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夏休みが終わって 、学校が始まった 。
学校に行けば 、陽菜と会える 。
陽菜が死んだなんて嘘だ 、今までが悪夢だったのだ 、
とそう信じて学校へ向かった 。

「ねえきみ、橋本陽菜さんと澤田あゆみさんと同じ高校だよね 、ふたりのこと何か知ってる?」
電車をおりて改札を抜けると 、知らない男に聞かれた。
ああこの人も 、美人女子高生2人組の無理心中について調べてるんだ 。
「 … 知りません 。」
わたしは関わりたくなくて 、足早に男のもとから立ち去った 。
そんなことより 、陽菜に会いたくて 、陽菜の声が聞きたくて 、息を弾ませながら学校までの山道を登った 。

校門には いつもより教師の数が多いが 、それを超えるマスコミの数で騒々しい 。
「 橋本さんと澤田さんはどんな生徒でしたか?」
「 お答えできません 」
「 ねえ、きみ、橋本さんと話したことある?」
「 生徒に話しかけるのやめてください!!!」

やっとの思いで 校門をくぐり抜けて 、走って自分のクラスへ向かう 。

「 はるな!おはよう 」

クラスに入るなり 、里美が話しかけてきた 。

「 … おはよう 」
「 ねえ、陽菜どうしちゃったの … ?ていうか陽菜って澤田さんと仲良かったの?知ってた?」
「 …知らない 」
「 え〜 、ほんとに?陽菜とはるな、仲良しじゃん 。親友でしょ? なんかふたりだけの世界〜って感じに見えたのに 、案外そうでも無かったんだ 」
そう言われて深く傷ついた 。
わたしもそう思っていた 。わたしと陽菜だけの世界が存在していると思った 。少なくともわたしは、陽菜がいない世界なんて生きていられないと思った 。

ホームルームの時間になっても 、陽菜の席と澤田さんの席は埋まらなかった 。
担任が重苦しい空気の中で入ってきた 。

「 おはようございます 。みなさん夏休みは元気に過ごされていたでしょうか 。みなさんに残念なお知らせがあります。知っている人も多いでしょうが、このクラスの橋本陽菜さんと澤田あゆみさんがなくなりました。 」
そう言われて 、埋まらない席を眺めながら やっと実感した 。陽菜は 、私の親友は 、もうこの世にいない 。

担任は重い口調で続ける 。
「 明日の18時から告別式を行います 。クラスの有志で参加しますので 、よろしくお願いします 。」

全校集会をする為に体育間に向かい 、また陽菜の話をしていた気がするが 、何も覚えていない 。立っていたのか座っていたのか 、校歌を歌った気がする 。

陽菜がいない 。

そればかりが私を苦しめている 。