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桜三月遊歩道

1972年-2024
狂ったのは人でも花でもなく季節でした。

緑が萌え芽ぐむ生の匂い。
生暖かな緩んだ死の匂い。
麗らかな遊歩道。
背をまあるくした黒猫。
白線を踏む二人の影に、
君のごまかし。

『記憶』

私はそれをとくに愛した。
電話先で震える唇さえも。

何故なら私が詩人だから。
有名画家の絵に火を付けたのも、
人との別れを好むのも全て、詩人だから。
私のような人間は桜を眺めこう言う。

「死にたくなる季節だ」と。

愛とは、温かなものとはなんだろう。
繋いだ手がむず痒く照れくさい。
そこにいるのにいないような。
そんな君との桜三月遊歩道。


微かな不安が押し寄せる。
特別な心配事や不安といったハッキリしたものではない、なにか漠然とした焦りのようなもの。
風が、葉が、どよめき出したとき心を大きく揺さぶられる。
小さな桃色の花にみなが浮かれ歩く季節に、一人理由のない不安感を抱くのは 新しく移ろう自然に追いつけない、そんな自分に不安があるからだと私は考えるが君たちはどうだろう──────

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