからはいたって普通だ。パジャマを脱ぎ、シャツをしっかり第一ボタンまで締めてスラックスをはく。ネクタイは絶対に形がきれいに見えるようにしっかりと身に着け、ベストを着る。そしてもう一度眼鏡をかけなおす。
最後に髪などの身だしなみだ。鏡を見て自分の姿を幾分かマシに見えるように髪の毛を整える。
全ての準備が終わった。鏡に映るのはいつも通り、「根暗オタクで真面目な僕」。
よし、完璧だ。
今日はあの人と長くいることが出来るかな…?
「____つかさくん。」

僕は教科書がぎっしり詰まった重いスクールバックを肩に下げ、家の鍵を閉めた。

時期はもう早くて9月の中旬だ。ついこの間まで桜がきれいに咲いていたのに気が付いたら花がついていた木々には青々しい葉が生い茂っていた。それにしても今日は特に暑い。もうちょっとしたら10月だぞ?もう少し涼しくならないのか…ううっ…冷房の効いた部屋でゲームしたい…

「よっ!しゃ、く、ざ、わ~はよはよ」
「…な、何ですか」
「おいおい、連れねぇな~、お前はもう少し明るくなれって」
「…よ、余計なお世話です」

今話しかけてきた文字からも分かるチャラそうな男。クラスは同じでいわゆるムードメーカ的な存在であり、どこにいても目立ちそうな金髪をしている。こいつは僕の隣の席に座っている、セナだ。この高校に入って初めて会話した人物こそこの男だった。初めは嫌われないようにと頑張って話していた。徐々に飽きられたらよかったのだが、こうして一年半たった今でもこうして話しかけてくる”とても”変わったやつだ。正直僕はこの男が少々苦手である。

「それにしても今年は9月になってもくそアチィな、お前、第一ボタンまでYシャツ締めて、暑くねぇの?」
「…べ、別にいいじゃないですか、これじゃないとネクタイがきれいに締まらないんですよ」
「こらこらセナ、一人の生徒に寄ってたかっちゃだめだろ?おはよ、芍沢君」
「…!?、お、おはよう…(ございます(小声))」

突然金髪の隣から出てきた美少年。
髪色は少しグリーンかかった色で、異国から来たっていってもいいほど顔立ちがきれいなこの人こそが、僕が一番会いたかった羽鳥つかさくんだ。いわゆる僕の「片思いのお相手」というやつだ。今日はこんなにも早く会うことが出来て何だったらつかさ君から話しかけてもらえた…!今日はなんていい日なんだ…!それなのに僕としたことが…びっくりしすぎて声が裏返ってしまった…

「あ?なんだよ、いい子気取りしている生徒会所属のつかさ様ですか?別に寄ってたかってねぇし、あと近い」
「あぁ、ごめんごめん(笑)、あっちでの癖がつい抜けなくてね。それにしても「いい子気取り」だなんて、まったく失礼だなぁ」

彼は帰国子女で、なんでも向こうでの生活が長かったことから少しスキンシップも激しいところがあるらしい(本人が前にそう言っていた)。
これが僕らのいつも通りの登校風景。見た目や性格は全く違くてもなぜか気が付くといつも一緒にいる。今日もいつも通りの日常の始まりだ。

「そういえば、今日夕方から天気が不安定になるらしいよ、セナ、ちゃんと傘持ってきた?」
「あっ…!やべぇ忘れてきた」
「だと思った。芍沢くんは?」
「一応折りたたみ傘は毎日持ち歩いてます…」
「さすがだね、”ジョン”は」
「それで呼ぶのはやめてって前いったじゃないですかぁ…つかさくん」
「あはは(笑)やっぱり、君は面白いね、昔飼ってた犬にそっくり」

傍から見ればなんの変哲もない高校生がじゃれあっているだけであろう。根暗な僕でも気負わず接してくれるのがこの二人、本当の友達ってこんな感じなんだろうなぁ…今青春しているなぁ…心の隅でそう思っている自分がいた。

でもその青春は長くは続かなかった。突然降り出した夕立の雨によってきれいさっぱり洗い流されてしまったんだ。

あの残暑の音が鳴り響く放課後の教室であったことさえ見ていなかったら…


僕らの関係が壊れることはなかったんだ…。


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