父で見るネットワークビジネスの話

ネットワークビジネスに対して、はまり込んでいた父がいるので「そういう人間もいるんだな」と思うだけで、偏見はない。
もっと言うならば、勧誘されてみるだけならいいが、製品を愛用したりまして自分が勧誘するようなことはしない人生がいいな、と思っている。

僕から見た父という人間の話

この話をするにあたって、まずは白神父という人間の話をしようと思う。
寡黙というより口下手といったほうが良さそうな一般家庭の父である。
定時制の高校を卒業後働きはじめ、母と結婚。馴れ初めは、当時母の友人と父の兄が交際していたそうで、高校在学中にそのご友人が父を母に紹介し、交際を始めたそう。かれこれ30年の付き合いとなる。
個人的な感想にはなるが、父の人生最大の失敗は母と結婚したことではないかと思っている。
生まれる前や幼少期には父親…僕から見れば祖父の影響で長距離のトラックの運転手として働いていたそうで、父親のことは尊敬しているらしい。
母から聞いただけで本人からその話はさっぱり聞いたことがないが、小学校の頃セレナに乗って静岡と広島に一回、潮岬に数回。あとは度々山を攻めに行っていたので運転が好きなのが伺える。
運転もそうだが車も好きで、幼稚園の頃には祖父から貰ったというスカイライン(聞けばなかなかの高級車なので、幼少期の僕の勘違いではないかと思っている)に乗っており、それが故障してしまったのに加え、双子が生まれ家族が急に増えたのでセレナに乗り換え。子供が成長し家族全員でどこかに行くことも減ったので、アルトワークスを購入。中古車で、前の持ち主が粗糖こだわったのか、エンジンが非常にやかましい。が、馬力は軽自動車ではなかなか出せないものらしく、度々山に走りに行っていた。それによく同乗していたのもあり、未だに運転の荒い荒くない、上手い下手がわからない。
そこから念願の新車、スイフト・スポーツに乗り換える。
しかし、ローンに加え、子供の学費、維持費などが積み重なり最終的には売ってしまう。これに関しては、父の数少ない楽しみを取り上げてしまったと未だに申し訳なくなるが、子供を生むのはあくまで親の責任です知るかばーかばーか。学費が高い?家にお金がない?お 前 が 始 め た 物 語だろということで申し訳なくなるのはやめた。
とにかく働きたくない、働くのに向かない母と、4人の子供を父一人で養うのはかなり難しかったのだと今になって思う。家にはいつもお金がなかった。かなり曖昧だが、僕が幼稚園の頃にはフォークリフトの運転手と居酒屋を掛け持ちしていたような記憶がある。居酒屋は気がつけばやめており、フォークリフトの運転手も、新しくなった社長とあまりウマが会わなかったらしく、物損と同時に退職。ここから転職を繰り返し、あまり覚えていない。覚えている限りで言うと、トラックの運転手に転職。養鶏所がうんぬんだとかで、時折持って帰ってきてくれる卵で食べる卵かけご飯が美味しかった。夜が遅いことが多く、居眠り運転による自損事故でトラックが大破。父自信は大きな怪我もなく奇跡とも言える。「トラックが守ってくれた」と父は語る。会社から特になにかを求められたこともなかったが、責任と居心地の悪さで退職。次にトラックの運転手だったかフォークリフトの運転手だったかに転職。給料があまりにも低く、手取りでいうと今の僕よりも低い。記憶が正しければこのあたりでネットワークビジネスに手を出す。あまりの給料の低さに母から度々転職の願いがあり、トラックの運転手に転職。47歳になったばかりにして脳出血にて退職。
母が働きたがらなかったのもあるが、父も「母親は働かずに家にいるべき」という考えを持っていたそう。幼少期には「料理の品数が少ない」とかで離婚になりかけるほどの喧嘩をし、未だに品数が少ないと文句を言うだとか聞いたので、家庭に対してはやや古めかしい考えだと思ったことがある。
それにしても家には金がなく、常に働いていた。トラックを大破させ退職したときには2ヶ月ほど転職活動を休んでいたが、母に急かさて転職。今思えば休み期間がほしかったのではとも思うが、当時高校生だった僕は母になじられる父を、見ているしかできなかった。
低賃金トラックの運ちゃんになったときにも毎月毎月母に給料の低さを嘆かれており、本当になんとも言えない気持ちになるが当時高校生だった僕は母に嘆かれる父を、見ているしかできなかった。
折角の新車を買って、売る話が出たときには流石に止めたが、それでもどうしようもなく売ってしまったときには本当に父の人生の楽しみとはなんなんだろうかと考えた。
低賃金トラックの運ちゃんをやめ、歳で見れば少ないが、それでもまあ生活はできなくもなかろうという賃金の会社に転職して、長年の無理と不摂生が祟ったのか、病に臥して後遺症で一人で歩くことさえままならない父を見て、父の人生とはなんだったのだろうかと考える。
母を見ると人生つらいことばかりだと思っていたが、本当に人生がしんどいのは父ではないだろうか。あまり自分のことを話さず、母に詰られようが怒られようが嘆かれようが何されようが黙っている父。たまに怒ると手がつけられない、家のスイッチは壊されたし、小2の僕は投げられたし、成人した僕は自室から玄関前まで引きずられた。
言いたいこともあったのではないかと思うが、寡黙な父は何も言わない。
父は人生をどう思っているのだろうか。

父がネットワークビジネスに手を出した話

さて、父の紹介はこのあたりにしておこうと思う。あまりにも負の側面に焦点を当てすぎたので、「お前は父親をなんだと思っているんだ」とか「流石に可哀想」とか「いいところはなかったのか」とか言われそうだが、父のいい話は一旦置いておく。この話をするからには後日書きたいと思う。

