大人アレルギー
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暗い部屋の中、そっとスマホを開いた。
ごっこ、ではなく正真正銘の社会人になって3ヶ月が経った。
目まぐるしく動く日常と、それほど変わり映えのしない日常の狭間で、すり減らす日々だ。
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いろいろなことがあった。
この数ヶ月、大学時代に続けていた日記をやめて、心の整理をわざと怠った。
文字に起こすと息ができなくなりそうだったから。
最近、大学時代の男女グループのLINEから親友(と思っていた女の子)が退会した。これで2度目。
もうこの4人で集まれることはないのかな。
彼女の中に不和をもたらしたとすれば、私がグループの1人と一線を越えながらもそうでないふりをしたりしなかったりしていたからかな。
彼女に申し訳が立たないと思いながら、BeRealの友達から彼女の存在が消えていないか、毎日確認してしては、アプリを閉じることを繰り返している。
彼女との定期LINEもBeReal交流も途絶えてしまったし、私は元来臆病者だから、もうこのまま彼女を気軽に遊びには誘えない気がしている。
そんなふうに思うのは、仲良くしていた会社の同期2人が付き合いだしたからかもしれない。
もともと男1女2の3人で適当につるんでいただけだけど、私を除く形で2人が交際を始めたあたりから、私は純粋に彼らをみられなくなった。
男は男で、直前まで元カノや長年片思いをしていた幼馴染とすったもんだあったにも関わらず、身近なところで幸せを見つけて会社でニヤニヤを見せつけてくるし、それでいて彼らは私とこれまで通りに接しようとしてくるのだから、それは無理だよねって。
私自身、男女関係で拗らせているのに、目の前で幸せを見せつけられることほどすり減るものはないのよ。。そして、会社とプライベートを切り分けられないような公私混同はめちゃくちゃ苦手なの。私はそこまで大人じゃないんだ。ごめん。
心の中で謝りながら、最近はお昼休憩を寝たふりしてやり過ごし、いかに同期たちがキャッキャしている場から逃れるか考えるのに必死だ。
会社にいても、盛り上がるのは社内のゴシップで、気分が良くなるものかといえば別にそうではない。
同期の彼らのことは嫌いではないが、私の性格が曲がっているせいか、彼らと単体で話をすることすら受け付けない。話に同調も笑えもしない。そんなアレルギーを発症しつつある。
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そうこうしているうちに、来月配属で東京を出ることになった。
3ヶ月過ごした東京で、私は寂しさや欲望を埋める人たちとたくさん出会った。
そして、自分の市場価値もある程度わかった。
不健全目的の人たちとは恋人ごっこまでは行けて、それ以上は無理であること。
彼らが私の容姿を気にしないことをいいことに、もしかしたら、と不相応に思い上がってしまう自分がいること。
これに対して、健全目的の人たちとは、自分が彼らを受け付けられなくなるか、逆に顔をみてフェードアウトされるかのどちらかであること。
前者の場合、大概「偽りの優しさで塗り固めた私に構うなんてバカな人。」と最低極まりない感情で繋がりを切ってしまうこと。
なのに、後者をされると、なんとなく受け入れてきた自分の容姿の価値を思い知らされて落ち込むこと。
ふつうになりたくて。
異性と恋をしてみたくて。
パートナーがいる人間になりたくて。
でもこれまでの22年間のほとんどを恋人ごっこでしか過ごせなかったから、他人を想いながら自分らしさを発揮するなんて私には到底無理だった。
マッチングアプリはアンインストールした。
リスタートしようともがこうとするけど、すればするほどに眠れない夜が増えた。
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昨日、2年前に別れた、いまの私にとっては最初で最後の元カレのインスタをみつけた。
トプ画は見覚えのある画像(2年前付き合ってた時に送ってくれた自撮り)で、なぜかプライベートモードが外された それ は私を挑発しているように見えた。
イライラした。
彼と別れてなお、ふつうの恋ができていない自分に。
そして、2年後見せつけようと思いながらいまだに変われていない自分に。
勢いそのままに、彼の名前をGoogle検索したら、2年前に別れの口実としていた大阪転勤なんて嘘だとわかった。
でも、彼の勤める企業名を街中で見かけるたび、負けるもんかと自分を奮い立たせられるようになっただけ、私も大人になった。
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数週間前、一人暮らしを始めて、初めて熱を出した。
あり得ないほど熱くて寒くて吐き気がして、実際吐いて鼻血を出しながらそれを1人処理していた。
こんなの自分から発信しなきゃだれも知り得ないような苦しさに、体調の苦しさも相まって泣いた。
でも、自分を生かすのは自分しかいなくて、症状が落ち着いたタイミングで病院に行き、買い物に行き、会社を1日だけ休んだ。
メンタルおわってても身体の丈夫さだけが取り柄だったのに。
これから何を取り柄にして生きていけばいいのか少し不安になった。
そんな私にとって、いま唯一の希望。
それは邦ロック。
美味しいものを食べたところで元気にもなれず脂肪を蓄えるだけで、
それでいて平日土日関係なく身と心をすり減らしている。
だからとりあえずの応急処置を邦ロックに一任してみている。
彼らのロックな生き方とメロディと、投げやりながらもまっすぐな歌詞は私の心に届く唯一の栄養。
負けたくない
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