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あの子プレイリスト

高校3年間、恋なんてして来なかった
はずだった
そんな私の誰にも言えない恋の話


彼女とは2年間同じクラスで過ごした
ただのクラスメイト
人数が少なかったから話す仲ではあったけれど
特に接点もなければ
少人数なりにできるグループも違ったから
仲がいいとは言えなかった
高校2年生のまる1年間、彼女と撮ったツーショットなんて1枚もない

彼女の印象は正直覚えていない
でも多分かわいい子だなと思っていたんだと思う
初期から彼女単体の写真があるから
多分
「ねーほんとかわいい、こっち向いて」
とか言って撮ったんだと思う

かわいいが故に近づけなかった
自分とはなんとなく違う人間だと思っていた
というか、実際だいぶ違った
彼女は私なんかより数倍綺麗だった
見た目も中身も
そんな彼女に私はひっそりと憧れたまま3年生になった

3年生になっても彼女とは同じクラスだった
メンツが変われど彼女と同じグループになることはなかった
2人になれば話すし行事になれば写真も撮る
彼女の誕生日には勇気を出してサブ垢同士で繋がったりもした

卒業式の日、クラスの女子全員でお寿司を食べに行った
夜はそれぞれ予定があったから夕方解散
みんな方向ごとに分かれる中で、私と彼女が同じ方向だった
寄ろうと思っていた買い物に彼女は着いてきてくれた
がっつりふたりっきりになるのは本当に初めてだったかもしれない
もうあまり覚えていない
彼女が
「もう会えなくなるね」
とか言ったのかもしれない
いや、何も言われてないかもしれない
“もう普通には会えないんだ”
それを実感すると胸がひどく苦しくなって
確かにくっきりと嫌だなという感情が浮かび上がった

それでもお互い用事もあるし自然とお別れの時間はやって来る
彼女は駅の改札の前まで着いて来てくれた
「インスタ、見ててね」
「うん、私のも見ててね」
そんな会話をして手を振った

次に彼女に会ったのは夏休みだった
勇気を出して彼女を誘ったのだ
最初は社交辞令だと思われていたらしい
私が本当に日時を決めようとしてきたから驚いたと言っていた

カラオケに行って、女の子が歌っていたらかわいい曲という話になった
私がaikoのストローだと主張すると彼女はデンモクを弄り始めた
何歌うんだろう
察しが悪いので呑気にそう思っていたら愛おしいあの曲のイントロが聴こえてきた
え、あざとすぎる
絶対狙ってないからずるい
ときめいてしまったよ、ほんとずるいかわいい
この時ハマっていた夏恋センセイションとか
うわあ、彼女に「この後どっかで休みましょう」とか言われてみたい人生だった
彼女の歌声は意外とかっこいい系で聴き心地がいい

ひとしきり歌って恋バナになった
彼女が恋人と初めて手を繋いだ時のことを話してくれた
「帰りの電車待ってる時に手繋いでくれて、見たら耳まで真っ赤で、かわいいな思ったな」
はにかんでそう言う彼女を見て、胸が苦しくて熱くなった
多分、彼女の惚気は初めて聞いた
ストーリーにも恋人のことを載せないし、
普段からベタベタする感じではなくて、
別れたとか色んな話も耳にしていた

でもこの時の彼女の顔を見て、
あぁ、この子は本当に彼氏のことが好きなんだ
そう思った
嫌でも痛感した

「結婚の話とかするん?」
なんかしらの恋愛ソングの後か私の友人が半同棲という話をしたからかは忘れたけどふと聞いた
「わからんけど、自分が家事何もできんくて△△くん(彼氏さん)が全部やるからねって言ってくれてる」
あぁ、めちゃめちゃに愛されてんじゃん
それを言う彼女も愛おしい笑顔だった
「えーいいじゃん!結婚式呼んでね」
なんて、
精一杯の強がり


カラオケを出てご飯を食べに行った
彼女が調べてくれたお店
お店に向かう

「今日なんの服着るかとかめちゃくちゃ迷った」

「え、なにそれ。初デートじゃん」

「ほんまデート並みの緊張やったで」

ちょっとだけ嬉しかった
でも緊張されないぐらい仲良くなりたかったなとも思った


お店について席を通されて真向かいに彼女
あぁ、もう、かわいすぎるなあ
直視するのが申し訳ない
「うわあ 真正面から○○(彼女)を見られる△△くんは幸せだね〜」
と負け惜しみにも嫉妬にもならない何かを言った

美味しくご飯を食べて
それ以上に彼女のかわいさでお腹がいっぱいで
また会えるのかなって寂しくなった

「また遊ぼな」
彼女の方からそう言ってくれた
緊張してあまり会話ができなかった私は、恋人でもないしデートでもないのに、楽しませられなかったななんて考えていたからびっくりした
「え、いいの!?私そういうの本気にするよ?」
と言ったら笑って
「また行きたい居酒屋探して送るわ」
と言ってくれた

帰りも彼女は改札まで見送ってくれた
ストーリーにプリクラを載せてくれたし
しばらくしてから彼女見たさにハイライトを覗きに行ったら2023に私がいた
そのたった5秒が嬉しくて5分はにやけた


恋なのかもしれない
恋じゃないのかもしれない

好きな人の幸せが私の幸せ

これは本心
私があの手この手で彼女を奪ったって幸せにはできないだろうし、彼女は今恋人と幸せそうだからそれでよかった
簡単に言えば諦めがついた

それでもBeRealだけに上がるふたりの姿を見て苦しくなる
隣に居たかった
あの子の特別な一面を見てみたかった

ふと過ぎる
私が男の子だったら?
出会うのがもう少し早かったら?

もっと違う設定で もっと違う関係で
出会える世界線 選べたらよかった

Pretender/Official髭男dism
https://www.uta-net.com/song/266648/


“失恋”で検索をかけて流したプレイリスト
トップを飾ったPretender
こんなに痛い曲だったっけ?


例えば、もっとかわいい人とかもっと性格のいい人とかもっと仲のいい人とかそういうのって多分言い出したらキリがなくて、そんなこと言えばみんな芸能人や二次元に恋することになるし親友なんて存在しない

でも恋はそんな理屈で決まらない

何故かわからないけれど貴女だった
みんなみんな大好きだったけれど
選ばれたのは貴女だったの

夏の花は向日葵だけじゃない
いろんな種類の花が咲いてるのに
瞳(め)を閉じると浮かんで来るのは
風の中 揺れている
Sunflower

夏の花は向日葵だけじゃない/今泉佑唯(欅坂46)
https://www.uta-net.com/song/232897/

他にも綺麗な花は咲いているのに
どうして貴女に惹かれてしまったの

どうして、なんて考えても仕方ないはずなのに
もう振り切ったはずなのに


あの子の真っ直ぐな瞳
あの子の柔らかい肌と唇
あの子の ​─────


流れ星に3回願いを伝えられたとして何になる?
叶うことなどないのに


会いたい
でも会ったらきっとまた苦しくなる

せめて貴女の記憶の片隅に居させてほしい

たまにふと元気かなって思ってくれてたら嬉しい


恋だなんて認めてないけれど
きっと伝えることもないけれど

好きだったよ

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