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希望と表裏一体の絶望

「ひらパー行きたい」
とだけLINEを送った。
「え!いこ!」
と返ってきた。
そこから予定を合わせてひらパーに行ってきた。

集合はお昼。
枚方駅のおしゃれなクレープ屋さんに行きたくて、最初はそこに行った。
「飲み物もセットにできますよ」
で飲み物を選び始める彼女のそういうところが割と好きだったりする。
注文してから目の前で生クリームを泡立ててくれる。
その音に耳を傾けながらゆっくりお喋りをした。
手元に来たクレープは大きくてボリューム満点だった。
生クリームがたっぷりで最高に美味しい。
ひらパーに行くという目的は忘れていないもののお喋りがあまりにも楽しくてずーっと話していた。

ひらパーに着く。
フリーパスが3300円なのだから安い。
まず最初にある木製のジェットコースターに乗った。
並んでもすぐ順番が回ってくるのでよい。
「キャー」というよりは「きゃー」という感じで、乗り物自体が怖いというより木製なのが怖い。

乗り終えて次は水上を円形のボートのような乗って動く乗り物に乗った。
濡れないことだけを祈りながら、ずーっとお喋りしていた。
彼女は過去、これに乗って下半身がびしょびしょになったらしい。
この日の寒さは12月並み
絶対濡れたくないという強い意志
いや、勝手に濡れるからどうしようもないけれど
幸いふたりとも大きく濡れずに済んだ。

別のエリアに移動した。
移動中もずーっとお喋り。
お喋りが止まない。
次のエリアでもそれはもう次々と乗り物に乗った。

空中ブランコは二人席を選んだ。
並んで座って飛んでる最中もお喋り
「空飛びたいねん」
から始まり
「えー!ほら!今飛んでる!飛んでんで!」
と嬉々としてはしゃぐ友人が愛おしい。
空中ブランコに初めて乗った私も大概はしゃいでいた。
終わる頃にはふたりともすっかり気持ち悪くなっていたのも愉快である。
気持ち悪くなっても空を飛ぶ楽しさには敵わないのでちゃっかり2回ぐらい乗った。

名前は知らない赤いジェットコースターに乗った。
これがふたりともとーってもお気に召して数え切れないぐらい乗った。
何回も乗って慣れてきたらとうとうここでもお喋りをするようになった。
「なんかさ、あれみたい。ジャルジャルのジェットコースターでも喋るヤツみたいなネタ」
「えー!知ってる!!思ってた!!」
不覚にもコントのネタを披露していたので、今度は敢えてそれをすることにした。
鞄の中でスマホのビデオを回して、恋バナや戦争の話をした。
わりと上出来だった。

なんだかんだ少しお腹が空いたねという話になった。
屋台が出ていたので見てみることにした。
ふたりとも優柔不断で、あれもいいこれもいいを繰り返した。
私はチーズハットクとホットチョコレート
彼女は肉巻きおにぎりとほうじ茶ラテ
温かい飲み物もすぐに冷えてしまう寒さだったけれど、気にせず喋り尽くした。

少しずつ辺りが暗くなってきてイルミネーションが灯り始めた。
この歳にもなって、ユニバ年パス勢であるにも関わらず、遊園地として楽しみたくて来た。
だからイルミネーションが目当てではなかった。
失礼な話だが、想像以上に綺麗でふたりともまたテンションが上がる。
盛り上がっていると
「お写真撮りましょうか」
と声をかけていただいた。
ありがたく撮ってもらったこの時の写真を友人は今LINEのトプ画とインスタのアイコンに設定してくれていてとても嬉しい。
この時許可を取ってくれるところが彼女の素敵なところだと思う。

寒くてマクドナルドに逃げ込んだ。
ポムの樹と迷った。
セットを食べながらやっぱりお喋り。
どこかで行こうかと言わないと出る空気にならないのが私たちだ。
マクドナルドを出ると外は更に暗くなっていて、ツリーがとても綺麗だった。
今日のわくわくがイルミネーションをより一層輝かせていた。

最後に気に入った乗り物にいくつか乗った。
「8時には出たいかも」
と言って携帯を見たらもう過ぎていた。
「過ぎてるやん!」
と笑って出口に向かった。

出口に向かう途中、顔出しパネルのそばで笑い合う家族がいた。
ひらパーは小さい子供連れが多くて、ふたりで
「幸せってこういうのなんだろうね」
と何度も話した。

見えない将来の話をしながら駅まで歩いた。
彼女とは住んでる場所が離れているから駅でお別れだった。
彼女はバスだったけれど私が乗る電車が来るまで一緒にホームで待っててくれた。
春には旅行に行くと決めたけれど別れが名残惜しかった。
「冬のうちに予定立てようね」
と約束して電車に乗り込んだ。
寂しくて、また毎日が始まることが怖くて、ひとりでちょっぴり泣いた。

家に帰ってからも手首に付けているフリーパスを切れなかった。
「いつまでつけてるん」
と母親に笑われたが、ちぎれば本当に今日が終わってしまう気がして外せなかった。
今日を終わらせる勇気が私にはなかった。


彼女とは高校1年生の頃、同じクラスだった。
けれど、過ごすグループが違ってあまり関わることはなかった。
2年生になると関わりは体育だけになった。
校舎も離れていたし部活も違った私たちだけれど、何故かよく話していた。
私は気さくでおもしろくて優しい彼女とクラスが離れても話せるのが嬉しかった。
なんなら進級してからの方が仲良くなった気がする。
そんな彼女と初めて遊んだのは3年生になってからだった。
映画を観てふたりで大号泣。
そこから定期的に遊ぶようになった。
彼女と遊ぶのは毎度信じられないぐらい楽しい

この歳にもなって別れが寂しくて泣くなんて思わなかった。
色んなことが重なって感情がぐしゃぐしゃだったせいだ
きっとそうだ

また会いたいと思えること
そう思ってもらえること
本当に幸せなことで
彼女はあまりにも素敵な人だから
私にはもったいないと思う


正直、またしんどい日々で心が元気じゃないから
“次の楽しみまで頑張ろう”
ではなく
“今日の楽しいのまま終わりたい”
と思ってしまう

堕ちるぐらいなら最高潮の今、世界が滅びればいいのに
また数時間後にはやって来てしまう明日が怖くて消えたくなる。
たまの楽しみのために頑張れるほど、私は強くない。
楽しくても辛くても死にたいなんて救いがない
死ぬ勇気もないから這いつくばっているだけで、ふわっと居なくなれるボタンがあれば迷わず押すだろう。

でも残念ながらそんなボタンは開発されていないから、今日も明日もひと月先も生きるしかない。
私は今日も死にたいままだ。
世界に救いはない。
それならたまの楽しみを希望に生きてみるしかないじゃないか

そうして生かしてくれる存在が居ること
今は素直に感謝できないけれど
いつか心から“ありがとう”と言えますように



作中で登場したジャルジャルのネタです


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