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日本舞踊のシステム

お久しぶりです、永井です。今回は、私が2歳の時から習っている「日本舞踊のシステム」について、ご紹介していこうと思います。そもそも日本舞踊とはどんなものなのか?何から始まったものなのか?また、流派についても深く紹介していこうと思います。

日本舞踊とは?

…「日本舞踊」とは名前の通り「日本の踊り」です。「日本の踊り」の中には民謡や神楽、盆踊りなどがありますが、日本舞踊は民俗的なものではなく、あくまでも舞台上で披露することを目的とした舞踊の一部のことを指します。日本舞踊には、先代的に続いていた「舞楽」「能楽」などの要素も混ざっており、先代舞踊の集大成とも言えます。

日本舞踊はもともと江戸時代に歌舞伎から派生したものです。歌舞伎は女性から始まりましたが、風紀上から女性が舞台に立つのは禁止されました。しかし、大奥で歌舞伎舞踊を披露する女性達がいたのです。彼女らは、歌舞伎好きの商家の子女にも踊りを教えるようになりました。贔屓の歌舞伎役者の踊りを真似たい町娘達に、需要があったようです。ここから生まれた日本舞踊ですが、明治以降は、美しい女性らしい所作を身につけるための習い事となりました。そして、流派のシステムや仕切りも整備され、芸名の取得方法も指定されるようになりました。


日本舞踊の流派とは?

明治以降、日本舞踊が歌舞伎界から独立し、個々の流派を結成しました。その流派によっては元の目的の違いなどから、振り付けやイメージが多少異なっています。今回は、200程ある流派の中から有名な5つの流派をご紹介しようと思います。

花柳流

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この花柳流は、5つの中でも圧倒的に所属人数が多い最大組織です。最初は花柳寿輔さんから始りました。

寿輔さんはもともとは西川流宗家(後々説明)の四代目西川扇蔵さんの門下で歌舞伎役者の市川團十郎さんの弟子として役者としても活躍されています。扇蔵さんに期待されていましたが、寿輔さんは扇蔵さんの没後、破門されてしまいました。破門後、地元の吉原に戻り、芸者さんを中心におどりを教えていました。

その後、「花柳」という姓を使って歌舞伎の振付師となったのが花柳流の始まりと言われています。

その後の二代目寿輔さんも振付師として活躍しましたが、戦後は歌舞伎から離れ、流派の舞踊家育成と組織の体系化を中心に活動するようになりました。

花柳流は全体的に細やかな振りが多く、基本の動きがしっかりしていて、古典の踊りが多いです。


藤間流

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江戸時代から300年以上続いており、流派の中では歌舞伎との繋がりが深く伝統ある流派です。

藤間流は花柳流と違って、同じ藤間流の中にもたくさんの分派があります。現在の宗家は藤間勘十郎さんです。

藤間流は藤間勘兵衛さんから始まりました。勘兵衛さんは江戸時代、江戸に出てきて、歌舞伎の振付師となった際に、故郷の名前である「藤間」を姓としました。

数代後に勘兵衛さんの養子として出たのが勘十郎さんで、勘兵衛家が途絶えた際に統合されたと言われています。勘十郎宗家からは歌舞伎界の名振付師が輩出されており、現宗家も歌舞伎舞台の振付の多くを手がけ、歌舞伎界の御曹司の多くが師事しています。

藤間流の特徴は、舞台演出を目的としているので、ふりが大きいところです。


若柳流

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若柳流はもともと花柳流からできたと言われています。

というのも、初代家元の若柳寿童さんは、花柳流初代家元の花柳寿輔さんの弟子で歌舞伎振付に携わっていましたが、破門されて自ら流派を興しましたといわれています。師の花柳寿輔と意見対立があったそうです。花柳流から派生したことから、ふりも花柳流と同様に細かく、全体的に品のある踊りが特徴です。

正統若柳流と宗家若柳流に分かれており、正統若柳流は家元制度ではなく、理事制という珍しい制度を取り入れており、複数の著名舞踊家を輩出しています。

宗家若柳流はいまも京都を拠点に活動しており、宗家は歌舞伎舞踊も積極的に演じ、振り付けを手掛けることもあります。


西川流

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元禄時代に始まった、最も古く、歴史のある流派です。始祖である西川扇蔵さんは、歌舞伎の囃子方から振付師に転向しました。当代の宗家家元は、自身が理事長となって日本舞踊振興財団を設立し、他流派と協力し、日本舞踊を次世代につなげる活動をしており、子供教室や海外公演も積極的に行っています。

有力分派に名古屋を拠点とする「名古屋西川流」があります。

元歌舞伎役者で西川流門弟だった初代西川鯉三郎さんが独立を許されて始めました。二代目鯉三郎さんも高名な舞踊家ですが、元は役者で、歴史に残る踊りの名手の六代目尾上菊五郎さんの部屋子でした。

当代の名古屋西川流家元右近さんは、スポーツ科学者と協力して日舞の動きを取り入れた運動プログラムを開発するなど、現代独特の活動を行っています。


坂東流

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歌舞伎役者の坂東三津五郎さんが代々家元を継承しており、自ずと歌舞伎に一番近い流派です。そのことから、他流派よりも比較的「演技」を重視しています。

流祖である三代目三津五郎さんは変化舞踊の名手で、複数の登場人物を踊り分けます。新作舞踊も数多く輩出しており、いまでは日本舞踊の定番となっているものもあります。

現在の家元は、三津五郎さんの長男であり、若手役者として活躍されている、坂東巳之助さんです。



ここまで聞いて、いかがだったでしょうか。

そもそも宗家家元って何?と思われる方も少なくないと思います。宗家家元は、その流派の代々継がれるリーダーの座のことであり、その多くは流祖であることが多いです。日本舞踊と言ったら全て同じに見えるかもしれませんが、流派によって同じ曲でも演じる際の観点や主人公が違ったり、体の使い方も全く違います。これらの違いがわかると、自分の贔屓する舞踊家さんたちができたり、実際に自分が入門する時に役立つかもしれません。

今回、日本舞踊のシステムについてお話ししましたが、わたしも知らなかった未知の世界が多く、発信する際には踊りの体の使い方だけでなく、これからはこう言った歴史などの知識も学んでいきたいと改めてかんじました。

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