#11 天国旅行
心中、または自死
選び抜かれた死は、本来叶わないはずの生の選択を可能にする
死が愛だとしたら、愛は死を選べるのか
命と愛は天秤にかけることができるのか
自死にかける抗議は、愛と共存することができるのか
死を救済と考える
次にまっさらな生が与えられる約束もないのに
今よりも「まし」な世界に行けるという幻想はいつ誰が思いついたんだろう
「事業に失敗して、借金取りが押しかけたせいで奥さんはノイローゼになっちゃって、ヤクザに拉致られた娘はソープに売られたってもっぱらの噂で、」そうでなくても人は多分、ふと覚悟することがある
「あのとき」はきっと誰にでも心当たりがあって、でも必死に忘れようとする
「私」にうんざりだと思われても、傷つけられたことを忘れないでいる「きみ」は立派だと思う 古傷が痛んで思い詰める夜は誰も否定できない
2人を同時に愛する、時を経て心中を果たす
笑顔で首を絞める彼を愛おしく思う貴女はなぜ前世の記憶を残していったのだろう
焼身、飛び降り、愛情は否定も肯定もされない
死んだ貴女と生きていくことは幸せか、考え方一つで道は変わる
生は賛美されない
死も賛美されない
ただ、今生きている私は死についてまだ何も知らない
それを知りたいと思うことを好奇心と呼んでも差し支えないだろうか
私にとって、三浦しをんの短編集は救済です
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