まず、始めたきっかけは低賃金トラックの運ちゃんのとき
「白神父さんってすごい方ですよね、僕尊敬しているんです」
という人間が現れた。
確か同僚だったか、同僚から話を聞いた同僚の友達だったかだと思う。
100%僕の視点なので難しいところではあるが、とてもではないが尊敬できる人間ではないと思う…というと流石に自分の向かって…ということで言い方を変えよう。
「尊敬している人は誰ですか?」と訊かれて名前が上がるような人物ではないと思う。「怪しすぎでしょ、その人」それがその話を聞いたときの印象である。
小学校のワークで「尊敬している人は?」という問いがあり仕方なく「お父さん」と書いた僕が言っていいものでもないが。

なんしかその人に勧められるがままにセミナーに参加し、その商材が非常に気に入り見事ネットワークビジネスの世界に足を踏み入れた

ネットワークビジネスを始めてからの話

そもそもネットワークビジネスとは
父から聞いた話を記憶頼みに書くと、
会社の商品を口コミで販売し、購入してもらうと売上の何%だかが入る。
ウマいのはここからで、さらにその購入してくれた人が別の人間に販売すると、その売上の何%だかも手に入る。
最終的には、自分が勧誘せずともお金が手に入る。ウマい。
ということらしい。
これに関しては、あまり正確性にかける情報を載せるのもよくないので、近日中にきちんとしたものを載せるつもりだが眠いので後日にされたい。

セミナーに参加するのに一回500円。それを週に数回。
仕組みの説明、製品の紹介のためにiPadを購入。
後に儲かるとはいえ、初期投資が過ぎないかというのが母の意見。

あるあるな話ではあるが、真っ先に旧来の友人を勧誘しようとした結果、音信不通となり絶交。
元々、近所に住んでいたときはよく一緒にでかけていたし僕もよく遊びに連れて行ってもらった。しかし転居し遠方になるとともにやや疎遠になったし、やがて他の二人も家庭を持つとますます疎遠になったので、当時の父的にはまあいいか、だったそう。本当にそれでいいのか。
今更ながらに怖いな、と思うのは、「儲かるのに勿体ない」と言っていたことである。本当に父はこれで一攫千金を狙っていたのだろうか。

どういうわけか、ネットワークビジネスに集中するため、とかで趣味だったサーフボードも売った。本当に父の人生に楽しみはあるのだろうか。
たまたま用事で立ち入った両親の寝室の壁に、詳しい内容は忘れたが、「なん人勧誘する」だとか「何万稼ぐ」だとか書いており、全く意識高くない人間が意識高い系に擬態しようとしている雰囲気が薄ら寒かったのを覚えている。

セミナーに参加し、500円支払う。
これは他に使い道もあった気がするが、iPadを購入。
何万円以上かは忘れたが、ある程度自社の製品を自分も購入する必要があった。母が気に入ってはいたが、高価だし縛りがなければ買わないよなと今思う。
何をするにもある程度の投資は必要だが、さてどうだろうか。

初めは無条件に応援していた母だったが、そういった投資は積み重なるものの、他の会員の紹介で勧誘するも鳴かず飛ばずだったために徐々に否定的になっていき、いっときは喧嘩が絶えなかった。

ついに父も儲からないと思ったのか、いつの間にかやめていた。

僕からみたネットワークビジネスというものの話

そもそも、父は口があまり上手くない。
誰でも儲かるというが、こういうので儲かるのは、その事業を考えついた人間か、その次くらいの人間か、よっぽど人望に恵まれてよっぽど口が上手い人間くらいではなかろうか。
まず、父には難しかったのではないかと思う。

この話は当時高校生だったかフリーターだったかの話であり、今も昔も世間知らずなので何が問題視されており、過去にマルチ商法で問題が頻発していたという以外の世間から冷たい視線を浴びている理由がわからないのでこちらも後日調べようとは思っているが、それにしても世間の目は冷たいものである。
友達を失ってまで人に勧めようと思う製品ってあんまりないよ。
そう思うと、買って完結するならまだしも、勧める相手がいないのでお話にならない。買うだけでもいいらしいが、気にいる製品というのは探せばいくらでもあると思う。現に、実家にいた頃はシャンプーやらサプリメントやら、特に浄水器付きの水筒は気に入っていたが、シャンプーはドラストを見れば素敵なものがたくさん並んでいるし、サプリメントはこだわらない。水筒はネットで検索すれば3秒で似たような製品が出てくる。
わざわざ高価なものをノルマ付きで買うのもちょっと。

それはそうとして、父に限って言うと、儲け話を聞いて「藁にもすがる思い」だったのではないかと思うフシがある。
何度もいうが、父にはやや難しいのではないかと思うし、冷静に考えればこんなもので儲かるのはごく一部である。
当時は低賃金で生活にもかなり苦労しており、そんなときに簡単に儲かる話を聞き、甘言に耳を傾け心を持っていかれたのかもしれない。

これが父に限った話なのか、それともこういったものにハマる人間の多くに言えることなのかはわからないが、明らかに胡散臭いものの話を聞いたとき、心を持っていかれてしまう人間は、何かに困っており悩んでおり少し冷静さを失ってしまっているのかもしれない。あくまで父という人間を通してネットワークビジネスというものを見た僕の感想なので、「個人的にはそう思う」ということでしかないが、そういう視点から、「製品を愛用したりまして人に勧誘するようなことはしない人生がいいな」と思っている。


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