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店にあつまる人たちが好きだった

 街を歩いていたら、懐かしい声に呼ばれた。声のほうを向くと父の同窓生のK氏がいた。店にもよく来てくれていて、一緒になるとうれしい常連さんだったひとりだ。あぁ おそらく最後に会ったのは1年前の、父を含む数人で食事会をした以来だ。
 K氏は広告関係の仕事をしている人で、服装も姿もいいし、話すこともおもしろくて好きだ。お元気そうでうれしくなる。立ち話で、近況をさっと報告し合って別れた。

 店に来てくれる人たちを私はよく好きになった。それは子ども時代からかもしれない。店がなくなっていちばん寂しいのは、この人たちに会えないことだ。

 スターバックスやドトールコーヒーなど、チェーンストアの気軽なカフェでは、オーダーしたものをさっと受け取れるあたり利用しやすいというのがある。でも店に来てくれていたお客さんたちは、そういう手軽さを求めてはいなかったとおもう。店の中でしか味わえない時間だった。

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 父のことで言いたいことはいっぱいあるけど(ほんとにいっぱいある)、美味しいコーヒーをつくってくれたことと、あの場所での時間を体験させてもらえたことについては感謝している。

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