本と私

身体の弱かった私は幼い頃はよくベッドの上で本を読んでいた。ぼんやりと天井ばかり見える日々が続いては不安と孤独に飲み込まれないように本の中に逃げんだ。
文字を目で追ってその中で目まぐるしく活躍している登場人物達が羨ましくて愛おしかった。ひとつの物語を読み終えては、ほぅっとため息をついてぱたんっと本を閉じるその瞬間が心を切なくさせた。たとえどんなストーリーでも終わりが来ると切なくなっていた私は本を抱きしめて毛布にくるまって眠った。少しでもその瞬間を噛み締めたくて。余韻に浸りながら愛おしい彼らの事を思っていた。
今となっては笑ってしまうが、きっとあれは恋だったんだと思う。ひとつひとつの物語と共に旅をしてひとりひとりの気持ちに感情移入しては何度も読み直しセリフを口にして彼らになった気持ちで噛み締めていた。
私の中での世界は本が全てだったのだ。
今ではすっかり健康体になってしまったものの今でも本を読む時は繰り返し何度も読み返してしまう。彼らの物語をひとつ残らずに噛み締めたくて大事に大切に読む。
今夜みたいな読書の似合う夜は彼らの物語も続いているといいなと幼かった頃のように思う。

#エッセイ #コラム #本 #読書 #物語

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