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見慣れたロゴマーク

 身近にあったものについて書く。私にとってはこの「神戸にしむら珈琲店」のカップ&ソーサー。分厚いぽってりとしたカップには、ブルーのロゴマークが描いてある。

 身近とは、両親が営んでいた喫茶店のことである。お客さんに出すカップは、ノリタケや鳴海製陶などのボーンチャイナものが多かったとおもう。にしむら珈琲店のカップ&ソーサーは、記念品という感じで、棚の上やカウンターに装飾的に置いてあるものであり、休憩時にコーヒーを飲むときなどに使っていたものと記憶している。

 両親のどちらにだったか訊いたら、新婚旅行で喫茶店めぐりをしたんだそうで、それはその時に記念に購入したカップだと言った。「神戸にしむら珈琲」はウエイトレスが揃いの制服を着ていて、お店全体に品格があって、調度品も素晴らしくて、と特に父にとっては理想のひとつみたいな話し方だった。他には京都の「イノダコーヒー」や倉敷の「エル・グレコ」などにも行ったらしい。

 もう20年ほど前になるが、ドリカムが大好きな4つ上の姉と神戸の講演に行くことになった。姉の職場に神戸出身の方がいて、おすすめのパン屋さんを教えてもらったり、三井アウトレットパークにも行こうなどとはしゃいだ。それで、そうだ、お父さんお母さんの思い出の「にしむら珈琲」に私たちも行ってみたいね!ということになった。

 この時の写真はちょっと見当たらないけれど、確か地下に降りていったと記憶しており、検索してみたら「阪急前店」がヒットした。アクセス的にもこの店舗の可能性が高い。両親の話どおり、落ち着いた雰囲気の店内で、びしっとした制服のウエイトレスさんが給仕をしてくれた。ふたりともわくわくしていたけれど、運ばれてきたコーヒーを飲んだ印象は「濃い!苦い!」だった。

 にしむら珈琲にかかわらず、関西のコーヒーは苦いとおもった。苦いというか、たぶんあれは使う粉の量が多く、濃いんだとおもう。他にもいくつかの店に入って休憩したけれど、どこもだいたい濃くて苦みが強かった。父のコーヒーは深煎りではあったけど、あと味をすっきりさせていたので、このどうかしたら粉っぽさすら感じる関西のコーヒーは、ちょっと私たちの口には合わなかった。

 ちなみに、この神戸講演のあとニーヒャこと西川隆宏氏は脱退してしまったので、いろいろ思い出深い旅となった。

 それからまた年月が経ち、2013年に大阪の友人を頼りにして遊びに行った。梅田ににしむら珈琲の店舗があるのはチェックしていた。友人と待ち合わせる時間に余裕を持たせておいて、ここで休憩をとった。神戸のときは、コーヒーの他に何か食べただろうか?思い出せない。オーストリア、またドイツの代表的なお菓子のひとつ「アプフェルシュトゥルーデル」をコーヒーと一緒に注文した。コーヒーの味はやっぱり、あの時と同じだった。

2013大阪 (2)

ショーケースの写真を撮らせてもらった。食べてみたいものがいっぱい。

 この時は父に頼まれていたカップ&ソーサーと、自家焙煎の豆を買った。持ち帰って、店に飾っていたものと比べると、新しいものはほんの少しだけシェイプがすっきりしていたように思う。ロゴマークの鮮明さもちょっとだけ違う。父とそんなことを言い合った。新婚旅行カップが、父にとって余計に大切なものなったように見えた。

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1975(昭和50)年に両親が買い求めたもの。

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2013(平成25)年に大阪で購入したもの。

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