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暗闇も慣れてしまえば

この濃い霧を追い越してしまえば、
あの光差す水面まで浮かび上がれば、
この暗いトンネルを最後までくぐり切れば、

僕の望むものは在るだろうか。

底のない海にゆらゆらと沈んでいくように、
伸びた枝からさらさらと散る花びらのように、
風に運ばれる意志のない雲のように、

ただずっと
此処に居座っている。

どこにも行けないのか、
それとも、
どこにも行きたくないのか。

どちらかなんてどうだっていい。

はじめは暗く冷たく苦しかったこの場所も、
もう慣れてしまった。

寂しさは消え、孤独を楽しむようになった。
暗闇に隠れ、光を拒否するようになった。
時々、温もりを求めたいとも思うけれど、
つらいとは感じなくなった。

死にたいと望む苦しさにも、
ひとりでいる寂しさにも、
光のない暗さにも、
ため息が乾く冷たさにも、

どうやら、慣れてしまった。

もと居た場所には戻れそうもない。
戻るべき場所でも、戻りたい場所でもないけれど。
かといって、
進むべき場所も、今の僕には無い。


今夜は、優しい夢を見たい。


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